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救世のルファディア  作者: yato
第1章 異世界編
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聖女③

 リスティング神聖国・聖城--謁見の間。


 その最奥に鎮座する豪奢な玉座には豪華な冠と祭服を身につけている初老の男性が腰掛けていた。


 彼こそがリスティング神聖国聖王--フォルス=リスティング。通称フォルス15世その人だった。


 しかし、現状のフォルス15世は落ち着きのない様子であった。


 「ユフィアよ、我が愛しい娘よ、一体何処にいるというのだ……」


 その理由はこの国の【聖女】--彼の愛娘であるユフィア=リスティングが行方不明であるからだ。


 フォルス15世にとってユフィアは唯一の女の子。それ故に目に入れても痛くないほど可愛がっている存在である。


 そんなユフィアが行方不明になって 1週間以上が経過したが、一向に彼女の消息は掴めなかった。


 未だに見つからない娘を思うが故に、フォルス15世の不安は募っていき、日に日にやつれる日々が続いていた。


 「世界を創造せし女神レイシア様、どうか我が娘が無事であるように……」


 もはや信仰している女神に祈るしかなかった。


 しかし、そんな疲弊しきっていたフォルス15世の元にようやく朗報の知らせが訪れることになる。


 「失礼します陛下!」


 慌てた様子で謁見の間に入ってきたのはフォルス15世の側近中の側近であるロベルン枢機卿だった。


 「どうしたロベルン枢機卿。そんなに慌てて……」


 「お喜び下さい陛下! ユフィア様が見つかりました!」


 「何!? ユフィアが!?」


 ロベルン枢機卿の言葉に険しかった筈のフォルス15世の表情が歓喜と安堵の表情へと替わっていく。


 「はい。こちらがつい先ほど自由国家オルフィンの冒険者ギルドの統括者であるルーヴァス=ガオラからの書状でございます」


 そう言ってロベルン枢機卿は書状をフォルス15世へと渡し、再び下がる。


 「ルーヴァスか。久しぶりに聞く名だな」


 若かりし頃のフォルス15世は女神教布教のために世界各地を渡り歩いていた時期があり、ルーヴァスとはその時に出会った古い知人であった。


 けれど今は思い出に耽るよりも愛娘の安否が先だと急いで書状を読み始めた。


 書状にはユフィアに起きた出来事が全て書かれていた。


 突然魔物になる呪いを何者かに掛けられ、騎士達からの追跡を免れる為にドルマの森へと逃げ込み、そこで出会ったD等級冒険者の男によって呪いを解かれて助けられ、今は無事に冒険者ギルドが責任を持って保護していることを。


 「まさか、そんなことが……。余は何と無力なのか……」


 大切な愛娘が危険な状態だった時に何もできなかった自分に対してやりきれない感情を抱くフォルス15世。


 それと同時にフォルス15世はそんなユフィアを救ってくれたというD等級冒険者の男に興味を持つことになる。


 「すぐにオルフィンに使者を送り、ユフィアを連れて帰るように手配しろ」


 「かしこまりました。早速そのように手配いたしましょう。それでユフィア様の護衛を兼ねてデューク=カルストルに使者としてオルフィンへと向かって貰うのはどうでしょう」


 デューク=カルストル。


 このリスティング神聖国の騎士団団長を務める青年。若くして騎士団団長にまで登り詰める程の実力者にして神聖国最強の男として名を馳せる傑物でもある。


 「うむ、奴なら道中で魔物や盗賊に襲われたとしてもユフィアを守りきることができるだろう。良かろう、デューク=カルストルをここに呼ぶがよい」


 「かしこまりました」


 フォルス15世の言葉にロベルン枢機卿は頷いた。


 しばらくして銀色の鎧を身に着けた長身の男が謁見の間に訪れた。


 「神聖国騎士団団長デューク=カルストル、参上いたしました」


 「面を上げよ」


 玉座からの視線と言葉を受けて騎士団長は許しに従いデュークは顔を上げる。


 「そなたに頼みたいことがある」


 「何なりとご命令ください」


 「我が娘、ユフィア=リスティングがオルフィンに保護されているようだ」


 「おお、遂にユフィア様がお見つかりになられたのですね! それは良いことです!」


 「うむ。それでそなたには部下数人を連れてオルフィンに向かい、ユフィアを迎えに行って貰いたい。そしてユフィアを救ったというD等級冒険者もここに連れてきてくれ。余が直々に礼を言いたいのでな」


 「はっ、陛下の御心のままに」


 大きく頭を下げた後、デュークは謁見の間から出ていくのだった。



 ◇◇



 人気のないとある路地裏。そこで2人の人物による密会が行われていた。


 「誰にも見られていないだろうな?」


  1人は顔に傷がある男の名前はゴドス。リスティング神聖国では名の知られている盗賊である。


 「安心しろ。誰にも見られていない……」


 そしてもう1人は深い白ローブを着て、さらに白い仮面を被って顔は見えない。声や体格で男だとゴドスは理解する。


 「それで、俺に頼みたいことって何だ?」


 「【聖女】を誘拐して貰いたい」


 「何?」


 白仮面の言葉にゴドスは一瞬眉を顰めるが、詳しく話を聞くことにした。


 「1週間前から【聖女】が行方不明になっていたのはお前も知っているだろう? その『聖女』がどう言うわけか自由国家オルフィンで保護されたらしい」


 「ほう、それで?」


 「そこで【聖女】の護衛を兼ねて騎士団の数名がオルフィンに出向くことになった」


 「なるほど、その帰り道に【聖女】を誘拐しろということだな」


 「ああ」


 「それで、警護を務める騎士は何人だ?」


 「予定では騎士が3人、それと冒険者が1人同行する予定だ」


 「……冒険者も同行するのか?」


 「行方不明だった【聖女】を助けたのがD等級冒険者らしい。お前の実力なら心配はいらないだろう」


 「へっ、確かにな」


 不気味なと笑みを浮かべるゴドス。どうやらD等級冒険者など自分の相手にはならないとたかをくくっているようだ。


 実際ゴドスはB等級指定の盗賊で多くの殺人、窃盗、強姦の罪によって多額の懸賞金が掛けられている程の凶悪犯である。


 白仮面は硬貨の入った大きな袋をゴドスに手渡す。重さからして中には相当な金額が入っていることが予想された。


 「前金だ。もし成功したらこの倍の金額を支払おう」


 「ほう」


 それを聞いたゴドスの顔はニヤリと欲にまみれた笑みを浮かべる。


 「良いだろ。アンタの依頼を引き受けよう。期待して待ってな」


 そう言ってゴドスは硬貨の入った袋を懐に仕舞い込むと、そのまま立ち去ってしまう。


 「思わぬ事態で計画が狂ってしまったがこれで良い。次こそは必ず……」


 そう呟いて白仮面も路地裏の闇へと消えていった。

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