症状2. 手から火を放つ輩を、いつから人間だと錯覚していた?
「勇気があれば勇者になれる。
そんな風に考えていた時期が俺にもありました」
魔王は人間ではない。
スライムも人間ではない。
蜘蛛も、ドラゴンも。
熊も、魔女も。
神、吸血鬼、ロボット、人狼、ゴブリン、オーク・・・
近年の異世界転生漫画は人外で溢れている。
だが、そんなのは今に始まったことじゃない。
初代ドラクエの勇者ですら、人類を遥かに超越していたのだから。
むしろ人の形をしている分だけ、こいつのほうがタチが悪い。
普通の人は、鋼の剣を振り回して巨竜やゴーレムを倒したりしない。
雨雲を呼んで雷を落としたり、手をかざして傷を癒したりしない。
完全に死亡した後、所持金の半分を犠牲に蘇生したりしない。
額に龍の紋章が浮き上がったりもしない。
キノコ王国のヒゲオヤジは、幻覚作用のあるキノコを食べて身体が大きくなったり火の玉を投げたりする妄想に浸っているらしいが、それが人間の限界。
実際に火の玉を出して敵を焼き殺している連中は、明らかに人ではないナニカなのだ。
もちろん、これは勇者に限った話でもない。
・戦士
・武闘家
・魔法使い
・僧侶
・賢者
どいつもこいつも凡人からすれば規格外。
超常現象を引き起こし、魔物をなぎ倒す連中がホモサピエンスなわけがない。
ゲームの都合上、『人族』という種族が設定されているだけだ。
爆裂魔法を操る紅魔族と、塵芥のように消し飛ばされる巨大カエル。
いったい、どっちが化け物なんだ?
この光景に違和感を感じないなら、貴方の感覚は完全に麻痺している。
ゲームとラノベに浸かりすぎて、そちらの住人になってしまった証拠だ。
それらは現実の偉人とは違う。
君の努力次第で、ハリウッドスターやバーリトードチャンピオンにはなれるかもしれない。
けれど、どんなに頑張っても異世界の伝説に至る可能性はゼロだ。
異種族に憧れること。
決して届かない夢を追いかけること。
これほど報われないことはない。
「スッポンは月になれない」