指名依頼②
アウルベアを倒した俺はそれから更に森の奥へと進んでいた。
あれから魔物と遭遇することはなかったのだが、しばらくすると俺はとても異様な光景を目にすることになる。
「何だあれは? スライム、なのだろうか……?」
発見したのはバスケットボール程のゼリー状の魔物--スライムだった。しかもハイゴブリン5匹の群れに囲まれている状況だった。
まだ実物のスライムは見たことがないけど、確か普通のスライムは半透明の筈だ。しかし目の前にいるのは金色の個体だった。
他にも色々な種類のスライムはいるらしいが、金色スライムの情報はない。もしかしてあいつは希少種のスライムではないだろうか?
しかし、いくら希少種であろうと低等級魔物のスライムがドルマの森で起きている異変を起こしているなんてあり得ることだろうか?
「ゲギャギャ!」
そんなことを思っていると 1体のハイゴブリンが鋭い爪を振り下ろして金色スライムに襲いかかろうとする。
流石に金色スライムに勝ち目はないだろう、とそう思っていると、信じられないことが起きた。
「プルプルプルプルッ!」
すると金色スライムの目の前に魔法陣が出現する。
「ゲギャア!?」
そこから放たれる無数の光の矢によって1匹目のハイゴブリンは倒されてしまう。
「ゲッ!?」
「ゲギィッ!」
「ゲゲゲッ!?」
「ゲギゲギィッ!!」
仲間を倒されて激怒したハイゴブリン達が今度は一斉に金色スライムへと襲いかかる。
「プルプルッ!」
すると今度は金色スライムをドーム状で半透明な結界のようなもの覆う。
「ゲギィッ!?」
「ゲアッ!?」
「ゲガァッ!?」
「ゲギッ!?」
ハイゴブリン達の攻撃が金色スライムを覆う半透明な結界によって遮られる。どうやらあの結界は相当強固なようだ。
「プルル!」
そして再び金色スライムの前に魔法陣が出現。放たれる光の矢によってあっという間に倒されてしまった。
おいおい、あの金色スライム強すぎではないか?
しかも魔法のようなものも発動してたぞ。本来なら魔物には魔法を発動する力はない。もはやスライムってレベルではないような気がする。
やはりあの金色スライムがこの森に起きた異変の原因なのだろうか? とにかくあの金色スライムを調べてみよう。
俺は鑑定慧眼で金色スライムの情報を見てみることにした。そこにはなんと驚きの情報が載っていた。
名前:ユフィア=リスティング
種族:人間族
適性:光属性
魔力:30000
魔法:ライトアロー(小)・ヒール(小)・ピュリフィケーション(中)・ホーリーレイ(中)・ターンアンデット(中)・エクスヒール(大)
加護:聖護結界
状態:呪い(魔物化の呪い)
聖護結界
魔力を消費することで強力な結界を張る。消費する魔力が多いほどより強固な結界を作り出すことができる。
魔物化の呪い
呪われた者の姿を魔物へと変貌させる呪い。
明らかに魔物ではなく人のステータスが表示されていた。
しかも魔物化の呪いによって魔物にされているようだ。もしそれが本当なら助けないといけないな。
「おい、そこの君」
俺は茂みから姿を現して金色スライム--ではなく彼女へと近づく。
「プルッ!?」
突然現れた俺に驚いたのか、彼女が慌ててその場から逃げようとする。
「ちょっと待ってくれ! 君は魔物ではなく人間なんだろう!?」
「--プルッ!?」
俺の言葉を聞き、彼女が動きを止める。どうやら意思疎通はできるようだな。
俺は敵意がないことを証明するために手にしていたミスリルスピアを地面に置くと、そのまま彼女に話し続ける。
「悪いが俺の加護で君のステータスを見させて貰った。君の名前はユフィア=リスティングで間違いないか?」
「プルルッ(こくり)!」
名前を告げると、彼女がこちらに近づいてくる。
「君は呪いでそんな姿になっている。間違いないか?」
「プルルッ(こくり)!」
「俺にはあらゆる呪いを解除できる加護がある。今から君の呪いを解呪しようと思うんだが、いいかな?」
「プルルッ(こくり)!」
どうやら了承は得られたようだ。
「ではいくぞ。禁忌解呪」
俺は禁忌解呪の加護を発動する。
すると突然、彼女の身体が強く輝き始める。あまりの眩しさに俺は反射的に目を瞑ってしまう。
それからどれだけの時間が経過しただろうか。俺は再び瞼を開けると、そこには何と修道服を着た美少女がいた。
金色の長髪、小ぶりな顔立ち、優しそうな大きい瞳、程良く整った鼻筋、雪のように白い肌、修道服越しからでも分かる抜群のプロポーション、全てが完璧な美少女だ。
あまりにも神秘的な美貌に俺は思わず見惚れてしまいそうだったが、ふと我に返って美少女の安否を確認する。
名前:ユフィア=リスティング
種族:人間族
適性:光属性
魔力:30000
魔法:ライトアロー(小)・ ヒール(小) ・ピュリフィケーション(中)・ホーリーレイ(中)・エクスヒール(大)
加護:聖護結界
状態の項目がなくなっている。つまり解呪は成功したようだ。
「無事に呪いは解呪されたぞ」
「ほ、本当に呪いが解けました……嘘みたいです……」
美少女は信じられないと様子で自分の身体を確認する。そして元の姿に戻ったことを認識したのか、目元に涙を浮かべ始める。
「あ、ありが……本当にありがとうございます……う、うええぇぇぇん!」
そしてそのまま俺の胸に顔を埋めながら、そのまま大泣きしてしまう。
どうしよう、流石にこれは想定外だぞ。こんな時は一体どうしたらいいんだ?




