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スーパーポジティブ・ネガティブガール  作者: 裕弼
スーパーポジティブガール
4/4

隠蔽、そして片鱗

 放課後、暇を持て余して屋上に来た。そこには珍しくうなだれた先輩の姿。フェンスに寄りかかって、天を仰いでいる。

「……はぁ」

 ほんとに珍しい。というか――泣いてる?これまで涙目までは見たことがある。だけど、今は違う。明確に、泣いていた。

「頑張ってるんだけどな……」

「先輩」

「翔くん!?どうして」

「それはこっちのセリフ。どうしたんすか」

「えっと……その」

 あれ、歯切れが悪い。ほんとにどうしたんだ。……先輩のこんな顔、見るたびに胸が痛くなる。

 涙を拭いて、先輩がいつもの調子でしゃべりだした。

「ま、まぁこんなところ見られたところで、ね?地球上ではありふれた光景だよ。何の面白みもないし、お金取れるレベルにない、素人のサーカスだ」

「ほんとにどうしたんすか」

「っ……何でもない、何でもないから!」

 先輩の手には――プリント?ああ、この時期は模試か。判定悪かったのかな。

「成績落ちたんですか」

「……ふふっ、キミはまったく、デリカシーってものがないのかね」

 力なく笑った。ああもう、ホントに俺は余計なことを……。

「すんません」

「いいよ。わかってるし。あーあ、これからどうしよっかな」

「そんなに思いつめなくても、まだ時間ありますよ」

「……あのね、キミにとっては”まだ”かもしれない。でも私には”もう”」

 そんなにギリギリなのか……。高三だし、そういうものかもな。一年ないって、感覚的にはキツイもんな。

「人生、時間は有限だからさ。何事も早いに越したことはないし、諦めるのも重要かなって。私、バカだから。…間に合わないよ」

「先輩は、いろいろ知ってるじゃないですか。使い方を間違えてるだけですよ。俺でよければ、勉強手伝います」

「ふふっ、ありがと。でもいいの。どうせ私なんて……」

「先輩のそんな姿は見たくないです。いつもみたいにデカいスケールで語って、笑っててくださいよ。好きですよ、先輩の笑顔」

「っ……!」

 流れる涙。顔も赤くなってきた。先輩でも、こんな表情するんだ……。俺は、どうしたらいい?

 何もできずにいる俺。ただ、待つことしかできなかった。しばらく、泣いている彼女をただ見守っていた。

「……ふう、泣いたらすっきりした。覚悟してよね。女の子泣かせるなんてサイテー。世界では”生きたい!”って泣く子もいるのに、こんなことで泣かせないで。……責任、取ってもらうからね」

「……すんません」

「でも、キミのこと、ちょっと見直した。優しいね」

「先輩のことは好きですから」

「ふふっ、悪い子」

 よかった。少しだけど、調子が戻ってきたみたい。

「結局、どんだけ判定悪いんですか」

「見る?」

 先輩が渡してきたのは、模試の結果。そこに記載されてるのは――。

「B判定じゃないっすか」

「大問題よ。Aから落ちた。もう私には落ちる未来しか見えない。ぴえん」

 なんなんだ、この人……。心配して損した。

 だけど、少しだけ気づいたことがある。普通A判定から落ちたくらいで、ここまで落ち込まない。泣くなんて、もっとあり得ない。いくら何でも背負い込みすぎ。それに、言語についての対話の時のあの態度……。

――「キミって、言葉の裏、読める方?」

――「ううん私じゃなくて……」

――「自分の気持ちを、正直に伝えられなくて」

 先輩――無理しているんじゃないか?

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