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ローダ 最初の扉を開く青年  作者: 狼駄
エピローグ
242/245

それぞれの旅路

 ───(とき)をロットレン家の写真撮影の後に戻そう。


 ルシアとヒビキは、出産後の様々な不自由を考え、フォルテザにあるドゥーウェンの新居へ、1年間身を寄せた。


 そこに普段家主ドゥーウェンをマスターと呼称し、付き従っていたベランドナの姿はなかった。


 彼女は結局、最後の戦い(ルイス&マーダ戦)()いても、自分の扉の力を開くに至らなかった。なくても充分な活躍を果たし非凡(ひぼん)さ故を証明したわけだが、結局、自分の力を何にするのか(が何を欲するのか)決めきれなかった。


 このストイックなハイエルフは『自分は未だこの世界を知らなさ過ぎました』と言い残し、最終決戦終結後、同じハイエルフのレイチと共に旅に出たのである。


 大体そもそも彼女に限らずハイエルフの様な亜人(あじん)類は、一体どんな系譜(けいふ)()て、この地(アドノス)に生を受けたのだろうか。


 (かつ)てマーダが自身を創りし父、サイガン・ロットレンの望みし世界観を、このアドノスに構築しようと尽力(じんりょく)した。


 ───それは判る。


 だがゴブリンやエルフ、ドワーフなどといった連中すらも己が創造の内に(こしら)えた?


 余りにもそれは話が幼稚(ようち)過ぎる。あくまでこの世界線は、サイガン等2020年代からおよそ400年位の未来に他ならない。


 人類がAYAME(人工知性)と共に進化の一途を辿(たど)ったとして、数百年という短さで人種すら移り変わるものなのか?


 ベランドナがほのめかす『世界を知らない』とはそういった心持ちもあるのだろう。


 では、ドゥーウェンが(さみ)しい一人身になったのかと言うと、そうではなかった。彼の家には二丁拳銃(トゥーハンド)のレイが同棲(どうせい)し、後にローダ達の探索(たんさく)行に同行するきっかけにもなった。


 旅から戻った(のち)もこの家に居候(いそうろう)を続け、意外な程、女性じみた振舞いをみせたという。


 ドゥーウェン自身も()()のドゥーウェン、レイも全くの同類という共同生活。天寿(てんじゅ)を全うする迄それは続いた。


 やはり女の独り身を多少なりとも(さみ)しいと感じたのか。嘗て親になり損なった彼女である。


 加えてこの童貞くさい眼鏡野郎(ドゥーウェン)と曲がりなりにも()()()のがきっかけになったのやも知れぬ。


 こうしてレイの新しい片割れとなったドゥーウェン。


 エディン自治区とフォルテザが、大陸(イタリア)と最も隣接(りんせつ)している危険地帯という意識を持ち続けた。


 そこで同地区を発展させ、他国と対等に渡り合えるべく、フォルテザをアドノスの首都とする提案を他の自治区へ打診する。


 これは結果を見るまでもなく、満場一致で決定した。あと元来の首都であったフォルデノ王国は、余りにも疲弊(ひへい)が過ぎたのも後押しになった。


 また2092年から持って来たオーバーテクノロジーは、極一部の生活を豊かにするもの以外、これを凍結。特に戦力となる技術は、完全徹底させた。


 さらにAYAMEのプログラムを完全秘匿(ひとく)し、以後のバージョンアップも完全停止とした。


 現在アドノス島以外の世界観は、マーダとルイスの力で成立した、およそ西暦1910年代に限りなく近しい。


 サイガンの実に適当な歴史観がベースなので、ズレが生じいている箇所もあるが、これ以上の影響を与えない様にドゥーウェンが気を(つか)った。


 こうする事で以後の世界は、まるで同じ歴史を繰り返すと想像(イメージ)した。俗に言うパラレルワールド。これを人工で狙らうという無茶(凄味)


 サイガン()()と共にAYAMEによる人の進化という、大それたことをやろうとした彼らしい方法論だ。


 パラレルワールドの構築を推し進めたのは何故か? それは長くなるので後にしたい。


 ジェリド・アルベェラータ一家は、ラファン自治区のエディンの街に、ロイドを迎えて住み続け、エディンの復興(ふっこう)に尽力した。


 ローダ達に誘われたロイドとリイナが中抜けしたことも有りはしたが……。


 また一時期、ジェリドはフォルデノの復興支援にも出て行った。後輩バルトルトの思いへ応えるために。


 我がおてんば娘が無事、ロイドと結ばれた事に安堵(あんど)しつつ、自分は邪魔にならぬ様、表へ出るべきだという考えもあった。


 一方、森の天使であったリイナは、17歳を過ぎてから身長が急成長を()げ、より大人女性の色合いを濃くした。


 エディウス神(戦之女神)の司祭としても、益々(ますます)の活躍をした功績と、その見た目の変化も重なり、天使から()()と呼ばれるまでに昇格した。


 さらに不死鳥の力を受け継いだ功績で、エドルの大司祭の座も受け継ぎ、カスード家の後継を育てる事にも力を注いだ。


 ただ子宝には恵まれず、アルベェラータ姓は、養子のロイドで尽きると思われた……が、意外な()()が現れる。


 此処にプリドール・ラオ・ロッソ改め、プリドール・()()()()()()()という奇妙なボタンの掛け違え。


 しかも子に恵まれぬ娘夫妻を尻目に、世継ぎすら(はぐく)んだのだから驚きである。リイナ、()()()()()が、まさか()()()()()()もたらされた。


 プリドールは戦を失い、ただの守備隊という退屈(たいくつ)嫌気(いやけ)がさした。それに何より、良い男と一緒になる事を強く望んだ。


 そこでラオを離れ、情勢不安定なフォルデノに移住。たまたま再会したジェリドと恋仲になった。


 ジェリドがエディンに戻る際、プリドールが子連れで付いて来て、ロイドとリイナは大層驚いた。しかし父の再婚を大いに祝福したのである。


 待て待て………赤い(しゃち)には青い鯱という圧倒的第一候補が居た筈では?


 ランチア・ラオ・ポルテガ、遊び人の様な彼が別人の如く、ラオの豊富な海産資源と、観光資源を大いに活かすべく懸命に働いたのだ。


 プリドールはおろか、女遊びには目もくれなかった。寄って赤い鯱の結婚候補より外れた次第だ。


 実は商才があったことが知れる。莫大(ばくだい)な富を(きず)き、ランチア財団を設立。ドゥーウェンと同様に、以後の歴史に出来る限り、影響を与えない組織とした。


 ガロウ・チュウマこと本名『中馬ちゅうまん牙朗がろう』は、最終決戦後、アドノス島に別れを告げ、イギリス経由で単身鹿児島(故郷)に帰った。


 その後、彼が討幕(とうばく)(おり)、活躍したなどという記録は残っていない。


 ただ、イギリス艦隊が鹿児島を襲撃した薩英(さつえい)戦争の際、イギリス兵が、赤い刀を大いに振う薩摩剣士を見たという逸話(いつわ)がある。


 しかもこの島津武士、()()()()船に乗り移った訳ではなく、中から大いに暴れたという。


 これが史実ならば、家まで送らせた上に()()すら渡すという狂戦士ぶりをやってのけたことになるが、真意の程は(さだ)かではない。


 また第二次世界大戦の折、日本・ドイツ・イタリアとの三国同盟に於いて、中馬ちゅうまんという男が、イタリアとの連携に貢献したらしい。


 これも同姓だけで、彼と所縁ゆかりのある人物かは、全く()って不明である。


 一方、ルイス・ファルムーンは、フォウ・クワットロ改めフォウ・ファルムーン。そしてローダ・ロットレンと共に、一度祖国(そこく)へ戻り、初恋のエルレア・シアーテンと再会。


 自らが添い遂げる相手を紹介し、丁重(ていちょう)に頭を下げた。だがファルムーン家には、自らの息災(そくさい)だけを伝えのに(とど)まる。


 父ラムダの横暴ぶりに、神童で在りながら家を()てるという反逆の意志を示した。


 アドノス島へ戻った彼は、定住地を荒れ果てたフォルデノとした。


 国としての機能を失ったフォルデノを、他と同様のフォルデノ自治区と繰り下げ、初代区長として、同地区の復興に尽力した。


 また荒廃したカノン自治区をフォルデノに統合し、夫婦(そろ)って闇の大地へ光を照らした。


 フォウ・ファルムーンは、失われた暗黒神(ヴァイロ)に代わり、精霊術及び風水術を広め、その力を戦いではなく、カノンに眠る地下資源の採掘作業に利用させた。


 尚、子供は三人。双子の男女に加え、次男が一人。血縁による跡継ぎは(おろ)かと唱え、徹底してこれを禁じた。


 ───そして時間は過ぎ去り、無情にも彼等の(ほとん)どが、その命を(まっと)うした。

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