症状3. お前は今までに読んだ本の数を覚えているのか?
「俺は人間をやめるぞ、ジョーッ!」
サブタイ含め、パロディばかりのこのコラム。
最近の若い子に通じるのか、激しく疑問。
いったいどれだけ漫画を読み続ければ、こんなメタい内容になるのか・・・
私達は『食べた物』で出来ている。
毎日の食卓に並ぶ肉や魚、果物や野菜が体内で分解・合成され、来年の肉体を作り出しているのはご存じの通り。
ダイオウグソクムシを主食にすれば、貴方の体もダイオウグソクムシで作られるに違いない。
同様に意識や思想、言語も、貴方の見聞から形作られている。
初めは両親。
次に兄弟、教師や学友。
そして文字を覚えたら、書物やテレビ、ゲームから多くを学ぶことになる。
物語に触れる時、貴方はその主人公になる。
たとえそれが『化物』であっても、例外ではない。
人間には他者の立場で物事を考え、自己と同一化する能力があるからだ。
人間特有の共感力によって人外に変化するとは、実に皮肉な話。
ドラゴンが主人公なら、貴方はドラゴンになる。
オークが主人公なら、貴方はオークになる。
さすがに昆虫やウィルスは難しそうに感じるが、最近はそんな漫画まで出版されているから不可能ではないのだろう。
対象が人間の形をしていたなら、それはなおさら簡単だ。
特に『冒険者』や『賢者』、『貴族』といった存在は、現実に同じ語句があるが故にいともたやすく浸透する。
地球におけるそれとはかけ離れた存在であっても。
冒険者となった若者たちは、凶器を振り回して魔物を狩るようになった。
スライムや蜘蛛に転生した現代人は、人を殺害しても心が痛まないサイコパスに成り果てた。
物語の中でそれらに自己投影を続ける貴方も、いずれそれに近づいていく。
自己と主演の境界が曖昧になり、その思想や情動を受け継いでいく。
幼少の私は、剣術漫画の喧嘩男に憧れて『二重の極み』の練習に明け暮れていた。
家畜の解体もしたことがない青少年もしかるべき環境に身を置けば、いずれ『ゴブリン絶対殺すマン』に至るだろう。
他人との接触が少ない引きこもり・ニートは、特に影響を受けやすい。
なにしろネットやゲーム、漫画が情報源の大半を占めているからだ。
偏食家の栄養が偏りやすいように、ネット廃人は氾濫したオタクカルチャーによって半ば強制的に異世界人に近づけられていく。
人間を辞めるのに、石仮面は要らない。
空想世界の住人と一体になり、その在り方を取り込めばいい。
自己を『特別な存在』として定義し、平凡な大衆を『自分とは違うモブ』として見なす貴方は、もはや人間ではない。
「人間を辞めたところで、スタンド能力は使えない」