行商人③
【毒蛇】のザギィーがいるとされるアジトはドナの森にある洞窟にあるようで、嗅覚に優れているグラニのお陰で無事に見つけることが出来た。
洞窟の入り口には不用心にも見張りがいない。洞窟の中から大勢の声が聞こえていることから何処かに出かけているということはなさそうだ。
俺達は警戒しながら洞窟に近づき、中を覗き込む。
洞窟の中央には盗賊達が楽しげに酒やご馳走を堪能している。数は30人程だろう。
「酒が無くなったぞ! もっと酒を持ってこい!」
盗賊達の中心には如何にも盗賊のリーダーと思われる男が不気味な笑みを浮かべながら酒を煽っている。細目に異様に長い舌が特徴的をしており、まるで蛇みたいな奴だ。
名前:ザギィー
種族:人間
適性:闇属性
魔力:2000
魔法: ダークエッジ(小)・ダークサイズ(中)
加護:猛毒大蛇
賞金:4500000リル
猛毒毒蛇
猛毒で出来た大蛇を創り出して操る。
どうやらあいつが【毒蛇】のザギィーで間違いないようだ。二つ名の通り毒系の加護を持っているようだ。
それに予想していた通り、なかなかの賞金が懸けられているようだ。必ず仕留めてやるからな。
そして洞窟の奥にはおそらく今まで誘拐してきた女性達が10人程。その中に 1人だけ豪華な服装をした女性がいる。
名前:リリラ=ゴールン
種族:人間
適性:風属性
魔力:70
魔法: なし
加護:なし
どうやらガンドさんの娘で間違いないだろう。
「二手に分かれるぞ。俺は盗賊達を始末する。ユフィアとグラニは人質を守れ」
「分かりました」
「ブルルゥッ」
俺の指示にユフィアとグラニは頷く。
「行くぞ!」
俺の掛け声と同時に全員が動き出す。
ユフィアのグラニは人質の方へ、俺は盗賊達の方へと突進する。
「お、おい、敵襲だ!!」
俺達に気づいたザギィーが叫ぶ。けれど余程酒を飲んでいたのか、部下の盗賊達はおぼつかかない足取りだ。お陰で容易く多数の始末することが出来た。
「ちっ、人質だ! 人質を盾にしろ!」
瞬く間に部下達をやられたザギィーが予想通りの指示を出す。
「無理です親分!!」
けれどそれも不可能だ。人質のところにはユフィアが聖護結界の加護を発動させ、強力な結界を張っているので並大抵の攻撃では破壊することは不可能だ。
それに結界の前にはグラニが立ち塞がっている。なので盗賊達は結界にすら触れる事すら出来なくグラニに蹂躙されていくことになる。
「くそ、このままやられてたまるかよ! 猛毒大蛇!」
次々と部下をやられて激怒したザギィーが加護を発動する。奴の周囲に10メートルを優に超えた毒で構成された巨大な蛇が出現する。
おそらくこれが【毒蛇】の異名を持つ由縁なのだろう。
「やれ!」
ザギィーの指示で毒蛇が俺に目掛けて突進してきた。
「はあっ!」
俺はレイヴェルを構えて横薙ぎに振るうと、猛毒大蛇の頭部が飛散する。
どうやら猛毒大蛇はゲル状のような毒で構成されているようで、何ともいえない感触が気味が悪い。
「ぎゃああああっ!?」
「い、痛えよ!?」
飛び散った毒が近くにいた盗賊達に触れたようで、余程の激痛だったのかのたうち回った挙句にそのまま絶命してしまう。
どうやら猛毒大蛇の毒は致死性があるようだ。
「まだまだ行くぜ!」
ザギィーはさらに毒蛇を創り出して襲わせる。だがその程度の攻撃では苦にもならない。
「だったらこれならどうだ!!」
すると今度は複数同時に毒蛇を構成し、それを俺に目掛けて放つ。
前方から襲いかかってくる毒蛇の大群。本来なら回避に専念するべき猛攻だが、俺には関係ない。
俺はそのまま毒蛇の群れを突き抜けることにした。レイヴェルを振り払いながら毒蛇を片付けていく。時々毒を直接触れることになってしまったが如何なる異常状態を無効化する異常無効の加護のお陰で無事で済んだ。
「俺様の猛毒大蛇に触れて死なねえだと!? どうなってるんだ!?」
自身の創り出した猛毒大蛇の毒が効かないことに余程驚いたのか、かなり困惑した様子のザギィー。それに猛毒大蛇に頼りきっていたのか、護身用の武器すら持っていないようで隙だらけの状態だ。
「終わりだ」
瞬く間にザギィーとの距離を取り、俺はレイヴェルによる渾身の突きを放つ。
「が、は……っ!?」
穂先はザギィーの身体を見事に貫いた。そして呻き声を上げながらザギィーは息を引き取り、絶命した。
俺はレイヴェルをザギィーから引き抜き、穂先に付いた血を振り払うと、賞金を貰う為の確認に必要な死体を空間収納で収納しておく。
残りの盗賊達もグラニが片付けてくれたようで、これで殲滅は完了したな。
「お疲れ様ですルイ様」
「おっと、俺に近づかない方が良いぞ。毒に触れると大変だからな」
俺の所々にはザギィーの毒蛇の毒が付着している。俺は大丈夫だが、ユフィア達に触らせるのは危険だ。
「でしたら私の浄化魔法で毒を浄化します。ピュリフィケーション」
ユフィアが魔法を発動すると小さな魔法陣が出願し、そこから放たれる光の粒子が俺に付着していた毒がみるみる浄化されていく。
「ありがとう。それで人質は?」
俺はユフィアに礼を述べて人質の無事を確認する。軽い怪我をしたり、まともな食事を与えられていなかったのか栄養失調気味の人達はいるものの、全員無事のようだ。
「助けて下さって感謝します。貴方方は一体……」
すると、ガンドさんの娘であるリリラさんが話しかけてきた。
「俺は冒険者のルイです。貴方の父親であるガンドさんの頼みで助けに来ました」
「お父様は無事なのですか!?」
「はい、盗賊に捕まっていたところを助けました。今はオルフィンで貴方の帰りを待っている筈です」
「よ、良かった……」
父親が無事であることに安心したのか、膝から崩れ落ちるものの非常に喜んでいる。早くガンドさんに会わせてやりたいものだ。
だがその前にやることがある。それは盗賊の宝を回収することだ。盗賊の規模がなかなかの為、期待が大きいぞ。
「ほう、こいつは凄いな」
俺達は洞窟の奥へと進むと、そこには盗賊達が溜め込んでいた宝を発見する。
宝の種類は非常に豊富で、金銀財宝は勿論、豪華な装飾品や絵画、値が張りそうな貴金属、多種多様の武器防具、家具や衣類などの日常品などが置かれている。
さてと、用は済んだことだしこんな洞窟とはおさらばするかな。
俺は盗賊の宝を全て回収して、人質達と共に街へと向かうのだった。




