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救世のルファディア  作者: yato
第1章 異世界編
24/26

神馬③

いつも賑やかなオルフィンの街。今は特に騒がしかった。


 理由は勿論、ユフィアとグラニだ。


 「なあ、あれ見てみろよ!」


 「あんなに可愛い子、この街にいたっけ?」


 「美しい……」


 ユフィアは周りから陶酔の眼差しを向けられている。


彼女は絶世の美少女だ。風になびく美しい金色の長髪に整った容姿と抜群のスタイル、おそらくすれ違った男は全員が振り返ることになるだろう。


 「おいおい、あれって……」


 「魔物よね?」


 「街にいて大丈夫か?」


 対してグラニには畏怖の眼差しを向けられていた。


 通常の馬よりも2回りも大きい巨躯に圧倒的な威圧感。近くにいた女性は悲鳴を上げたり、武装している冒険者達は警戒をしている。


 「ブルルゥ……」


流石に悲鳴まで上げられて、グラニが少ししょんぼりしている様子だ。


 「流石に警戒されているな。襲われなければいいけど……」


 「大丈夫ですよルイ様。きちんと従魔の首輪もしてますから」


 ユフィアの言う通り、グラニには従魔の首輪を付けさせている。これは所謂、魔物用の身分証のようなものだ。


 この異世界では魔物を使役する者は少なくない。なので街に魔物を入れさせる時はこの従魔の首輪を付けさせるのが義務になっている。


 勿論、きちんと人の言うことを理解しているだけの知性を有していることが必須だが、グラニは問題なかった。


 ちなみに今付けている従魔の首輪は門番の人に借りた仮の物なので、後日グラニ専用の従魔の首輪を購入する必要がある。


 多くの人に視線を向けられながら目的地である冒険者ギルドへと到着する。


 丁度アリスさんのカウンターが空いるので、彼女に指名依頼完了の報告をすることにしよう。


 「ただいま帰りました」


 「おかえりなさい、ルイさん。どうやら無事に戻ってこられたよう、で……」


 俺が連れているグラニに視線を向けながらアリスさんが硬直してしまった。流石に突然のことで言葉を失ったようだ。彼女だけでなく周りの職員の人達も慌ただしい様子だ。


 「無事に戻ってこられたようで何よりです」


 だが流石はプロの受付嬢だ。大きく深呼吸するといつもの対応に戻っていた。


 「指名依頼の完了を伝えに来ました。」


 「分かりました。至急にギルドマスターへご報告に行きますので、少々お待ち下さい」


 そう言ってアリスさんは報告の為に少し席を外すと、暫く経ってギルドマスターを連れて戻って来た。


 「無事に指名依頼を完了させて戻ったようだなルイ、ご苦労だったな」


 ギルドマスターが労いの言葉を俺にかけると、視線をそのままユフィアとグラニにへと向ける。


 「ふむ、どうやら色々とあったようだな。話は執務室で聞くとしよう」


 ギルドマスターに連れられて俺とユフィアは執務室へと案内される。流石にグラニは入らないので、アリスさんに預かって貰うことにした。


 「では聞かせて貰おうか。ドグマの森で何が起きていたのか」


 「はい、実は……」


俺はドグマの森にいたスレイプニルについてギルドマスターに話した(スレイプニルと念話した内容は秘密)。


 「まさか伝説の【神馬】がいたとはな」


 流石にギルドマスターでも伝説の七神獣の一角であるスレイプニルの存在に驚いている様子だ。


 「しかもその子供を授かるとは、お前は俺が見込んだ通りの男のようだな」


 「いえ、そんなことはありませんよ。それでグラニについて何ですが、スレイプニルの子供であることは内密でお願いしたいのですが……」


 グラニがスレイプニルの子供であることが周囲に知られれば、間違いなく面倒ごとが起きるに違いない。奪おうとしたり、殺して素材を剥ぎ取ろうとする者もいるだろう。


「分かった、このことは他言無用しておこう。グラニはバトルホース希少種として冒険者ギルドに登録しておくとしよう」


 バトルホース。


 確か馬型のC等級魔物のことだ。希少種となればB等級魔物になるのか。確かにグラニ程の存在感なら少なくともそれぐらいでないと、寧ろ怪しまれるよな。


 「感謝します、ギルドマスター」


 俺は頭を下げてギルドマスターに礼を述べる。


 「では、指名依頼完了の報酬として500000リルだ。受け取ってくれ」


 そう言ってギルドマスターは報酬金である500000リルを支払ってくれる。これで無事に指名依頼は達成だ。今夜はご馳走にしよう。


 「さて、次はそちらのお嬢さんについて聞かせて貰おうか」


 そして次はユフィアについてだ。


 「お初にお目にかかります。私、リスティング神聖国の王女、ユフィア=リスティングと申します」


 「ほう、リスティング神聖国の【聖女】様ではないか。それがどうしてルイと一緒にいるんだ?」


 「はい、それが……」


 ユフィアは自分が何者かによって魔物化の呪いをかけられたこと、逃げ延びたドルマの森で偶然俺に解呪して貰い、暫くの間行動を共にしていたことを話した。


 「それは災難だったな。実はリスティング神聖国の現聖王から君を捜索して欲しいと依頼を受けていてな。丁度良かった」


 ギルドマスターによると、リスティング神聖国は今、【聖女】であるユフィアが行方不明になっていることで大変な騒動になっているそうだ。ユフィアを心配して多額の報奨金を出して彼女のことを探しているようだ。


 「お父様がそこまで心配していたとは……」


 ユフィアが申し訳なさそうな表情を浮かべる。


 「心配するな。すぐにリスティング神聖国にユフィアを保護したことを伝えさせよう。数日もすれば迎えが来るだろう」


 「感謝致します」


 ユフィアが丁寧にお辞儀すると、ギルドマスターは職員の男性を呼んでリスティング神聖国に書状を送らせるように伝える。


 「リスティング神聖国から迎えが来るまでユフィアは冒険者ギルドが責任を持って保護しよう」


 冒険者ギルドならユフィア無事だろう。


 「では俺はこれで失礼します」


 これで俺の役目は終わったので、風見鶏亭に戻るとしよう。


 「ルイ様、本当にありがとうございました。このご恩は決して忘れません。またお会いしましょう」


 「ああ、またな」


 そう言って俺は執務室を出るのだった。



 ◆◆



 グラニを引き取りにアリスさんのいるカウンターへと向かう。


 「はいグラニくん、人参をどうぞ」


 「ブルルゥッ!」


 何とグラニがアリスさんに餌付けさられている最中だった。人参が気に入ったのか、美味しそうに食べている。


 「お待たせしましたアリスさん、グラニのことありがとうございます」


 「いえいえ、グラニくんはとても大人しいので問題ありませんでしたよ」


 「ブルルゥッ!」


 アリスさんが頭を優しく撫でると、嬉しそうにするグラニ。どうやら相当仲良しになったそうだな。


 「ギルドマスターとは話が済んだんで、今日は風見鶏亭に戻ることにします。素材の査定は済みましたか?」


 「申し訳ありませんルイさん。今回は査定に時間が掛かっておりまして、明日には終わる筈です」


 「分かりました。明日また来ます」


 そう言って俺とグラニは風見鶏亭へと向かうことにした。


 「ブルルゥ」


 「どうした、グラニ?」


 風見鶏亭に向かう途中で、グラニが立ち止まる。視線を向けてみると、そこには沢山の野菜を販売している店があった。


 どうやら人参をご所望のようだ。相当気に入ったようだな。


 グラニの餌用として取り敢えず買えるだけ人参を購入することにした。今回は報酬金をたんまり貰えたので、それくらい安いものだった。


 「風見鶏亭に戻ったら腹一杯食べさせてやるからな」


 「ブルルゥッ!」


 俺がそう言うと、グラニは嬉しそうに鳴き声を上げる。


 それから俺達は風見鶏亭に到着すると、丁度女将さんがいた。


 「おやおやルイじゃないか。無事にD等級冒険者になれたんだってね。おめでとう」


 「ありがとうございます女将さん。それで今日、偶然魔物をテイムしたんですが……」


 「ほう、これが噂になっていた巨大馬だね。なるほど、こいつは立派な馬だね」


 女将さんはグラニを撫でる。


 やはりグラニのことが噂になっているようだな。流石冒険者達が泊まる宿屋だ、情報がとても早い。


 それにしても女将さん、グラニを見ても平然としていられるとは余程肝が据わっているのだろうな。多くの冒険者達と日々やり取りしいるだけのことはあるな。


 「これほどの大きさだと大型専用の厩舎しかないね。 1日の使用料として1000リル払って貰うよ」


「分かりました。取り敢えず1週間でお願いします」


 俺は1週間分の代金である7000リルを支払う。


 「はい。確かに。アル、ちょっと来ておくれ」


 「はーい」


 女将さんに呼ばれて来たのは俺と同い年位の少年。名前はアル。女将さんの一人息子で厩舎で預けられている動物の世話を任せられているようだ。


 「うわー、何て逞しい脚なんだろう! こんな立派な馬を見るのは初めてです!」


 それがグラニを見たアルの第一声だった。


 彼は動物が大好きらしく、グラニを見ても驚きはしたが怯えた様子は全くない。むしろ感動の表情を浮かべている。


 「もしかしてこの馬、バトルホースでしょうか?」


 「……そうです」


 本当はスレイプニルなんだが、ここは敢えてバトルホースということにしておく。これはギルドマスターからの入れ知恵で、グラニの為でもある。


 もしグラニがスレイプニルだと知られれば良からぬ考えを持つ者がグラニを狙う可能性があるからだ。


 余程の相手でもなければグラニを連れて行こうとする前に反撃させるだろうが、面倒事は極力避けたいからな。


 ちなみにバトルホースとは馬型のC等級魔物のことで、大柄な体格をしているのが特徴だ。恐らくアルはグラニをそれと間違えているのだろう。


 「さて、そろそろ厩舎に案内して貰っても良いかな?」


 「は、はい! すぐに案内しますね!」


 アルの案内に従い、宿の入口近くにある道から脇へと入りそのまま進むと、目的の厩舎が見えてきた。


 かなりの広さでたくさんの馬の姿があったが、グラニの姿を見るなり落ち着かない様子で身体を小刻みに震わせている。


 「ルイさんのグラニは体格が通常の馬よりも遥かに大きいですから、こちらの厩舎となります」


 案内されたのは通常よりも数倍大きい厩舎だった。


 「ほう、なかなか清潔だな」


 厩舎中は動物特有の匂いはするが清潔にされているし、何より広い。これならグラニも窮屈な思いをしなくて済むな。


 「ブルルゥ」


 どうやらグラニも文句はないようだな。


 「じゃあグラニ、ここで大人しくしてるんだぞ」


 「ブルルゥ」


 グラニの喉元を撫でてからその場を後にした。

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