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救世のルファディア  作者: yato
第1章 転生編
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聖都襲撃②

 神聖なる聖都にアンデッドが蔓延るという前代未聞の出来事は直ぐに聖城へと伝わった。


 この異常事態を重く見たフォルス15世は本来なら謁見の場として使用される玉座の間を司令塔として国の重鎮たちを集めていた。


 「現在の聖都の状況は?」


 「広場や大通りに大量のアンデッドが出現しております。数は100や200どころではありません。最低でも1000は超えるかと。騎士の大半をアンデッドの討伐に向かわせましたが数が予想以上に多く、苦戦しているようです」


 「直ちに他の騎士達に増援を向かわせろ」


 「かしこまりました!」


 フォルス15世の命令には枢機卿は兵士達に指示を始める。


 「……ふう」


 「お父様、お気を確かに……」


 突然起きた非常事態に頭を悩ますフォルス15世に話しかけるのはユフィアだった。彼女は聖女としての力だけでなく、なかなかの知恵者でもあるため、フォルス15世の補佐としてこと玉座の間にいたのだった。

 

 「失礼します! 状況の報告に参りました!」


 玉座の間を訪れたのは伝令役の兵士だった。


 「申してみよ」


 「はっ! やはり聖都の各所で怪しげな魔法陣があり、そこから大量のアンデッドが出現しているとのことです」


 伝令役の兵士は詳しい状況を報告していく。


 「……やはり、このアンデッドの大量出現は自然発生ではなく人為的に起きているようですね」


 「どうやらお前の読みが当たったようだな」


 「はい。出来れば当たってほしくなかったのですが……」


 ユフィアはフォルス15世の言葉に頷いた。


 「速やかに聖都各所に出現した魔法陣の対処をお願いします。魔法陣が無くなればこれ以上アンデッドが増えることは無いはずです」


 「はっ!」


 ユフィアの言葉に兵士は敬礼し、駆け足で玉座の間を去っていった。


 「どう思う、ユフィア?」


 「これ程の魔法陣を準備するにはかなりの時間が必要なはずです。それに魔法陣が出現した場所はどこも人目がつかない場所ばかり。よほどこの聖都に詳しい人でなければ仕掛けられません」


 「ならばこの混乱を招いたのはこの聖都に住まう者ということか?」


 フォルス15世の言葉に玉座の間に緊張が走る。


 --そんな時だった。


 「失礼します」


 そんな時、騎士団長のデュークが謁見の間を訪れた。


 「おお、デューク騎士長。聖都の状況は?」


 「ご報告させていただきます。現在騎士団員の半数が重傷を負っている状態となっています」


 「何だと!?」


 デュークの言葉に謁見の間にいる重鎮達の表情が絶望に染まる。リスティング神聖国の主戦力とされている聖騎士団が半壊状態になっていることは非常に大きな痛手であった。


 (……おかしいですね)


 しかし、その中でユフィアだけがとある疑問を感じて表情を険しくさせていた。そしてその疑問の答えを得るべく、口を開いた。


 「デューク騎士団長、 1つ貴方にお聞きしたいことがあります」


 「何でしょう?」


 「何故騎士団長である貴方がここに来たのですか? 本来なら伝来兵が状況を報告にくると思うのですが?」


 騎士団長はリスティング神聖国の最高戦力とも言える存在だ。それが戦場を離れて謁見の間に姿を現すのが変だとユフィアは判断したのだ。


「それは……」


 ユフィアの問いにデュークの表情が険しくなる。その反応を見て周囲が騒つき始める。


 「もう一度聞きます。何故、貴方がここに来たのですか?」


 ユフィアの言葉に玉座の間に不穏な雰囲気が漂う。しかしその雰囲気もデュークの態度によった一変することになる。


 「お答えします。それは今からここが惨劇の間へと変わるからです」


 「何?」


デュークの意味深な言葉に眉を顰めるフォルス15世。そんな彼に向けてデュークは鞘から抜いた剣を振り下ろそうとする。


 「お父様!? 聖護結界!」


 咄嗟にユフィアは加護を発動してユデュークの一撃を防いだ。


 「……ちっ」


 不意打ちの一撃を防がれてデュークは舌打ちをする。


 「騎士団長!?」


 「一体何を!?」


 他の重鎮達も訳が分からないと言った表情を浮かべるが、その意味を理解する前に瞬く間に斬り伏せられてしまう。


 「黙れ、虫ケラ風情が……」


 デュークは冷たい視線を向けながら呟くと、再び視線をユフィアへと向ける。


 「ホーリーレイ!」


 魔法を発動してユフィアの眼前に魔法陣が出現。そこから光線がデュークに目掛けて放たれる。


 「無駄だ」


 デュークはそう呟くと、突然彼の手に禍々しいオーラを放つ黒剣が出現し、ユフィアが放つ光線を防ぐ。


 「まさかそれは……魔剣オーメンス!?」


 その黒剣を目にして枢機卿は目を見開く。


 「死者をアンデッドにして蘇らせて操ることができると言われている忌まわしき邪神の遺産……今聖都に蔓延っているアンデッド達は全て貴様が操っているのだな!?」


 「流石は枢機卿……よくご存知だ。ではこの魔剣の力を見せよう」


 枢機卿の言葉にデュークは薄っすらと笑みを浮かべる。そして魔剣を高らかに掲げると、先程斬り伏せたはずの護衛騎士の死体に異変が起きる。


 「ア、ガアァァァァァアッ!!」


 「グガアアアアアアアアッ!!」


 デュークによって命を落としたはずの重鎮達がゾンビとして蘇ったのだ。


 「しかしそれは古の時代に女神様の手によって城の地下で厳重に封じられていたはず……何故貴様がそれを!?」


 「あの程度の古い封印如き、我が主の力があれば容易に解除できる」


 「その主とは……まさか!?」


 「そう、偉大なる邪神様だ」


 邪神が既に復活をしているという事実はデュークを除く全員が息を呑むことになる。


「何故ですかデューク騎士団長!? 何故女神への信仰心を捨てて邪神側へと寝返ったのですか!?」


 デュークの謀反を未だに信じられないのか、ユフィアが理由を問いただす。


 「何故?」


 するとデュークは小さく笑みを浮かべながら視線をユフィアへと向ける。


 「勿論、貴女を私の物にする為ですよ」


 デュークの言葉にユフィアは息を呑む。そんな彼女を他所に彼は話しを続ける。


 「私は昔から貴女をお慕いしていました。純真無垢な心、人より秀でた才能、そして誰もが認めるその美貌。まさに騎士団長である私にこそ相応しい存在だ。貴女に認めて欲しくて私は誰よりも優秀であり続けた。しかし、貴女は一向に私を見てくださらなかった。だから少し強引だが裏で手を打たせて貰ったのだが……」


 「まさか……貴方が私に呪いを?」


 デュークの言葉にユフィアは全てを理解した。


 自身に呪いをかけて魔物の姿に変えた張本人が、紛れもなく目の前にいるデュークの仕業なのだということを。


 「本来なら私が魔物化した貴女を救うはずだったのだが、まさか冒険者如きに解呪されるとは思いもよらなかった。仕方なく盗賊を利用したのだが、それも失敗。見事に【聖者】の称号をあの冒険者に横取りされてしまった。いやはや、全く参った。だから私は力尽くでも貴女を手に入れることを決めた」


 「そんな理由で……」


 デュークの身勝手な言動にユフィアを含む全員が息を呑む。


 「デューク騎士団長……否、反逆者デュークよ、女神様を裏切り邪神側に寝返った貴様を許してはおけん! 衛兵!」


 フォルス15世の言葉と同時に謁見の間に大勢の兵士が入り、反逆者となったデュークを取り囲む。


 しかし、それでもデュークの表情は変わることはなかった。寧ろ余裕すら見せている様子であった。


 「この程度の数の兵など、邪神様のお力の前では羽虫同然だ」


 そう言ったデュークに異変が起きる。肌が徐々に黒く染まり、瞳がまるで血のように赤く染まる。


 そして何よりも異質なのはその魔力だろう。まるで負の力そのものと思わせる程の禍々しい魔力がデュークから発せられていた。


 「素晴らしいだろう? この圧倒的な魔力……これが邪神様に忠誠を誓って手に入れた力だ! この力と魔剣の力でこの国を滅ぼしてやろう!」


 デュークの放つ魔力にあてられたのか、周囲の人々が次々と倒れていく。これだけ禍々しい魔力にあてられれば、気を失うのも無理はない。


 それでも辛うじて意識を保っていた衛兵達は反逆者であるデュークへと武器を構えると、一斉に攻撃する。


 「無駄だと分からないとは、愚かな奴らだ」


 そう言ってデュークは魔剣を振ると、そこから黒い斬撃のような物が放たれ、衛兵達を一瞬で蹂躙してしまう。そして魔剣によって衛兵達は瞬く間にアンデッドへと変えられてしまう。


 「貴方は人として最低です」

 

 デュークの無惨な言動に怒りの感情を感じるユフィアはそう言った。そんなことの為に人々を傷つけているのがどうしても許せなかったのだ。


 「黙れ」


 ユフィアに目掛けて魔剣を振るうと、そこから黒い斬撃が放たれる。


 「聖護結界--きゃあああああっっ!」


 咄嗟にユフィアは結界を展開する。けれどデュークの魔剣の一撃によってあっさりと結界は砕けてしまい、その余波で吹き飛ばされてしまいました。


 気がつくとユフィアは床へと倒れていた。どうやら一瞬だけ意識を失っていたようだ。


 身体を起こそうとすると、全身に激痛が走る。先程の一撃が強かったのか、所々服が破れており覗く肌は傷だらけであり血も流れ出ていた。


 そんなユフィアを見下しながら、デュークは魔剣を掲げる。


 「邪神様に祝福された私にその程度の力は通用しない。あきらめるのだな。だがもし、女神への信仰を捨てて私の妻となれば助けてやろう。どうだ?」


 「--っ」


 まさかの勧誘にユフィアは絶句する。しかし、ユフィアの答えは決まっていた。


 「私は決して貴方には--邪神には屈しません」


 「そうか。出来れば生きたまま貴女を手に入れたかったのだが仕方がない。貴女にはここで死んで貰おう。そしてアンデッドとして蘇らせて永遠に私の側に居ても貰おう」


 そう言ってデュークは魔剣をゆっくりと掲げる。


 (……ああ、もう一度だけ、もう一度だけルイ様にお会いしたかった……)


 死ぬ間際に脳裏へと思い浮かべるのは自身を何度も救ってくれた少年のことだった。僅か数日しかないがそれでもユフィアの人生の中ではとても思い出深い出来事をまるで走馬灯のように思い出してしまう。


 「そうそう、貴女を救ったあの冒険者は今頃私の部下が始末しているはずですよ。彼らも私ほどではないが邪神様の力を与えられて強化されている。幾ら彼が強かろうと命はないだろう」


 最後の最後に容赦のない言葉を放つデュークに対して、ユフィアは心底無慈悲な人だと思った。


 それでもユフィアは確信している。ルイがその程度で命を落とすことはないと。何故なら彼はは誰よりも優しく、強く、そして自分が初めて恋心を抱いた人物なのだから。


 (……ルイ様)


 少年の表情を思い浮かべながらユフィア目を閉じた。


 --その時だった。


 何かが自身の横を通り抜けたのをユフィアは感じた。そしてキィンッ、と金属音と金属音が交差する音が響き渡る。


 目を開けると、そこには見覚えのある後ろ姿があった。


 「何とか間に合ったようだな」


 もう聞くことはないと思っていた凛々しいお声にユフィアは思わず涙を流してしまう。


 (どうして貴方様はいつも私が危機に陥いる時に颯爽と現れるのですか?)


 そして目の前の人物は小さな笑みを浮かべながらユフィア話しかけてくる。


 「大丈夫か? ユフィア」


 「はい、ルイ様!」

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