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冒険者ギルド_1

恭介は収入と身分証を求め、冒険者ギルドに登録しに訪れる。

異世界での最初の一日が終了し、恭介は床の上で目を覚ました

ナノの壊滅的な寝相によってベッドの下に追いやられたのである


「いてて…ちくしょう…神のくせに威厳もクソもあったもんじゃない…

起きろポンコツしん


『ぬ…むぅ…ふわあああ…おはよう、恭介…』


薄着でトロンとした表情を浮かべるナノの美しさは絵画のようであり、恭介は不覚にもドキっとしてしまうほどだった


「こういうところだけ神様だな…

はぁ…今日なんだけどさ、色々考えたけどやっぱり安定収入と身分証は欲しいなって思うんだよね

だから、冒険者ギルドで登録しようと思うんだ」


『うむ、異論はない

しかし…どのランクにするんじゃ?』


冒険者ギルド…世界各地に点在し、各国と提携して様々な依頼を仲介、斡旋あっせんする機関である

依頼内容は素材集めや危険生物の討伐、未踏みとうの地の開拓など多岐にわたる

難易度の高い依頼をこなすランカーは、相応の報酬と名声、そして社会的地位を得るのだ


「ん~…高すぎても悪目立ちするからちょっとなって思ってたんだけど…よく考えたら高いランクを持ってないと勇者と出会うチャンスなんて無いんじゃないかなとも思っててさぁ

迷うよなぁ…」


ランクはギルドに登録した際に受ける試験によって決まる

恭介のレベルであればある程度は狙ったランクになることができると見越しており、昨晩から迷っていたのだがついぞ結論は出なかった


『それなんじゃがな?

勇者は今でもたまにギルドの依頼を受けるのを思い出してな』


「え、そうなの?」


『あぁ、高ランクの依頼は塩漬けになりやすい…じゃから、早急に解決が必要なものに関してはギルドが直接冒険者に依頼を出すことがあるんじゃ』


「それを今や世界の救世主たる勇者様に依頼するっての?

立場的に大丈夫なのか?」


『あえてじゃよ

勇者はいつでも頼れる存在であると知らしめたいんじゃ

他国への抑止力にもなるしの』


「勇者って思ったよりも政治的なんだな」


『その辺は専門家が裏についてるんじゃから当然じゃろう

それでな、依頼内容によっては他のランカーを連れて合同で依頼を受ける時もあるんじゃ』


「高ランクになれば一緒に依頼を受ける可能性があるかもしれない…か

…目指してみるか、高ランク」


恭介は少し考えたの後ニヤッと笑うとそう言った


『そうと決まれば出発じゃな!動物に戻るから少し待っておれ』


「おう、助かるよ」




「試験かぁ…いざ迫ると憂鬱だなぁ」


昨日、凄まじい殺気をぶつけられた男の元に行かなければならないと思うと足取りが遅くなる

それにこの世界の試験がどういうものなのかわかっていない


『禁書の棚に侵入することも禁術使って鳥になることも気にせんのに変なこと気にするんじゃな』


「試験が好きな奴なんていないだろ

それにお前が、試験はいつも試験官の気分で決まるから内容はわからんのじゃ

とか言うからこんなに不安なんだろうが」


ナノは昨日の件があるため、鳥ではなくネズミになって恭介の肩に乗っていた

ハイバネズミというごく一般的な種類らしい


『ふふ…』


「どうした?なんか面白いこと言った?」


『いや、神として生きているとな、なかなか腹を割って話せる者もおらんからな

こうして誰かの肩に乗るなんてできることではないし、嬉しくてな』


「そうかよ」


恭介はついネズミの頭を指で撫でてしまった

ナノは特に嫌がるそぶりはなかったが、なんだか少し恥ずかしい


『お、あっという間に着いたの』


「ほんとだ」


改めて見るビギンズシティセンターは本当に大きい

20階は越えているだろうか


「何度見ても凄いな…魔法で無理やり建ててるって言ってたけどそうは見えないな」


『魔法無しで建てられるほどの建築技術は確立されておらんのでな

接合魔法と補強魔法のオンパレードじゃよ』


「それいつか魔法が解けて壊れたりしないの?」


『それがな、意外と事故は起きにくいんじゃ

魔法ならどこが弱まっているか魔法使いならすぐにわかる』


「なるほど…確かにねぇ…」


恭介の眼にはこの建物を作るために使われたおびただしい数の魔法が見えている

これほどの補強魔法が重ね掛けされていれば多少の爆発程度でもびくともしないだろう


「ある意味脳筋な建物だ」


恭介は中に入り、改めて館内マップを見る


「12階か…昨日の店主は移動箱があるって言ってたよな」


『あの者は魔法に疎いんじゃろうな

ニュアンスが違っておった』


「どういうことだ?」


『センターにはテレポーターが設置されておる

あれじゃ』


ナノは短い前足で奥にある扉を指さす

それは恭介にしてみれば、既視感があるものだった


「…エレベーターじゃん」


『エレベーター?よくわからんが違う

あれはテレポーターじゃ

正式名称を空間移動専用箱型移動機くうかんいどうせんようはこがたいどうきという』


「長いな!」


『そうじゃろ?じゃからテレポーターとみなが呼んでおる

ほら乗れ』


「あ、ああ…」


テレポーターの中は殺風景で、まさしくただの箱だった

壁には希望の階に行くためのボタンがついている


「まるっきりエレベーターだ」


恭介がボタンを押した瞬間、わずかに魔力が吸い取られるのを感じた

そのわずかな違和感と共に、恭介は12階についていた


「はやっ!まるで瞬間移動だ…」


『そうじゃよ?魔力を使用して客を別の階に転移させる箱じゃ

専用の箱から箱にしか移動できないが、一瞬で移動が可能じゃ』


「テレポーターの見えない場所…外壁のとこに凄い量の構築式が刻まれているのか…

魔力を溜めたり、使用者から吸収したりしながら稼働のエネルギーにしてるってわけね

よくできてる」


『わしも初めて見たときはびっくりしたぞ

転移魔法はかなりの高等技術それを外部の装置を使用するとはいえだれでもできるようにするんじゃから

素晴らしい発明じゃ』


「そうだね、んじゃあ…いよいよ登録だ」


テレポーターを降りた先は、広いスペースになっていた

たくさんのテーブルが置かれており、たくさんの人々が談笑している


『ここにいる者は皆このギルドに登録しておる冒険者じゃ…

情報交換したり、合同で依頼をこなしてくれるメンバーを集めたり、最新の依頼が来るのを待ったり…まぁ色々じゃな』


ナノが耳元でこっそりそう呟いた


「へぇ…馴染めるか心配」


スペース奥のカウンターには上部に看板が掲げられている

恭介が目指すのは【登録試験申し込み窓口】である


「すいません、いいですか?」


「…はい?」


眼鏡をかけた女性がけだるそうに恭介を見た


「珍しいですねぇ~受験ですか?」


女性は、愛想は悪くないがやる気はなさそうにそう言った


「珍しいんですか」


「ほら、最近は冒険者って養成所から持ち上がりで試験を受ける人が多いんで…この時期に試験うける方は珍しいんですよぉ

本日受けられますかぁ?

ちょうど試験官がいる日なので、対応可能です~」


「あ、そうですか

じゃあ、受けます」


「承知しましたぁ

申し遅れましたが、私はここの担当をしているレイルと言います

それじゃあ…この紙のここに名前を書いてもらえます?」


レイルは誓約書と書かれた紙を差し出した


「わかってると思いますけど、一応説明しておきますねぇ

ここが、受験についての説明です

怪我とかそういうのの責任は持てないです~

それから、ここが受験料に関することです

その他色々ありますけど大事なのそこだけなんで、問題なければサインお願いします~」


「…わかりました」


恭介が誓約書に志島恭介と書くと、レイルは怪訝な表情を浮かべた


「読めないですねぇ…どこの言葉ですか?」


「え?…あ、そりゃあそうか」


恭介は当たり前のように日本語で話しているし、相手の言葉も日本語で聞こえる

おそらく神の力か何かで自動翻訳のようなものがかかっているのだろうが、書いた文字はそうではない


「これって二重線とか引いて隣に書き直してもいいですか?」


「読める字で書いていただければ構いませんよぉ」


日本語で書いてわかるわけがないだろ…よし、これでいいはず


恭介は改めて現地の言葉でサインをする

文字の記憶もあるので、内容に問題はない


言葉も話せるし読めるし書けるのに、音は日本語だけしかわからないなんて…なんだか変な感じ

これはあれだ…ローマ字と同じだな


「はい、シジマ キョウスケさんですね

それじゃあ、こちらにどうぞ~」


案内されるがまま、部屋の隅のテレポーターに案内される


「乗って転移先に着いたら試験スタートなのでぇ」


「え、もう?先方の準備とか大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ~

彼らはいつでも準備ができているから試験官なんだそうですからぁ

それじゃあ…いってらっしゃいませ」


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