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覚悟の代償

 またしても長い間が訪れた。シン……と逆に音が聞こえてくるような静寂が彼らの周りを包み込む。少しでも動いたらその刀がどこへ行くのか全員分かっているのだから緊張感が漂うのは当然である。


 しかし、動揺しているものは誰もいなかった。柏滝はもちろん他の2人も。まるでこうなることを覚悟していたかのような。


 柏滝は2人の様子を確認した。まず右側、荒垣琢磨を見やった。中肉中背に見えるまんまるのシルエットは名前も相まってダルマのように見える。だが肥大化した首や肩の厚みは脂肪だけでなく大量の筋肉がその下で眠っていることを表している。


 鼻はまん丸く変形しており顔を深く刻まれた皺の中だと一際存在感を示しており、耳も膨れてしわくちゃになっている。


 これは柔道で何度も潰している証拠であり実際荒垣は陸軍の中でもそれなりの地位であることは十分知っている。そしてそのことは妹から何度も耳が痛くなるほど聞いていた。そう、何度も。


 彼は妹の婚約者であった。


 そして、私の尊敬する先輩でもある。


「お前がどうしたいかはよく分かっている。妹を愛してたお前がどれだけ悲しんでいるのかも。なぜ我々を疑っているのかもな。だが首が狙われている以上大人しくはできない。違いされて斬られて死ぬのはごめんだからな。だからお前の考えを聞かせて欲しい。」


 荒垣は提案した。いつもの厳しくも優しい口調で。その声でどれだけ世話になっただろうか。訓練で叱責されることも多々あった。それ以上に相談をして幾度も慰められることもあった。とても頼り甲斐のある先輩だ。


 ここで手を引くかどうか。復讐自体をやめたいと心が揺らぎ始めたがそれは諦めた。どうせここから先は地獄なのだ。疑った時点でもう決まっている。

 

尊敬している先輩を半分の確率で切ることになるのだ。当然彼が犯人じゃなくても遺恨は残るだろう。


 これまでの関係は終わりを告げている。覚悟などとうの昔に終わっていた。

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