症状4. てめえの血は何色だ?
「これだから人間は・・・」
地球上に現存するヒト種はたったの一種、ホモサピエンスだけ。
どんな人間も切れば真っ赤な血が流れる。
アダムとイブから生まれた兄弟だ。
しかし、全ての人類が仲間意識を持っているとは限らないない。
南北戦争前の米国では、黒人奴隷が当たり前のように存在した。
南アフリカではアパルトヘイト政策が行われ、非白人は差別されていた。
差別や偏見がまかり通るのは、相手を『同胞』として見なしていないからだ。
自身の家族や親戚を奴隷として扱う人は、まずいない。
けれど、自分とは全く関係のない、人種や民族が異なる相手であれば、どこまでも冷酷になれる。
私達はそういう生き物だ。
互いを思いやるためには、相手を『同族』として認識する必要がある。
同胞に対して貢献することで、人は社会に居場所を獲得していく。
心理学の三大巨頭と呼ばれるアドラーは、その認識を『共同体感覚』と呼んだ。
だが、異世界の妄執に憑りつかれた厨二病患者には、『共同体感覚』が致命的に欠けている。
これまでしつこく述べてきたように、自分を『特別な存在』として定義しているからだ。
「俺は凡人とは違う!
神に選ばれた男だ!」
異世界チート無双ラノベが植え付けた選民思想は、貴方の自己認識を大きく狂わせる。
同じ日本人でも、同級生でも、会社の同僚でも、どこか自分とは違う連中と感じるようになる。
相手を『対等の人間』と見ない者が、他人を理解して親密な人間関係を築くことができるだろうか?
同僚も上司も見下しながら、会社で協業を果たすことができるだろうか?
土台無理な話だ。
格下と思って扱えば、それは必ず相手に伝わる。
相手の素性に興味を持つこともないから、親密になる機会も得られない。
表面上は取り繕っても、いずれ関係は希薄化して孤立に至る。
コミュ障の自覚があれば、思い当たる節もあるのではなかろうか?
もちろん、全ての書籍がコミュ障を生み出すわけではない。
マザーテレサの献身的な看護を語った伝記に触れれば、貴方も奉仕の心が芽生えるだろう。
けれど、現在の異世界転生・転移ランキングの上位は善意に溢れた作品ばかりだろうか?
・役立たずスキルでパーティを追放されたので、真価を発揮して復讐します
・世界を救った勇者だけど、羊頭狗肉されそうになったのでスローライフに逃げます
・悪役令嬢に転生したので、成敗されないように立ち回りたい
「小説家になろう」が立ち上がった頃と比較しても、近年は異様に『被害者意識』を感じる作品が多い。
現実の社会になじめず、リア充に冷遇されてきた筆者の叫びが聞こえてくるようだ。
リアルで排斥された怨嗟が創作に向かい、それが貴方の劣等感と結びついて化学反応を起こす。
その結果生まれるモノは、決してエルフやドワーフのように人類に友好的な種族ではないだろう。
人に迫害されたゴブリンが大衆と交われば、行き着く先は戦争だ。
「人と人は簡単に分かり合えない。
異種族ならなおさらだ」