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救世のルファディア  作者: yato
第1章 転生編
33/40

リスティング神聖国③

  聖王様との謁見をした翌日。

 

 軽く朝食を済ませて俺は宿屋を出ると、そこには黒髪黒眼の美少女が俺を出迎えてくれた。けれどその面影にはどこか見覚えがあった。


 「……もしかして、ユフィアなのか?」


 「はい。おはようございますルイ様」


 やはりユフィアだった。


 「どうしてユフィアがここに? それにその髪は?」

 

 「ルイ様に聖都を案内したくて来てしまいました。髪はこのブレスレットの力で色を替えています」


 そう言ってユフィアは手首に付けているブレスレットを見せてくれる。


 色彩のブレスレット

 身につけている者の髪や瞳の色を自由自在に替えることが出来る。


 なるほど、マジックアイテムか。


 「そんなのよく聖王様が許したな」


 「置き手紙はちゃんと残して来ましたから大丈夫ですよ」


 「……そうか」


 このお姫様は俺が思っていた以上に大胆な性格なのかもしれないな。聖王様には非常に同情するよ。


 折角なので、ユフィアに観光案内を頼むことにした。


 「静かな街だな」


 改めて聖都の街を実際に歩いていると、静寂という印象が勝っている。市場には屋台が立ち並び、民の皆は忙しそうにしているが、質素ながら穏やかな生活をしており、オルフィンとはまるで大違いだ。


 時々派手な格好をして街を歩いている者達もいるが、あれは俺と同じで他所の国から来た観光客らしい。


 この国には神代時代からあるとされる神殿に祈りを捧げに来たり、光属性の治癒魔法を求めて色々な国の人達が訪れるらしい。


 「女神様のご加護があらんことを」

 

 街を歩いていると、住民達がそう口々に声をかけてくる。ユフィアによるとこれは「おはよう」等と言った挨拶のようなものらしい。


 「如何でしょうか、聖都の街は? 他の国の街と比べると少し退屈に感じてしまうかもしらませんが……」


 「いやいや、そんなことはないぞ」


 ユフィアが申し訳なさそうに告げる。確かに賑やかな施設もなければ華やかな催し物もないだがこの神秘的な雰囲気が何だが落ち着く。俺の身体は女神様が創り出したものだからそのせいなのかもしれないな。


 それにこの街はゴミどころか汚れ一つないのも素晴らしい。信徒の人達は信仰上、率先して清掃する者が多いらしいので街が綺麗なのも頷ける。


 最初に案内して貰ったのは美術館だった。


 ここには歴史的価値のある美術品が幾つも展示されており、名物である天井の巨大ステンドグラスには思わず圧倒される程の美しさを感じた。


 そしてこの美術館にはもう1つ貴重な美術品があるらしい。美術館の奥へと行くと、そこには巨大な絵が厳重に飾られていた。


 絵の左側には美しい美女と苦しむ人々が描かれ、右側の巨大な異形の化け物が描かれている。


 「この絵は『聖戦』と言う題名で、実際に起きた戦争を描いたと言われています」


 ユフィアによると遥か昔に起こったとされる女神様と邪神の壮絶な戦いを古代人が描いたものだと古くから伝えられているようだ。


 これが女神様が言っていた出来事なのか。再びこんな事を起こさないようにしないとな。


 次に訪れたのは噴水広場。


 聖都一の大きさを誇る噴水がある広場で高さは10メートル近くはある女神像が水瓶から水を出している作りになっている。


 「ん? あの人達は何をしているだ?」


 何やら観光客が噴水に硬貨を投げ入れているぞ。いや、正確には噴水の中央に置かれている杯のような置き物にだな。しかし距離があるうえに杯はとても小さいのでなかなか硬貨が入ることはなかった。


 「あれは幸運の杯というものです。あの杯に硬貨を入れられた人には幸運が訪れるとされています」


 「へえ、面白そうだな」


 俺がいた世界でも似たような事をする泉があったな。やはりこういうのはどこの世界にもあるのだな。


 「せっかくだし、俺もやってみようかな」


 そう言って俺は硬貨を取り出す。これでも野球経験者だからな。コントロールには自信がある。


 俺は杯に狙いを定めて硬貨を放る。硬貨は放物線を描きながら杯へと向かい、カコンと音を立てながら見事に入った。


 「よし!」


 思わずガッツポーズをしてしまう。


 「凄いですルイ様! まさか一発で入れてしまうなんて!」


 ユフィアは驚いた表情で俺に羨望の眼差しを向けてくる。それに続いて周囲の人たちもお見事と言わんばかりに拍手をしてくれる。


 確かに幸運が訪れるというのはあながち間違いではないようだな。


 そんな事を考えていると、ぐぅ、と俺の腹から音が鳴る。そう言えばもうすぐ昼食の時間だな。


「ふふふ、近くに食事が出来るお店がありますからそこで昼食にしましょう」


 案内された料理屋には『ルミナーゼ』という名物料理が作られており、俺とユフィアはそれを注文する。


 「お待たせ致しました」


 テーブルに置かれたのは地球で言うカルボナーラのような麺料理だった。違うとすれば麺が少し太い事だろう。


 温かな湯気からはチーズの濃厚な香りが漂ってくる。


 「いただきます」


 フォークで麺を巻き取り口の中へと運ぶ。最初に感じたのはやはり濃厚なチーズの風味と牛乳と卵のなめらかなソースの味わいが口の中に広がる。


 パスタとはだいぶ違う程よいもちもちな麺は独特な歯応えがあってクセになりそうだ。


 麺の中に混ざっている角切りの燻製肉は程よく脂が抜けてソースや麺とはまた違ったしっかりした風味が感じられる。


 麺を食べたら燻製肉、麺を食べたら燻製肉を繰り返しているとあっという間に皿は空となった。非常に美味しかったな。


 「ごちそうさま」


 食事を終えて、最後はユフィアの強い要望で訪れたのは聖都を一望出来る展望台だった。展望台から眺める聖都の景色はまさに絶景と言えるだろう。


 そして展望台の横には小さな鐘があり、「2人で一緒に鳴らして欲しい」と頼まれたので一緒に鐘を鳴らした。


 すると、俺達に周囲の人達がパチパチと拍手をしてくる。


 「よっ、熱いねお2人さん!」


 「羨ましいぞ!」


 「お幸せにね!」


 あれ、何故か祝福されているぞ? どうしたのだろうか?


 ユフィアへと視線を向けると、何故か頬を赤らめている俯いている。


 近くにいた観光客によると、今鳴らしたこの鐘は『祝福の鐘』と呼ばれるもので、一緒に鳴らした男女は永遠に結ばれるという言い伝えがあるそうだ。


 それってつまり……。


 「……ユフィア」


 「……そこのベンチに座りませんか?」


 そうユフィアに提案されて、俺達は聖都の景色を眺めながらベンチへと座る。

 

 「私には幼少の頃から決められているお相手がいます」


 こちらを見向きもせずに、ユフィアはただただ話し始める。


「近い将来、私はそのお方に仕えることになるでしょう」


 「……」


 「このような立場で生まれたからには、そのようなことになるのは理解していました」


 「……」


「実際、今までその為に教育されて来ました。そして私もそれは運命だと思っていました」


「……」


 ユフィアの言葉を俺は黙って聞くことしか出来なかった。苦笑いしながら話す彼女を見ていると、何だか胸が締め付けられるように痛くなる。


 「でも今は少しだけ違います……」


 そうしてユフィアはじっ、と俺の方を見つめてくる。目は少し潤んでおり、頬は少し赤くなっている。まるで乙女が恋をするかのように……。


 「ルイ様とこうして一緒にいる時だけ、私はありのままの私でいられます。『王女』でも『聖女』でもない、ただの『ユフィア』としていられます」


 まるで今まで溜め込んでいた思いを吐き出すかのようにユフィアは秘めていた思いを告げてくる。


 「ルイ様と一緒にいる時が何よりも幸せに感じます」


 嗚呼、頼むからそれ以上は言わないでくれ。胸の痛みがより一層激しく痛む。


 「私はルイ様が好きです」


 ユフィアが俺に好意を抱いていたのは薄々だが気付いていた。けれど俺は気付いていないふりをしていた。この後に言う言葉を言いたくないがために。


 「もし、私が全てを捨ててルイ様と一緒に居たいと言えば、このまま私を連れて行ってくれますか?」


 これはユフィアの本音なのだろう。もし俺が了承したのなら彼女は迷う事なく全てを捨てて俺本気で共に歩もうとしている。そんな表情だ。


 けれど俺はそんな彼女に対して--


 「すまない。ユフィアの気持ちには応えられない……」


 冷たい言葉にユフィアは一瞬悲しげな表情を見せる。


 しかし、彼女にはこう言うしかない。俺には女神様に与えられた大きな使命がある。そんなことに彼女を巻き込むことはできない。巻き込みたくない。


 こんなに心優しい少女には幸せになって貰いたいのだ。


 「そう、ですよね……申し訳ありません。無理なことを言ってしまって……」


 ユフィアは小さく頭を下げると、またいつもの明るい表情をみせてくる。

 

 「ルイ様、今まで楽しかったです。こんなに楽しいことがあって私はとても幸せでした」


 「……それは良かった」


 「それでは失礼します、ルイ様。いつかまたお会い出来る日を楽しみにしています」


 そう言ってユフィアは行ってしまう。去り際、とても悲しそうな表情をしていたかのように見えたが俺には何も出来なかった。


 「……さよなら、ユフィア」


 去っていくユフィアの後ろ姿を見つめながら、俺はそう呟くのだった。

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