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地上は滅んだ ~蒼然の警部~  作者: 武田瑞穂
第1章 斧の魔物
2/13

1-2

 2049年


 ジェフ・マクレガー警部は、地下鉄マルタの駅の一つ、シヴィックセンター駅の配電室の中にいる。その配電室はジェフ警部の自宅、兼、警察事務所である。

 配電室の中では、2つのガスランタンが飴色の光を放っていた。壁に備えられている配電制御装置は、まったく駆動していない。部屋の中には、傷だらけのテーブルと椅子、生活雑貨や警備用具がしまわれている棚がある。床には小汚いマットレスが敷かれていた。

 ジェフ警部は、古びて綿がとびでたパイプ椅子にすわり、欠けたカップの中の、熱湯に浸かった大豆をかき回している。大豆は、地下鉄マルタに直結するショッピングモール〝アンダーグラウンド・アトランタ〟の地下で栽培される数少ない植物の1つだ。

 ジェフは十分に熱の通った大豆をスプーンで口に運ぶ。今日の大豆は塩と胡椒で味付けをした。格別美味くもなければ、不味いとも感じなかった。


 ジェフ・マクレガー警部は45歳。身長は6フィート1インチ(約185cm)と大柄で、肩幅は広い。顔つきは、泉のように青い瞳が知的で、顎はがっしりとしている。眉毛は濃く男らしい。全体的にオオカミのような勇猛さもあり、物理学者のように知性的でもあり、聖者の慈悲深さも感じさせる。


 朝食を済ませたジェフは立ち上がり、黒いジーンズの腰にデューティーベルトを装着する。テーブルに置いてある拳銃、ウィルソン・コンバット社のM1911クローン〝CQBライトレール〟を手に取る。この銃は、夜間に地上へ物品の回収にでる〝回収屋〟が見つけたもので、それは地下鉄マルタの警察本部に買い取られ、そしてそれをジェフが高値で購入した。グロックなら無料で警察本部から支給されるが、ジェフはその銃を選ばなかった。ジェフはウィルソンCQBのスライドを少しだけ引き、薬室に弾薬が装填されていることを確認する。そして安全装置をかける。シュアファイアのフラッシュライトが装着されているその銃を、ホルスターに収めた。

 次に、マットレスの横に置いてある小型の銃も手に取る。その銃の名はT4。これもM1911クローンで、メーカーはナイトホークカスタム。T4のフレームはオフィサーズサイズ。スライドはオフィサーズより少し長く、コマンダーより少し短い。やはり、ナイトホークT4も薬室への弾薬装填を確認した。ジェフはナイトホークT4をジーンズの前面に差し込む。そして、T4の銃把(グリップ)の上に、着ているシャツを被せた。これにより、ナイトホークT4は完全に衣服の中に隠れた。ジェフがウィルソンCQB以外の銃器を携帯しているようには見えなくなった。

 

 ジェフは〝POLICE〟のエンブレムがついたタンの中折れ帽を被る。そして、ところどころに汚れのあるカーキ色のコートを着る。

 彼はテーブルの上のガソリンランタンを左手に持った。もう1つのガソリンランタンの火を消す。

 ジェフは配電室の扉をあけた。シヴィックセンター駅の複雑な匂いがジェフの鼻孔をなでる。

 配電室から出たジェフは扉をしめ、冷たいドアノブの鍵を閉めた。


 ジェフは歩き出す。


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