魔法屋②
魔法書。
それは読むだけで魔法を習得できるという特別な本だ。
本来魔法とは特殊な訓練を続けることで使えるようになるのだがこれさえあれば簡単に習得できる。
しかし一度使ったら二度とその魔法書は使えなくなるうえに、物によっては高額で取引されているらしい。
火属性の魔法書(小)
読むと火属性の小魔法を1つだけ習得することができる魔法の書物。ただし習得できる魔法はランダムで決まる。一度読むと消滅する。
これは凄い。ランダムとは言え読むだけで魔法を習得できるのはなかなか良いな。
さて、俺の適性は無属性だからな。無属性の魔法書を探してみよう。
俺は本棚にある魔法書を片っ端から漁ってみる。すると灰色の魔法書を発見する。
無属性の魔法書(小)
読むと無属性の小魔法を1つだけ習得することができる魔法の書物。ただし習得できる魔法はランダムで決まる。一度読むと消滅する。
どうやら無属性の魔法書で間違い無さそうだ。えっと、値段は--200000リル!? 思っていた以上に高いぞ! これを買ってしまったら俺の所持金のほとんどが使い果たしてしまう! けれど魔法は使えるようになりたい! ああ迷う!
考えに考えた末に俺は魔法書を購入することに決めた。やはり人は欲求には勝てない生き物なのだ。食料はあるし、宿代もしばらくの間は何とかなる。お金はまた依頼を受けて稼ぐとしよう……。
俺はそう決めて無属性の魔法書(小)をカウンターへと持っていく。
「この魔法書をくれ」
「あいよ。200000リルだよ」
「これで」
俺は200000リルを支払い無属性の魔法書(小)を購入する。
これで俺も魔法が使える! 何だかワクワクするな!
「それでどうやって使うんだ?」
「簡単さ。ただ魔法書を開くだけでいい。それでアンタは魔法を習得できるはずだよ」
店主の言う通りに俺は魔法書を開く。本の中は奇妙な文字で書かれており、何と読むのかは分からない。
すると文字が輝き始めると、魔法書が光の粒子となって俺へと降り注ぐ。何だか不思議な感覚だな。
「これでアンタは魔法を1つ習得したよ。確認してごらん」
俺は早速ステータスを見てみることにした。
名前:ルイ
種族:人間
適性:無属性
魔力:1000000
魔法:マナチェーン(小)
加護:鑑定慧眼・危険感知・魔力纏鎧・異常無効・自動回復・空間収納・眷属契約
おお、確かに魔法の欄に習得した魔法名が記載されているぞ! マナチェーンか。どう言った魔法なのか見てみよう。
マナチェーン(小)
消費魔力500
魔力の鎖を作り出して対象を拘束する。
これはなかなか使えそうな魔法だ。
小魔法だからそれほど長く対象を拘束できるわけではないだろうが、少しでも動きを止められるのは良いぞ。
よし、用も済んだし、そろそろ帰るとするかな。
これ以上魔法屋にいる理由はないので店を後にしようとしたその時だった。
「お待ち」
声をかけられて俺は歩を止める。声をかけてきたのは老婆だった。何だよ、今の俺は早く魔法を試したくて仕方がないのに!
「アンタ、信じられない程の魔力量の持ち主だね?」
「--ッ」
老婆の言葉に俺は思わず息を呑む。確かに俺の魔力量は常人を遥かに超えるほど莫大だ。しかしそれは他人には分からないはずだ。
「何驚いた顔をしてるんだい? あたしは目が良いからね、視界に入った奴の魔力が分かっちまうのさ、ヒヒヒ」
不気味な笑みを浮かべる老婆。この老婆、只者ではないな。悪いがステータを見させて貰うぞ。
名前:ロザナ
種族:人間
適性:闇属性
魔力:60000
魔法:.ダークアロー(小)・ポイズン(小)・テラーミスト(中)・ナイトメア(大)
加護:魔力測定
魔力測定
視認した対象の魔力量を測定することができる。
なるほど、どうやら加護の魔力測定で俺の魔力量を知ったのか。それにしてもこの老婆、ステータスウィンドウを見る限りなかなか強いな。
「……ああ、そうだ。だからどうした?」
今更隠していても仕方がないので開き直ってみた。
すると老婆はニヤリと笑みを浮かべる。
「いやなに、それ程までの魔力量を持つ奴なんて今まで出会ったことがないからね。どんなことがあればそんな魔力量を手に入れたのか興味があってね。よければ教えてくれないかい?」
やはり俺のようなとてつもない量の魔力を持つ者は異常らしいな。魔法使いならそんな俺に興味を持つことも有り得るか。
「悪いがそれは教えられない」
「そうかい、それは残念だね」
流石に女神様に与えられた、何て言えるわけないよな。言ったとしても冗談だと思われるだろう。
「話は以上か? 用は済んだからそろそろ帰りたいんだが」
「まあ待ちな。少しアタシの頼みを聞いて貰えないかい?」
「頼み?」
「ああ。ついて来な」
少し怪しい気もするが仕方なく店主であるロザナに案内されて俺は店の地下へと続く階段を進んでいく。
掃除が行き届いていないのかそこら中が埃だらけだ。
そして階段を降りると、そこは研究室のような場所だった。机の上には製作中の杖やアクセサリー等が置かれている。
「アタシは商売だけじゃなくてマジックアイテムの開発もしてるんだよ。それで頼みたいことというのはアンタの魔力をアタシにくれないかい?」
「俺の魔力を?」
「ああ。あれに魔力を注ぐだけで良いんだ」
そう言ってロザナが指差す方へと視線を向ける。そこにはかなりの数の魔石のような物が置かれていた。大きさは大体テニスボールくらいだ。
「これは人工的に作った魔石だ。マジックアイテム開発には多くの魔石を必要とするからね。アンタにはこの人工魔石300個に魔力を注いで欲しいのさ。無論、タダとは言わないよ。もし引き受けてくれるならこれをくれてやっても良いよ」
そう言ってロザナが出して来たのは灰色の本--つまり無属性の魔法書だった。だが、先程俺が購入した無属性の魔法書(小)よりも強い魔力を感じる。
無属性の魔法書(大)
読むと無属性の大魔法を1つだけ習得することができる魔法の書物。ただし習得できる魔法はランダムで決まる。一度読むと消滅する。
大魔法が使える魔法書だと! それは是非とも欲しい!
「でもそれってかなり貴重な代物なんだろう?」
先程の無属性の魔法書(小)でも200000リルしたんだ。無属性の魔法書(大)ともなればかなりの高額で取引きできる代物だろう。
「そうさね、ざっと10000000リルは下らないよ」
いやいや高すぎるだろ! それだけあれば当分は遊んで暮らせるぞ!
「アタシは適性は闇属性だから使えないし、無属性の適性を持つ者は少ないからなかなか買い手が見つからなくて困っていたところさ。それなら別の方法で有効活用させて貰おうと思ってね」
なるほど、そういった事情もあるのか。なら遠慮なく引き受けるとしよう。こちらとしては無属性の魔法書(大)はどうしても欲しいからな。
「分かった。引き受ける」
そう言って俺は人工魔石の 1つに触れて魔力を注ぎ始める。すると人工魔石が光り始め、徐々に、徐々にその輝きが増していく。俺から放たれる魔力を吸収きているのだろう。
1分程経過して人工魔石1つに魔力の充填が完了する。
よーし、この調子でどんどん魔力を充填させていくぞ!
50個目。
うーん、まだまだ大丈夫そうだな。気分も悪くないし、このまま続けよう。
100個目。
本当に俺の魔力は減っているのだろうか? 特に変わった変化はないな。
150個目。
これで半分だな。何だかほんの少しだけ身体が怠くなった感じする。これが魔力が減っている感覚なのか。
250個目。
そろそろ魔力が半分を消費した頃だろうか。流石に疲れて来たな。
「300個目。終わったぞ」
こうして俺は数時間かけて人工魔石300個に魔力を充填するのを完了する。流石に魔力を消費し過ぎたからなのか、少し倦怠感がある。
「これでもう終わりなのか?」
「ああ、まさかこの短時間で人工魔石300個に魔力を満たすとは恐れ言ったよ」
ロザナは感嘆とした表情を見せる。
「これで当分の間はマジックアイテム作りに没頭できるさね。約束の品だよ。遠慮なく受け取りな」
そう言ってロザナは無属性の魔法書(大)を手渡してくる。よし早速使ってみよう。
俺は無属性の魔法書(大)を開き、魔法を習得する。さて、どんな魔法が使えるようになったのかな? 大魔法だから余程強力な魔初なのは間違いないだろう。
名前:ルイ
種族:人間
適性:無属性
魔力:1000000
魔法:マナチェーン(小) ・マジックキャンセル(大)
加護:【鑑定慧眼】【危険感知】【魔力纏鎧】【異常無効】【自動回復】【空間収納】【眷属契約】
確かに魔法の欄に新たな魔法名が記載されている。マジックキャンセルか。どう言った魔法なのか見てみよう。
マジックキャンセル(大)
消費魔力:10000
あらゆる魔法を無力化させる。
おお、どんな魔法でも無効化できる魔法だなんて滅茶苦茶強力ではないか? こいつは大当たりを引いたぞ!
「で、どんな魔法を習得したんだい?」
ロザナが気になった様子で尋ねてくる。
「マジックキャンセルっていう魔法だった」
「マジックキャンセルだって!? そりゃ大層な魔法を習得したね!」
そう答えると、ロザナは非常に驚いた様子を見せる。
彼女によるとマジカルキャンセルは無属性の魔法の中でもかなり珍しい魔法だと言う。如何なる魔法を無効化できる力は魔法をメインにして戦う魔法使い等には天敵とも言える。
それに加えて俺の魔力量はずば抜けて高いからな、何度でも発動できるぞ。
さて、魔法も習得出来たことだし、流石に疲れた。明日のD等級昇格試験に備えてそろそろお暇するとしますか。
「じゃ、俺は帰るぞ。また無属性の魔法書が手に入ったら教えてくれよ」
「魔法書なんて滅多に手に入る代物じゃないよ。まあ、もし手に入れたら報告はしてやるよ」
「頼んだぞ」
そう言って俺は魔法屋を出る。
これで準備は整った。後は宿に戻ってゆっくり休むとしよう。
こうして無事に準備を終えた俺は、明日のD等級昇格試験に備えて風見鶏亭へと帰るのだった。




