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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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行商人②

 「これはどういうことだ?」


 行商人の突然の言動に思わず首を傾げてしまう。


 そんな俺を見て奴は不適な笑みを浮かべると、他の行商人達も隠し持っていた武器を取り出し、こちらへと向けてくる。


 「俺達は行商人なんがじゃなくて盗賊だ。この格好はお前らみたいな馬鹿を油断ささせる為の偽装なんだよ」


 なるほど、こんな格好をした相手が盗賊とは誰も思わないだろう。なかなか考えたものだな。


 「一仕事を終えてアジトに戻ろうとしたところをコボルトの群れに襲われて危ない目に遭っていたんだが、まさか馬鹿な冒険者が助けてくれるとはな」


 魔物から助けた人達がまさか盗賊だったとは……一難去ってまた一難とはまさにこのことのようだ。


 「それにしても良い女だな。こいつは殺さずにボスへの手土産にするとしよう」


 盗賊は卑猥な視線をユフィアに向ける。


 そんな盗賊に激しい怒りの感情を抱いてしまう。けれど下手に動けばユフィアに身が危ないのでここは慎重に行こう。


 さて、どうやってユフィアを助けようか。


 「まずはお前が持っている武器をこちらに放って貰おうか。見た限りなかなかの代物のようだからな」


 どうやら盗賊は俺の持つレイヴェルに興味を持ったらしい。これはチャンスだな。


 「分かった」


 俺は奴の要求に応じることにした。


  --聞こえるかユフィア


 俺は眷属念話の加護でユフィアに語りかける。


 --はい。聞こえています


 --奴がレイヴェルを手にしたら直ぐにこっちに走れ


 俺の指示にユフィアは小さく頷く。


 「受け取れ」


 そう言って俺は盗賊リーダーにレイヴェルを放った。


 「おっと! ほう、やはりなかなかの代物のよう--ぎゃあああああああああっ!?」


 レイヴェルを手にした途端な盗賊が悲鳴を上げる。


 神槍であるレイヴェルを扱えるのは所有者である俺だけだ。もし、他の奴が所持しようとすれば激痛を伴うことになっている。


 それにより盗賊がユフィアから腕を離した。


 「ルイ様!」


 ユフィアが指示に従ってこちら側へと駆け寄ってきた。これで思う存分戦える。


 「こい、レイヴェル!」


 俺の呼びかけに応えるかのようにレイヴェルが輝き出すと、瞬時に俺の手元へと戻ってきていた。


 これもレイヴェルの持つ特性で俺が呼びかければどんなに離れていても戻ってくるようだ。流石は神槍と言ったところだ。


 俺はレイヴェルを振るって配下の盗賊を屠っていく。折角命を助けてやったのに恩を仇で返す外道に容赦する必要はない。


 「ヒヒィーンッ!!」


 それはグラニも同じようで、一切の容赦なく盗賊達を踏みつけ、風刃を放って切り刻んでいく。


 「あとはお前だけだ」


 あっという間に他の盗賊を蹂躙し、残りはユフィアを人質にとった盗賊だけ。


 「ひいっ!? ま、待ってくれ! ほんの出来心だったんだ! 何でもするから命だけは助けてくれ!」


 配下を全員倒されて勝てる見込みがないと悟ったのか、先程までの威勢は見る影もなく盗賊はみっともない命乞いをしてくる。


 そしてこちらが問うているわけでもないのにアジトの場所やら今まで奪ってきた略奪品、そして拐ってきた女や子供についてを話し始めた。


 「これで全部話した。だから助けてくれるよな?」


 「呆れた奴だ。散々悪事を働いておいてまだ助かると思っているのか?」


 俺はレイヴェル穂先を盗賊リーダーに向ける。


 「知ってることは全部話したんだ! 見逃してくれよ!」


 「別に聞いてはいない。それにお前はユフィアを傷つけようとした。絶対に許されることではないな」


 俺にとってユフィアはとても大切な存在だ。そんな彼女に刃を向けるということ=万死に値するということだ。


 それでも盗賊は死にたくない一心で命乞いを続けるが、うんざりしてきたのでレイヴェルで心臓を一突きして、その生涯を終わらせる。


 「申し訳ありませんルイ様。貴方様の足を引っ張るような状況を作ってしまい、私は眷属失格です」


 人質にされてしまったことがユフィアにとって余程応えたのか、表情を暗くしてしまう。


 「いや、ユフィアは全然悪くないよ。あいつらが盗賊だったことに気づけなかった俺が悪いんだ」


 しかし、完全に油断していたな。


 俺の持つ危機探知の加護は俺に対して殺気や敵意に対して発動する。つまり俺に悪意を抱いていない時には発動しないのだ。


 先程の奴らは治療を施されている間は俺に悪意を抱いていなかったが、治った途端に悪意を抱いたのだろう。


 今度からは危機探知だけに頼りきらずに注意することにしよう。


 二度と同じ轍は踏まないように固く決心していると、馬車の中から人の気配を感じた。まだ仕留めていなかった盗賊でも隠れているのだろうか?


 俺は警戒しながら馬車の中を確認する。するとそこには縄で縛られている身なりの良い格好をした小太りな男がいた。


 「んー! んんん!」


 布の猿轡をされてうまく話せないようだが、明らかに「助けてくれ」と言っているようだ。


 先程の件もあるので、鑑定慧眼でこの男のステータスを見るとしよう。


 名前:ガンド=ゴールン

 種族:人間

 適性:火属性

 魔力:80

 魔法: なし

 加護:道具鑑定


 道具鑑定

 あらゆるアイテムの鑑定が可能になる。


 どうやら盗賊ではないようだな。俺は縛られている縄を解き、行商人を自由にする。


 「ふう……ありがとうございます」


 拘束を解かれた行商人が頭を下げた。


 「私はゴールン商会の会長を務めるガンド=ゴールンと申します、貴方方のお陰で助かりました」


 「冒険者のルイです。こっちはユフィアと従魔のグラニです。それよりどうして盗賊なんかに捕まっていたんですか?」


 「それがですね……」


 どうやら行商の為に色々な街に行っている最中に盗賊に襲われてしまい、人質として捕まっていたようだ。

 

 念の為に数名の冒険者を護衛として雇っていたのだが、盗賊達の方が戦力が上だと判断すると護衛していたガンドさんを置いて逃げ出したようだ。


「全く酷い連中がいるものだな」


 「過ぎたことですのでもう構わないのですが……」


 ガンドさんは震えながら言う。


 「……この盗賊達を従えているのは【毒蛇】のザギィーのようなのです」


 「【毒蛇】のザギィー? そんなに厄介な奴なんですか?」


 「血も涙もない盗賊です。獲物や逆らう者には容赦なく殺し、多くの兵士や冒険者を返り討ちにしているそうです」


 「……なるほど」


 ガンドさんの怯えようからして『毒蛇』のザギィーは相当な凶悪な奴なのだろう。どうやら厄介な連中と関わってしまったようだ。


 「仕方がない。その【毒蛇】のザギィーを何とかするしかないな」


 こう言った連中は報復だなんだので、後々面倒なことが起こる可能性がある。だったら早めに潰しておくに限る。


 それに盗賊が言っていた誘拐された人達のことが心配だ。まだ生きているのなら保護する必要がある。


 「もしかして盗賊のアジトに向かうのですか!? それなら私もご一緒させてくれせんか!?」


 どうやらガンドさんの一人娘も攫われているようだ。余程心配しているのだろう。


 けれど俺はそれを拒否した。これから盗賊のアジトを襲撃するのに戦闘経験が無さそうな彼は足手纏いにしかならない。


 ガンドさんにはここから近いオルフィンで待機しているように言っておくと、俺とユフィアはグラニに跨って盗賊のアジトに向かうのだった。

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