行商人①
雲一つない青空の下、俺とユフィアを背に乗せたグラニは壮大な草原を颯爽と駆け抜けていた。
ポカポカの日差しと心地の良い風が何とも言えない爽快感を感じさせる。
リスティング神聖国を出立して3日目。俺達は順調に自由国家オルフィンへと進んでいた。
「このペースならあと数時間もあればオルフィンに到着出来るようですね。流石はグラニですね」
「ブルルゥッ!」
ユフィアの言葉にグラニは嬉しそうに声を鳴らす。
普通ならリスティング神聖国からオルフィンまでは1週間程かかるのだが、流石は伝説の神馬の仔であるグラニ、尋常ではない速度と体力だ。
「そろそろ休憩にするか」
時刻が昼頃になり、俺達は見晴らしいる良い場所でシートを敷き、そこで昼食をとることにした。
俺はユフィアが用意しておいてくれたお弁当を空間収納から取り出す。どうやらサンドイッチのようで、色々な種類があってどれも美味しい。
「ブルゥ!」
グラニも朝から走りっぱなしでお腹が空いていたのだろう。嬉しそうに大量の人参を食べている。
こうして青空の下、見晴らしの良い草原で美味しいお弁当を食べる。まさに理想的なピクニックの気分だ。
ポカポカの日差しは柔らかく、時折心地良い風が何とも言えない爽快感を感じさせる。こんなにものどかだと何とも言えない眠気が起き、小さく欠伸をする。
「眠そうですねルイ様、でしたらこちらへどうぞ」
ポンポン、とユフィアが自分の両膝を叩いた。どうやら膝枕をしてくれるようだ。
「……良いのか?」
「はい。どうぞ遠慮なく」
「……じゃ、遠慮なく」
俺は身体をずらしてユフィアの両膝に頭を乗せる。普通の枕と違い暖かくて柔らかい感触。最高の心地よさだ。
こんな美少女に膝枕をして貰うなんて、俺はなんて幸せ者なのだろうか。
しかし、そんな穏やかな気分を味わっているという時に限ってトラブルは起きるものだ。
「ルイ様、あれは一体何でしょうか?」
最初にその騒動に気がついたのはユフィアだった。
俺は身体を起こして注意を向けてみると、どうやら何処かの商隊の馬車と思われるのが襲われていた。
襲っているのはどうやら犬のような頭部に成人程の身体を持つ亜人型の魔物が20体はいるようだ。
名前:コボルト
種族:亜人種
等級:D
魔力:300
犬の頭部を持つ亜人型の魔物。集団で行動しており、ずる賢い知識を駆使しする。嗅覚も優れており鋭い爪と牙で獲物を狩る。
恐らく護衛だと思われる者達が応戦してようだが、コボルトのほうが数が多くて苦戦しており、重傷者もいるようだ。
流石に見て見ぬ振りは出来ないか。
「仕方がない、助けに行くぞ」
「はい!」
「ブルルゥッ!!」
俺とユフィアは急いでグラニに跨ると、ものすごい速度で馬車の方へと駆け出す。
「ガウッガウッ!」
すると1体のコボルトが俺達の接近に気がついたのか、猛犬のように吠えた。それにより全てのコボルトがこちらを警戒をする。
けれどグラニの駆ける速度はコボルトの予想を遥かに上回り、瞬く間にその距離を縮めていた。
俺は神槍レイヴェルを出現させて隙だらけのコボルトの1体目に目掛けて刺突を放つ。
「ギャアァァァァァァァァンッ!!」
胸部を貫かれて 1体目のコボルトが断末魔の悲鳴を上げる。それに続いて近くにいた2体目、3体目のコボルトを仕留めていく。
すると残りのコボルト達は馬車から距離を取る。
「ユフィア、怪我人の治療を頼む」
「分かりました」
俺の指示に従い、ユフィアは怪我人の元へ走った。突然現れた俺達に行商人達や護衛も警戒しているようだが、ユフィアが治癒系統の光魔法を発動すると、警戒を解いた。
怪我人達はユフィアに任せて俺はコボルトの討伐に専念することにした。
「ガウッガウッガッア!!」
荒い声で吠えながら、鋭い牙を剥き出しにして数体のコボルト達が俺へと地を蹴って襲い掛かってくる。
四方八方からの同時攻撃。
避けることも、対応することもほぼ不可能に近い状況だ。普通ならばな。
俺は姿勢を低くすると、コボルト達の間を縫って簡単にすり抜ける。
「はあっ!」
包囲網を抜けると、隙だらけの状態のコボルト達に目掛けてレイヴェルを振るう。
その一撃で数体のコボルト達が絶叫と共に地面へと伏せることになる。
これで半分程のコボルトを討伐することが出来た。さて残りは……。
「ガウッ!」
瞬く間に群れの半分を失い戦意喪失したのか、残りのコボルト達は一目散に逃げようとする。
「ブルルゥッ!」
けれどそんなことはグラニが許さない。グラニは風の刃で逃げようとするコボルト達を全て切り刻み、コボルトを全滅させた。
ユフィアの様子を見てみると、流石と言ったところか。今治療をしている男を除いて他の重傷者の治療は完了していた。
「大丈夫か?」
俺は治療中の男に話しかける。
「ああ、アンタらのお陰で助かったよ」
男は頭を下げて礼を言うと、他の行商人達も次々と頭を下げ始める。
「治療終わりました」
そうこうしたいるうちに、ユフィアは全員の治療が終わったようだ。あれだけの重傷を負った人達の為に大量の魔力を消費したようで、少し疲れている様子だ。
「俺達全員を救ってくれて本当に感謝してるぜ。けれどそんなアンタらには悪いんだけどよ……」
そう言って行商人は申し訳なさそうな表情を浮かべる。すると--
--警告。殺意のある者の反応を確認しました。
突然の警告に俺は思わず息を呑むが、その時には既に遅かった。
男は近くにいたユフィアの首に腕を回してキツく締め上げ、何処かに隠していた短剣を取り出してそれを首筋に突きつけた。
「ここで死んで貰うぜ」
………………はい?
第2章も少しでも楽しめるように頑張って投稿しますので、どうかよろしくお願い致します。




