ヒロインに転生したけど原作は崩壊してました。~何をどうすればこうなるの⁈~
外国からも来賓を招いているほど盛大なパーティーの中突然、茶番が起きた。
「ジュリア・セントポーリア。
私、ヘンリー・ヴァン・グロリオサはジュリア・セントポーリア、そなたとの婚約を破棄させてもらう。」
この言葉を聞いた時、私はどうでも良いと思った。私の婚約破棄を宣言されても。そう、私はたった今婚約破棄を宣言されたジュリア・セントポーリアなのだ。
にしても、婚約破棄ってテンプレだな。昔、流行ったもんね。悪役令嬢に転生して断罪回避とか婚約破棄回避とか。そして、いつの間にか攻略対象たちに愛されているのにその悪役令嬢は逆ハーに気付かないっていう。
これで聞いていて分かると思うけど私は転生者だ。死んだ記憶はないのだけど気付いたらここにいたんだから多分、いつの間にか死んでしまったのだろう。
気付いたら赤ちゃんになっていて周りは豪華で前世ではなかった魔法なんてものがあるからびっくりしてしまった。なんと、私が生まれ変わったのは公爵家だったのだ。
もしや流行りの悪役令嬢に転生してしまったかと思ったけどジュリア・セントポーリアなんて名前、聞いたこと無かったから違ったのかと安堵した。まぁ、私が読んだことがある物語の中でとはつくけど知らないのなら回避のしようがないから諦めるしかないよね。
だって、悪役令嬢っていろいろと最後が悲惨なのだ。だから、悪役令嬢に転生だなんて物語で読む分には良いけど自分が体験したいかと聞かれると否と答えるしね。
「エマ・セントポーリア公爵令嬢への暴言だけでなく、彼女の周りのものを隠す、壊すといった行為から人を雇っての暴力行為、それに加え男性に襲わせようとしたり、暗殺しようとしたりといった非人道的行為までの数々の嫌がらせは明白。そのような卑しきものは第二王子である私の婚約者にふさわしくない。
こんな事をしたのは私の婚約者の立場が危うくなったからか?しかし、これは下策だ。愚かなものだな。」
エマは私の異母妹。私は前妻の一人娘でエマは私の継母でもある後妻の娘。仲は悪くはないけど良くもない。エマは前から第二王子の事が好きだったけど、私を蹴落としたい継母や異母弟に騙されたのかな。身内だと無条件に信じちゃうところあるし。
でもさぁ、エマはなんで隣にいるだけなの?そこはぴったりとくっつこうよ。第二王子がエマの腰を抱きながら守るようにしてるとなお良しなんだけどなぁ。まあ、そうしたら不貞を働いた王子がそれの言い訳のためにこの断罪もどきをしているってことになっちゃうからやらないか。それになんだかんだ第二王子は真面目な人だからエマと特別な仲になっているっていうのもなさそうだしなぁ。
「申し開きぐらいなら聞くぞ。ただし、聞くだけだがな。」
「いいえ、何もございません。」
あら、驚いてる。
別にねぇ、たとえ第二王子だろうが私との婚約を破棄することなんてできないし。
でも、国王と王妃の二人が静観しているのが少し気になるな。二人とも顔が真っ青だから止められているのかも。それとも、第二王子だけ切るのかな?どっちもの可能性もあるか。
まぁ、流石に他国の人間もいるんだから第二王子は少なくとも王籍を剝奪されるよね。せめてこの前あった学園の卒業パーティーの時だったら良かったのだけど。
でも、あれは卒業生限定で、卒業生じゃないエマは出れなかったからなぁ。だから役者がそろっているこのパーティーで事を起こしたのかな。
あとは、国王達に直訴でもしても認められなかったからここで宣言しちゃえとでも思ったのかも。王族の言葉は重いからね。そうしたら、絶対に婚約破棄できるとでも思ったんでしょう。
でもさ、周りの貴族たちの視線に気づいてるかな。皆、呆れたり面白がったりしてるよ。私には異母妹を害したって言われてるから軽蔑とかそういった視線が多いけど。それにもともと私、評判悪いしね。
「な、無いのなら別に良い。そなたの公爵令嬢としての身分剥奪としこの国の筆頭公爵家の公爵令嬢を害した罪で国外追放とす。未遂だからこれだけで済んだのだ。」
それを言うなら私も筆頭公爵家の公爵令嬢なんですけど……
いや、たった今それを剥奪されたから、元がつくか。
という、ツッコミ(?)は置いといて国外追放、ね。これは都合がいいかも。
「…全ては第二王子殿下の仰せのままに。
でしたら、この書類にサインを頂けるでしょうか?」
念のため用意しといてよかった。私がこの書類を用意したのは不思議に思わないとか第二王子が国王になったら、この国終わらない?それに不用心。
最初の書類しか見てないとか。これ、二枚目の書類には別の内容が書いてあるんだけど。まぁ、いいや。そのおかげでうまく進んだんだし。一枚目を私がセントポーリア公爵家との縁を切るという書類にしといて良かった。
ん?いや、私が実家と折り合いが悪いのを知っていたから不思議に思わなかったのかも。なら、まだ大丈夫か?
そして、私はパーティー会場から退場しようとした。したのだけど、邪魔が入った。
「ヘンリー。これは酷いんじゃないかな?ジュリア嬢が本当にエマ嬢を害したなんて証拠があったのかい?」
「兄上っ⁈」
え、ちょっとまって。なんで第一王子が出てくるの?周りはいつも目立たない日陰者の第一王子が出てきて驚いているし。うん、私も驚いている。
「それは、セントポーリア公爵夫人とジェームズから証拠の品として、手紙をもらいましたが……」
おぉ、やっぱり。継母と異母弟だったか。それにしても、お父様はこの近くにすらこないわね。
もともとこれがあるとでも第二王子に聞いてたのかな。
お父様は別に私たちの事を愛してないしねぇ。お母様とも継母とも結婚したのは家のためだし。お母様との間に男児が生まれてたら再婚なんてしなかっただろうしね。私たちの事も家の駒としかみてないもん。
まぁ、だからこんな酷い醜聞を作った娘は放っておくか。もしかしたら、第二王子は後でエマと婚約を結ぶのかもしれない。そうでなければ、私の名誉を挽回しようとでも頑張るだろうし。そうでないと、家の評判が落ちるもんね。
今までは、私の評判が落ちれば落ちるほどエマの評判が上がったから放っておかれてたけど、流石に国外追放となるとヤバいもんね。
「それだけか?」
「え?」
「証拠は手紙だけか?」
「はい、そうですけど……
それよりも兄上。急に出てきてどうしたのです?」
うん、警戒するのは当然だよね。私も初めは驚きが勝ったけど今は割と警戒してるし。
特に第二王子が警戒するのは当然か。一応、王位争いをしている相手だものね。ほとんど第二王子で確定っぽいけど。王位継承権も第一位だし。今回のでちょっと分からなくなったかもしれないけど。
第二王子は学生ながらに第1王子と同じ量の政務をきちんとこなして実績も作ってるし母親は王妃で血筋も良いけど、第一王子は渡された政務はこなしていても自分から仕事を得ようとしない受け身の体制で母親も側室で血筋が劣るからなぁ。派閥的にも第二王子の方が大きいし活発だ。
だからこそ、ここで出てくるなんて怪しすぎる。王族にしては珍しく侯爵令嬢と恋愛結婚をしたのだから私の事が好きという事もありえないし。
「ある人から頼まれていたからね。それに、流石に私もこんな事でかの国と関係を悪化させるのは避けたいんだよ。せめて、国内の貴族のみの場だったら良かったのだけど。あぁ、でも、あの二人なら知ってしまうかな。」
ある人とかかの国ってもしかして第一王子は知ってる?まって、なんで第一王子が知ってるの?この国でこの事を知ってるのは国王と王妃、そして私の亡くなった祖母だけのはず。そして、国王と王妃には誰にも漏らさないよう制約がかかってるって聞いてるんだけど。
そして、私が混乱している間に自体は急変した。私たちの元には輝くプラチナブロンドを顎のラインで切りそろえ、釣り目気味で鋭く見える紫の瞳をもった一人の美青年がやって来たからだ。
「その通りだよ。僕がハリーに頼んでいたんだよ。僕の愛しの婚約者に何かあったらよろしく頼むと。」
「レイ様っ⁉」
「ごめんね、僕の可愛いジュリ。大変な時に一人にしてしまって。予定外のアクシデントがあったから遅れてしまったんだよ。ようやくジュリが僕のものだってみんなに知ってもらう機会だっていうのにね。」
レイ様は私の本当の婚約者でアルメラ王国という国の王族。公爵位と伯爵位を持っていて外務大臣でもある。事前に念話という魔法で聞いてたから遅くなるのは知ってたけどどうして、レイ様が第一王子と知り合いなの?っていうか、第一王子を愛称で呼ぶ程仲良いわけ?
「兄上、彼は誰です?それに、ジュリアは私の婚約者だったはず。たった今、破棄できましたけど。」
「それは僕から話そうか。僕はレイモンド・メラ・グランウィル公爵…とでも名乗っておこうかな。」
「なっ。」
第二王子は五大国の一つのアルメラ王国の王族ってことでおどろいてるけどさ、銀髪に紫の瞳ってところで察しようよ。それにレイ様は外務大臣なんだから外交も担当してるんだし。第二王子も何回かあったことあるはずだよ。周りも隣の人と話すとか動き始めてるよ。実は第二王子って勉強ができる馬鹿なのかも。うん、ありうるね。
ちなみに、アルメラでは貴族はフォン、王族はメラを付けるのがルールでグロリオサでは王位継承権を持っている者がヴァンを付ける。あぁ、でもアルメラの王族はフォンを名乗るときもあるみたいだけど。
「君がジュリと僕の婚約を知らないのも無理ないよ。だってこの国でこの事を知っているのは国王夫妻にハリーとエミリー妃、それに今は亡き元セントポーリア公爵夫人だけだからね。
まぁ、ジュリをどうして己の婚約者だと間違えたのかは知らないけど。この国では表向き、君の婚約者候補ではあったけど、婚約者ではなかったよ。」
はぁ、レイ様カッコいい。最後の方で第二王子に怒ってくれてるのも嬉しい。早く嫁ぎたいなぁ。
「そうだ、丁度いいから今言っちゃおうか。この国に派遣した評定者と陛下が下した判断。」
評定者?評定者って五大国が自国の同盟国に相応しいかを判断する人だよね。来てたんだ。
「まさか、レイモンド殿が評定者ではあるまいな。」
「第二王子殿下、君に名前を呼ぶ許可を出した覚えはないよ。僕の事はグランツウェルと呼んでもらえるかな?それと、評定者は僕じゃないよ。本当はジュリのそばに行けるから僕が良かったんだけどね。これ以上はばらさないよ。君たちが自分で気付いたのなら良いけど僕達からばらすのはダメだからね。」
へぇ、評定者にそんなルールがあったんだ。評定者ってだれだろ?最近アルメラから来たといえば、ヴィオラ・フォン・コリル子爵令嬢くらいだよね。でも、ヴィオは子爵令嬢だし友人になったけどこの国の事を探るような事は私の知る限りしてないしそんな暇ないだろうし。でも、いろいろと継母や異母弟が出した悪評のせいで孤立している私と仲良くしておきながら別の人たちとも仲良くしてるしそっちの方から聞くという事も出来るか。
うーん、分からん。
「最近、アルメラから来たといえばヴィオラ・コリル子爵令嬢ぐらいだな。コリル嬢、出てまいれ。」
おい、第二王子。たとえヴィオが評定者だとしても誰か言い当てなきゃ意味ないじゃない。絶対に分かってないわよね。
「そなたが評定者だな。」
「…………」
「なんとか申せ。」
ヴィオは頭を下げたまま答えないけど、当り前だよね。答えないよりも答えられないってところだし。
それにしても、もしも本当にヴィオが評定者なら王族、もしくはアルメラの女王陛下の忠臣だよね。第二王子のあの態度は平気なのかな。
普通は国を治めているという事から大国、小国関係なしに王は同列とされているけど、五大国の王族は別でほかの国の国王と同列だから、もし王族ならば不敬だよ。
「ヘンリー、子爵令嬢じゃ王子に直接話せるような身分じゃないよ。」
「それと、うちの国の誰かという事も当ててもらわないと無理だけど。」
「ヘンリーが言わないのなら私が言おうか。ねぇ、ルルシーナ?」
ルルシーナ……ルルシーナってレイ様の妹だよね。何度か会ったことあるけどヴィオとルルシーナさんって全然似てないよ。見た目も性格も。
でも、見た目だけなら変えれるか、アルメラの王族は。確か、そういう魔道具を持っていたはず。そんな魔道具アルメラの王族くらいしか持ってないのではなかろうか。
髪とか目の色を変える魔道具はあるけど見た目まで変えられるようなのはすっごく貴重だしなぁ。
でも、第一王子殿下がヴィオに話しかけられてもヴィオは黙ったままだった。むしろ、困惑しているみたいだ。そんな中、招待客が入場する扉の前の侍従の声が響いてきた。
「ア、アルメラ王国 ルルシーナ殿下 入場」
対して大きくもない声が会場全体に通るのは会場内が静寂に包まれていたことと、風の魔法で声を広げているから。なんて現実逃避をしてみる。
「おやおや、当たりだと思ったけど外してしまったみたいだね。」
「そうですね。それでハロルド、どうしてそう思ったのか教えてもらえますか?」
「エミが卒業まで半年しかないのに、アルメラから留学生の令嬢が来たと聞いてそれを私に教えてくれたんだ。だから、評定者が来たのかなって。そして、この国にはレイの最愛のジュリア嬢がいるだろう?だからレイなら私情を挟むかもしれない。でも、自分が行かないのは嫌だと思いそうじゃないか。なら、妹のルルシーナが来るだろうと思って。最初は留学生の令嬢が評定者の下にいる者かと思ったけどそしたら、ルルシーナはどこにいたのか分からないからとりあえず言ってみたんだよ。」
第一王子が話している間に私の混乱はようやく落ち着いてきた。
「え?じゃあ、ヴィオは…………」
「私の部下です。レイお兄様にジュリお義姉様を守ってほしいと頼まれてましたので、訓練代わりにやってもらいました。それに、私もジュリお義姉様と仲良くなりたいんですよ。だからジュリお義姉様の情報ももらってましたよ。」
ルルシーナさんは私と仲良くなりたく無いのかと思ってたけど違ったんだ。良かった。嫌われてるかと思ってたから。
「ハリーが答えたという事はハリーは王になるんだね。」
「え、ならないよ。ヘンリーはこんな事を起こしちゃったから無理だろうし第一王女で正妃の娘のカレンデュラがいいんじゃないかな。」
「いえ、ハロルドがなってください。ならないなら、アルメラはグロリオサとの同盟をなかった事にさせていただきます。これは評定者として私が判断を下し、最終的に陛下が決められた事です。」
同盟をなくすほどかなぁ、うちの国の第一王女は。
私はそんなに問題があるとか聞かないけど。
「それは、僕が君たちの友人だから…という訳ではなさそうだね。」
「当り前です。ハロルドを選んだのは一番兄妹の中で王としての能力が高いからですよ。
王になる気がなかったみたいなので第二王子がこんな事を起こさなければ第二王子に王位についてもらおうと思ってましたけど。第二王子の思い込みはジュリお義姉様のこの事だけで他は正常ですしこの国をよくしようと思っているみたいですからね。別に極論、王が優秀でなくとも周りが優秀なら最低限にはなりますが国はまわせます。実際、今の第二王子はまさしく側近が有能だから何とかなっているみたいですし。それに、いくら能力があってもやる気がない王だとこの国の民が可哀そうですしね。
だから、二人の王子のどちらかが王位についたら同盟はそのままでしたよ。今回のでハロルドのみになっちゃいましたけど。
そして、今出てきた第一王女は浪費癖があるので却下です。それに、周りに彼女を止めることが出来るような人物もいませんし。国の予算までもが自分のお金だと思って使われてしまっては困りますから。という事でお願いしますね。」
「あ、あの。少々よろしいでしょうか、ルルシーナ殿下。」
エマ……。それは、下手したらというか、下手しなくても不敬として捕らわれたりしない?大丈夫?
「どうかしましたか?エマ嬢。」
「ヘンリー殿下はどうなるんでしょうか?」
ほんとに第二王子の事が好きだね、異母妹は。あれのどこが良いんだか。
「そんなの、王位継承権と身分を剥奪して奴隷落ちにーー」
「臣下に降らせて公爵位を与えるのが一番望ましいですね。レイお兄様…グランツウェル公爵が言ったことは無視して良いですよ。あれはただ、私情を挟んだだけですから。」
「どうして私が公爵なんだ。兄上が国王だなんて間違っているっ。」
「それを決めるのは私達です。まさか、私達とあなた方が対等だなんて考えてませんよね?」
「それと、別に第二王子殿下が国王になっても別にどうでも良い。ただ、僕達との同盟はなくなるけど。この国は別にうちの属国じゃないんだから王太子を誰にするのかはそちらの自由だ。」
まぁ、内政干渉になっちゃうもんね。評定者のもある意味内政干渉かもしれないけど選択権はこちらにあるからセーフってところなのかな。
「すみません、ヘンリー殿下。わたくしのせいで。わたくしがヘンリー殿下を頼ったせいでヘンリー殿下の信頼を失うようなことを。すべてはわたくしの責任です。」
「エマ、あなたは身内を信じすぎよ。別に親しい人だろうが少しは疑う事を覚えたほうが良いわ。私たちは貴族なのだから。私はさっき、セントポーリア公爵家とは縁を切ったけどね。まぁ、それはともかく、裏をかかないと社交界で生き抜けないわよ。」
「お姉様はわたくしの事が嫌いではないのですか。」
「別に、嫌いでも好きでもないわ。あなたは私の異母妹という認識しかないもの。」
「すみません、お姉様。お母様とジェームズの言葉を鵜呑みにしてしまって。お姉様がやったわけではなかったのですね。」
異母妹は素直すぎる。このままじゃ直ぐにお腹が真っ黒な狸達の餌食になるわよ。私の言葉をなに、素直に聞き入れてるわけ?
「は?つまりはジュリアがエマにした事は冤罪だという事か?」
まだ気付いてなかったのか。まぁ、気付いても気付かなくてもどっちでよかったけど。あ、でもレイ様に嫁ぐから評判は良いほうが良いし気付いてもらえてラッキーかも。
「当り前だ。ジュリがそんな事をするはずないだろ。第一、お前の婚約者でもないのだからする必要がない。そこの異母妹に対しても完全な無関心じゃないか。少しは家族としての情はあるみたいだけど。」
レイ様は私の事を分かっていてくれてるのね。嬉しすぎる。
「んー、とりあえずはそういう事ですのでよろしくお願いしますね。では、私達はこれで。
あ、ジュリお義姉様は今後一切、この国と関わることはありませんから。第二王子がサインしてくださって助かりましたよ。」
あの書類はレイ様から渡されたものだけどルルシーナさんが用意したものだったのか。あの書類は一枚目は私をセントポーリア公爵家から追放するというもの。二枚目はこのグロリオサ国とは二度と関わらないという書類が書かれていた。そして、私達は今度こそパーティー会場を後にした。
そしてその後この国にあるアルメラの大使館で服を着替えてから三人で馬車に乗ってる。
別に私はグロリオサで親しくしていた人はいないし愛国心もないから挨拶する人もいないし早めに出発となったのだ。
専属侍女とも仲良くしてなかったからなぁ。私の乳姉妹がもともとは私の専属侍女になる予定だったけど彼女からしたら環境が最悪すぎて私はレイ様にお願いしてレイ様のお屋敷で働いてもらっている。私が嫁いだら今度こそ私の専属侍女となる。
「まったく、なんであいつが貴族のままなんだ。第二王子よりもあいつを何とかしたほうが良いと思うんだけど。」
「レイお兄様……さすがに筆頭公爵をどうにかするなんて無理ですよ。この国は数年前に筆頭公爵家が変わったばかりなんですから。」
「だけど、僕の可愛いジュリの事を知っていて放置していたんだよ。それに…」
「レイお兄様。自分がやったことは自分に返ってくるんですよ。だから、今後あの公爵一家にはそれ相応の報復を受けてもらいますよ。」
「あ、ルルシーナさん。」
「ジュリお義姉様、ルルと呼んでくださらないんですか?」
うわぁ、美少女に悲しげにされたら、まいっちゃうなぁ。
「ルル、エマは止めてね。あの子は純粋で騙されやすいだけだから。」
「なら、第二王子に嫁いでもらいますか。」
「エマは第二王子の事が昔っから好きだったし良いかもしれないね。」
あのあとの第二王子はちょっと大変そうだし、罰にはなると思う。まぁ、異母妹はどちらかというと被害者よりだしね。
「何言ってるんだ?二人とも。結局は騙されないようにきちんとしとかないといけなかっただけだろう。だというのに、放っておくのは…」
「はいはい。レイお兄様は本当にジュリお義姉様の事が好きですね。そのままジュリお義姉様だけを愛しておいてくださいね~。」
「何言ってるんだい?僕の可愛いジュリは僕の愛しの人で女神のような存在だけどルルはルルでずっと僕のようせ…」
「わー。ちょっと何言ってるんですかっ?私はもうそんな年じゃないです。子供じゃありません。」
「レイ様とルルって仲いいわよね。ちょっと嫉妬しちゃうかも。」
「僕の可愛いジュリが嫉妬する必要はないよ。だってジュリは僕の愛しの人だからね。」
え、ちょっとまって。このセリフ、どこかで似たようなのを聞いたことがある気がする。どこだっただろう?そう、とっても昔。例えば私の前世とか……
あ、私はヒロインだ。ジュリア・セントポーリアとしては出てきてなかったから気付かなかったのだろう。
前世で流行っていたラノベがあって君僕シリーズといわれていた。
一作品目は【だって君は僕の唯一の人】というのでアルメラの侯爵家の令嬢がヒロインだ。公爵子息がヒーローで、目の前にいるルルが悪役令嬢として出てきてた。とっても苛烈な性格で婚約者の公爵子息をヒロインに取られたと知ると物を隠したり壊したり誘拐したりといろいろとやっていた。そこには最後、レイ様がルルを助ける描写もあったな。
確か、ヒーローとルルの婚約は国が主体で貴族のパワーバランスを保つためのものだったはず。そこでルルはヒーローに熱を上げて仲良くしようとするんだけど性格が合わないのか仲良くできてなかった。しかも、ヒーローが一つ上だから先に学園に通っちゃって一年ほど会えなくて寂しかった。そして、ようやく一年たって入学してみたら、ヒーローがヒロインと仲良くしていて怒りが爆発とかになったんだよね。そして、一年たったころ学園でのパーティーで断罪されて公爵令嬢から平民になるところでレイ様が助けて修道院に入ったんじゃなかったっけ?で、パーティーの後にヒーローとヒロインが結ばれるところで「だって君は僕の唯一の人」って言われるという描写があった。
でもさ、ルルは目の前にいるよ。なんなら、ヒーローの公爵子息とは普通に同僚じゃなかったっけ?しかも、レイ様の話的には仲の良い幼馴染みで友人っぽいんだけど。
そして、二作目は【だって君は僕の最愛の人】というアルメラの子爵家の庶子がヒロインだ。アルメラの第一王子で現在の王弟がヒーロー。そして、レイ様とルルの義妹が悪役令嬢だったはず。とはいえ、全然悪役じゃない。ちょっと嫌味を言った程度。しかも正論。それに、後にわかる事だけどヒロインへの虐めも裏で止めてた。二人の関係は希薄で完全な政略婚約だったはず。ヒロインが最高学年の時に編入してきてそこから半年ほどでヒーローとヒロインは関係を深めて卒業パーティーで悪役令嬢を断罪って感じだった。でも、悪役令嬢悪くないじゃんと賛否両論が分かれた話だったりもする。
その、悪役令嬢ってレイ様とルルの妹だとは書かれていても義妹だとは書かれていなかったはずだけど。それに、こちらもまた現実ではヒーローと悪役令嬢が結婚したはずだけど。しかも、他国であるグロリオサにまで仲睦まじい夫婦という評判が届いておりますが。
そして、最後の三作目は【だって君は僕の愛しの人】というジュリアがヒロインでレイ様がヒーロー。この作品に悪役令嬢はいない。スピンオフみたいなものだったし。この作品のヒロインって謎が多かったんだよね。作中でもただのジュリアとしか書かれてなかったくせに平民ではなさそうだったし。でもヒロインになって分かったわ。今みたいな茶番があって公爵家を追い出されたんだろうな。
にしても、私がヒロイン⁈そんな柄じゃないんだけど。
まぁ、いいか。原作は崩壊しているっぽいし。よって私はヒロインだけどヒロインじゃないっ!
「……、…リ、ジュリ?どうしたんだ?」
「ジュリお義姉様、もしかしてレイお兄様の言葉が嫌でしたか?」
「いや、嫌っていう訳じゃないよ。ただ少し考えてただけ。」
私が考え込んでいたから二人に話しかけられても反応できずに心配かけてしまったみたいだ。
にしても、物語始まらないじゃん。私、このままだとレイ様のお屋敷に行くんだよね。やっぱり、原作は崩壊している。だって原作では街中でお忍び中のレイ様と出会っているもん。
「ジュリ、もちろんアルメラでは僕の屋敷に……」
「安心してください、ジュリお義姉様。レイお兄様は結局のところ獣ですからね。結婚式を挙げるまではルクナティア邸で預かりますよ。」
ルクナティア邸ってレイ様の実家‼うわぁ~、楽しみ。でも、ルクナティア公爵たちとはあまりあったこと無いんだよね。大丈夫かな?
「えっ⁈ルル?聞いてないよ。」
「言ってませんからね。お母様もお父様も楽しみにしてますよ。」
もちろん私もと、付け加えるルルが可愛いっ!
「本当に⁈よかったぁ。ふふふ、レイ様が育った場所かぁ。」
「まって、別に僕の屋敷でも良いよね?」
「何を言っているんですか、レイお兄様。そこならジュリお義姉様も休みの時に来てるじゃないですか。私には、会わせないくせに。」
「でも、ジュリの婚約者は僕だよ?」
「では聞きますが、その婚約者を自分の屋敷に放置することになってもよろしいんですね?」
「は?」
「レイお兄様の事ですからすぐにジュリお義姉様に手を出そうとするでしょう?だからそうならないために帰ったら仕事がたっぷりありますよ。その間は、きちんと私がジュリお義姉様の相手をさせていただきますね。私だってジュリお義姉様と仲良くなりたいんですよ。」
あれれれれ?どうしてかしら?レイ様とルルが私をめぐって争っているように聞こえるのだけど。え、実際争っている?どうして?私がレイ様の実家に思いをはせている間に何があったわけ?
私の疑問に答える人はいないけどとりあえず言わせてほしい。
何をどうすればこうなるの⁈




