希少種②
ハイゴブリンの群れと遭遇するという出来事が起きたが、無事に俺達はオルフィンへと到着した。
「長かったような、短かったような……」
エリオが年に似合わないしみじみとした表情と声音でそう言った。
「確かにな。波瀾万丈な昇格試験だったぜ……」
どうやらクードも似たような心境だったらしく、表情が同じだった。
「2人共、感傷に浸っているところ悪いんだが、早いところ今回討伐した魔物の素材を売却しようぜ」
俺はエリオとクードを置いて先に冒険者ギルドの中へと向かう。
「待ってください!」
「置いてくなよ!」
2人はそれに慌ててついてきた。
「あ、おかえりなさいルイさん。無事にD等級昇格試験を合格出来たようですね。おめでとうございます」
冒険者ギルドに入ると、微笑ましい表情でアリスさんが出迎えてくれた。この笑顔を見ていると無事に帰ってきたなと思う。
「ありがとうございます。それで早速なんですが昇格試験中に討伐した魔物素材を売却したいのですが」
「構いませんよ」
アリスさんに促されて、俺は大量のキラービーやオルフィンへの帰還中に討伐したホハイゴブリンを空間収納から取り出す。俺とエリオ達のは分かりやすいように分別して取り出している。
討伐したキラービー達を1匹ずつ丁寧に視察していくアリスさん。そして数分後、査定が完了した。
「お待たせ致しました。ルイさんは300000リル、エリオさんは55000リル、クードさんは45000リルとなります」
「ありがとうございます」
俺達はアリスさんからそれぞれ売却した金額を受け取る。
「ではこれは約束した1割です」
「はいよ」
「確かに」
そして俺はエリオ達と約束していた魔物を売却した際に発生する金額の1割を受け取る。
今回のD等級昇格試験は色々と大変だったが、ちょうど金欠気味なので丁度いい臨時収入を得ることが出来たので良しとしよう。
「皆さん、これからD等級冒険者になれたお祝いとして何か美味しい物でも食べに行きませんか?」
「それは良い考えだなエリオ! オイラ飯がすごく美味い店を知ってるんだ! ルイも行くだろう?」
「そうだな……」
確かに試験の後はぱあっと打ち上げをしたくなるものだ。よーし、こうなったらたらふく美味い物を食べるぞ。
「折角だから付き合うよ」
「あ、ルイさんはちょっとお話があるので残って下さい」
打ち上げに行こうとした俺をアリスさんが引き止める。はて、何だろう?
「分かりました」
打ち上げに参加出来ないのは残念だが、仕方がないな。
「ということだから今回はパスで。悪いな」
「そうですか、残念ですが仕方ありませんね」
「また機会があればよろしくな」
そう言ってエリオとクードは行ってしまう。何だかあいつらとは今後とも長い付き合いになりそうだな。
「それで、俺に話とはですか?」
「はい、実はギルドマスターにルイさんが戻られたら呼び止めておくようにと言われていまして」
「ギルドマスターが?」
まさかギルドマスターから直々の呼び出しを受けることになるとは。本当に何かしたのだろうか、俺は?
「はい。詳しい話は応接室でお話します。こちらへどうぞ」
アリスさんに案内されて、俺は普段は行かない冒険者ギルドの最上階にある応接室へと通される。
「もう少しすればギルドマスターが来ると思いますので、こちらでお待ち下さいね」
そう言ってアリスさんは退室する。
俺は応接室にあるふかふかのソファーに腰掛けながらギルドマスターが来るのを待つ。
そして待機すること数分。
「待たせて済まないな」
ギルドマスターが応接室へと入室する。
彼と会うのはこれで2度目だが、やはり圧倒的な存在感が漂う人だな。
「で、話って何ですか?」
「あー、そうだな。まずはD等級昇格試験合格おめでとうと言っておこう」
「あ、ありがとうございます……」
S等級冒険者であるギルドマスターに褒められると何だか照れるな。
けれどこんなことをわざわざ言う為だけに低等級冒険者である俺をここに呼んだわけではないだろう。
「それで、ここからが本題だ。お前には直ぐにドルマの森に行って貰いたい」
「ドルマの森に?」
ドルマの森。確かワイルドボアの討伐依頼を受けた時に訪れた森のことだ。
「何かあったんですか?」
「うむ、それがだな……」
2日程前にドルマの森に生息する大量の魔物が森から湧いて出てくるという知らせがあったようだ。
ギルドマスターによると、本来魔物と言うのは余程のことがない限り自らの縄張りからはまず離れないらしい。
つまり魔物達が縄張りであるドグマの森から離れる程の異常事態がドルマの森で起きたということだ。
そして俺にはその原因を調査して欲しいとのことだった。
しかし、何故俺なんだろう。こう言うのは上級冒険者がやるような依頼の筈だ。
「俺なんかで良いんですか? こう言うのはもっと上級冒険者の人が受けるような依頼だと思うんですが?」
「生憎、今は上級冒険者が不在でな。ギルド職員も今すぐ動ける状況ではないんだ。そこでD等級冒険者の中でも有望株であるお前に白羽の矢が立ったというわけだ」
有望株か。そこまで言われるのは正直悪い気分ではないな。
「本来ならこれはC等級依頼になるのだが、今回は特例だ。引き受けてくれるなら報酬は200000リルを支払おう」
おお、指名依頼というだけあってなかなかの報酬だ。それに今回の依頼はあくまで調査の依頼だ。解決しろというものではない。
「確認ですが、今回の指名依頼はドルマの森で起きている原因の調査であって、原因を解決しろということではないんですよね?」
「ああ。もし解決した場合はさらに報酬を多めに上乗せした500000リルを支払おう」
調査で200000リル、解決で500000リルか。どちらであっても好条件だ。断る理由はないな。
「分かりました。この指名依頼受けさせて貰います」
「そうか! 助かるぞルイ!」
ギルドマスターがバンバンと俺の肩を叩きながら豪快に笑う。痛いですよ、ギルドマスター……。
「よし、では早速調査に向かってくれ。だが、くれぐれも無茶だけはするなよ。危険だと判断したら撤退するのも冒険者としての心得の1つだぞ」
「肝に銘じておきます」
こうして俺はギルドマスターからの指名依頼を受けることになったのだった。




