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地上は滅んだ ~蒼然の警部~  作者: 武田瑞穂
第1章 斧の魔物
8/13

1-8

 失踪した大男アベル・ラッドの勤め先〝マーカス酒造所〟は、大きな工場を無理やり一部屋分にコンパクトにした、といった様相だった。

 大きなドラム缶が数多くある。ドラム缶からは鉄の管が伸びていて、その管はもう1つのドラム缶に結合されている。男たちが、そのドラム缶にコップで水を掛けている。その作業は延々とつづき、なかなかの重労働に思えた。空のペットボトル、蓋つきのコーヒー缶、などなど、酒を入れるのに使える多種の容器が巨大なカゴの中に積み上げられている。

 

「あれは、何をしているので?」


ジェフ・マクレガー警部は、ドラム缶に水かけをしている男たちを指さして、工場主マーカスに聞いた。

工場主マーカスはこたえる。


「あれはね、熱した発酵ジャガイモから蒸発して飛んで行ったアルコールを冷やして、液化しているんだよ」

「なるほど」


とは言ったものの、実際にはよくわかっていなかった。

ジェフはマーカスに聞く。


「それで、アベルがこなくなったのはいつから?」

「一週間前からだ」

「アベルが最後にきた日、彼に変わった様子はあった?」

「いや、そういうことはなかったかな。あ、あの日、アベルは帰り際に〝たまには家族に肉を食べさせたいから、今日はオールドウォール通りでネズミ肉屋を探して帰る〟って言ってたな」

「アベルを恨みそうな人物に、心当たりは?」

「あんな良いやつ、誰からも恨まれたりしないさ」


 工場主マーカスは口ひげをひとなでしてから言う。


「それにしても、アベルの娘さんエイミーが可哀そうだよ。あの子はね、父親が大好きなのさ。それなのに、アベルのやつ失踪しちまうなんて。なぁ警部さん、エイミーのためにもアベルを見つけてやってくれよ」


 ジェフは言う。


「できるだけのことはするさ」





 

 酒造工員アベル・ラッドの住まいは、下水道ノースプール地区からシヴィックセンター駅の隣駅ノースアベニュー駅方面に向かうトンネルの中にある。

 ジェフはマーカス酒造所から、アベルの住まいまでの道のりを、注意深く歩いた。その道のりは長く、ゆっくりと注意深く歩いたので、調査にはかなりの時間がかかった。

 だが、その甲斐もなく、手がかりはなにも掴めなかった。


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