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剣が舞う

 東太島の国の美しい自然を見ながら、馬車は進んだ。

 ところが砂煙が周りから、たちこめてきた。男たちの

「ウヒャー!」

「オーッ!」

 という野蛮な声が聞こえる。多くの馬の鳴き声も聞こえる。

「くそ……。盗賊かもしれないな。この国の騎士は何をしてるんだ」

 とマーブが嫌そうに言う。

 やがて馬に乗った30人ほどの男たちに馬車が囲まれた。憎々しげな顔をした人ばかりだ。

 先頭にいるカシラと思われる男が言った。

「金を出せ。さもなくば命をもらおうか」

 やはり盗賊だ。カシラは馬車の中の私をのぞき込むと

「ほほぅ、綺麗な姫さんだね。金のかわりに、いただいてもいいかな」

 と下品な表情をしながら言った。マーブは、すぐに

「やめろ!!」

 とどなった。

「命乞いでもするかい? 綺麗な顔の騎士さんよぉ!?」

 とカシラがふざけた口調で言う。

「あははははっ!!」

 マーブが笑った。

「ふふふふ……」

 私も笑った。

「ははは! あははは!!」

 私とマーブは声を合わせて笑った。

「な、何を笑ってやがるんだ」

 カシラが少し、うろたえたように言う。

「だって、おかしいだろ。『綺麗だったら弱い』なんて決まりがあるのかい?」

 とマーブは自信たっぷりに言った。

 私は盗賊をにらみながら馬車を降りた。とたんに盗賊は少し後ずさる。マーブも馬車から降りて私の右隣に立った。

「怖いだろ。強い者は殺気だけで相手を倒そうとするのさ」

 そう言ったマーブは次は大きな声で私に命令した。

「抜刀!!」

 その声と共に、私はドレスの裾をまくり上げ、太ももに固定した短剣を取り出した。マーブも短剣を構える。

 マーブと私は目を合わせて、うなずき合った。

「ロンド!!」

 私とマーブの掛け声と共に、2人の短剣が回転しながら宙に舞う。私が投げた剣は、斜め右上を飛んで行き、マーブが投げた剣は、斜め左上を飛んで行く。2つの剣は向こう側で交差した。

 剣の技「ロンド」は複数の剣で使われる時、最も効果を発揮する。

 私の剣技をずっと見学していたマーブは、私のクセを把握して綺麗に正反対の「ロンド」を描いた。

 盗賊すれすれに舞う剣が、回転したまま向きを変えて私たちの足元に落ちてくる。私たちが剣をひろうのと同時に、盗賊の引き裂かれた荷台から、金貨がザラザラと落ちてきた。カシラの服も引き裂かれ、はだか同然の姿になっている。

「今度は、もっと当ててみせようか?」

 とマーブが笑いながら言った。真っ青になった盗賊たちは、落ちた金貨をひろいもせずに逃げて行った。カシラもズタボロの服のまま逃げた。

「大丈夫かい、アンジェ」

「いいヒマつぶしになったわ!」

「アンジェらしいね」

 私は護衛騎士。マーブは騎士に憧れていた王子。あんな盗賊には負けないのだ。


 ……戦うマーブも素敵だった。城に着くまで私は変装を楽しもう。


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