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元王国軍筆頭

「く、くそ!おい、代わりのゴーレムを!」


 俺がゴーレムをぶち壊したことに慌てふためき、村長が叫ぶ。

 それにしたがってお付きの魔術師が詠唱を始めているが……おっせえな。

 この間にさっさとぶちのめしても良いのだが、流石に直接怪我を負わせたりすると面倒事になりそうだ。

 出してきたゴーレムを派手にぶっ壊してウサ晴らし……じゃなくて、精神的にボコるくらいにしといてやろう。


「ど、どうだ!」


 詠唱が終わると、人間大のゴーレムが六体ほど地面から現れる。

 この数の同時召喚ができるってことは、そこそこ優秀な魔術師のようだ。

 だがろくな前衛もいない状況で無防備に長々詠唱やってる時点で、戦闘に関しちゃ二流だな。


「準備は終わったか?終わったなら早く来い」


「くっ……い、行け!」


 二流魔術師の命令に従い、六体のゴーレムが俺を素早く取り囲む。

 動かし方も悪くはないが、まぁ個体が弱すぎる時点であんまり意味ないな。

 これが百倍くらいいたら多少面倒だったかもしれんが。

 そんなことを考えて棒立ちしていた俺に向かって、ゴーレムたちが一斉に飛びかかってくる。


「あ、危ないっ!」


 家の中にいたルナが悲鳴のような声をあげる。

 いかん、子供の前だということも忘れていたな。

 あまり暴れ回っているところを見せ続けるのも教育上良くない気がするので、さっさと片付けることにしよう。


「よっ……と」


 軽い掛け声と同時に俺は腰を落とし、横薙ぎに手刀を繰り出しながら一回転する。

 その勢いで生じた衝撃波によって、襲いかかってきたゴーレム達は全て粉々になった。

 直接殴るよりは見た目がソフトな気がしたので衝撃波で破壊することにした。

 子供の目を気にしても、もうあんまり変わらん気がするけどな。

 もう既に一体ぶん殴って破壊してるし。


「そんな……、私のゴーレムたちが……」


「こんなもんが数体集まったところで意味ねえよ。せめて百体くらいは揃えてみせろっての」


「そ、そんな数、王国軍の魔法将軍でもない限り不可能だ!」


 魔法将軍?

 ……あー、あいつならできそうだな。

 まぁあいつの場合はゴーレムなんてチマチマした手は使わないだろうけど。

 直接アホみたいな規模の攻撃魔法をぶっ放してくるに決まってる。

 そして自分の言った『王国軍』という言葉から連想したのか、二流魔術師がハッとした表情をする。


「黒髪に黒いローブ、右手の魔法紋、それにこの強さ……ま、まさか!」


「なんだ、知ってるのか!?」


「聞いたことがある……。王国軍所属の特殊部隊に、凄まじい強さを誇る魔術師がいると……」


 あ、バレた。

 まぁこんだけ暴れたら仕方ないか。

 働いてたときにも国内外の色んなとこで仕事してたしな。

 魔術師なら俺の話を聞いたことがあっても不思議じゃない。


「王国軍の特殊部隊!?だ、だがこいつはただの公務員だと……」


「軍人だろうが、雇い主が国である以上は国家公務員だろうが」


 バレた以上は仕方ないので開き直ることにする。

 別に嘘はいってないしな。


「じゃ、じゃあお前があの、王国軍筆頭魔術師……『漆黒の雷光』!」


 うわ、その二つ名広まってんのかよ……。

 恥ずかしいからやめろって広報部には言ったんだが。


「『軍の壊し屋』、『性悪移動砲台』、『キレた時の口調がチンピラ』、『あの矢が刺さんねーやつ』!」


「おい、悪口混ざってんぞ。最後のなんかめっちゃ雑だし」


 もはや二つ名というかコンビニ店員が客につけるあだ名に近い。

 『あの毎回コーヒーとカツサンド買うやつ』みたいな。


 しかし俺が元軍人だということを知ってなお、村長はまだ諦めたくないようだ。

 二流魔術師に向かって怒鳴り散らしている。


「軍にいたからなんだってんだ!お前は貴族の魔法学院をトップで卒業したんじゃなかったのか!」


「む、無理ですって!あの『漆黒の雷光』ですよ!?」


「そんなやつは知らん!いいからなんとかしろ!」


 すげえこと言ってるな。

 部下の持ってくる情報に耳を貸さずに「なんとかしろ」の一点張り。

 お手本のような無能上司だ。

 とうとう仲間内で口論始めやがった……早く終わらせたいんだが。


「もういい!給料の払いは良いから我慢してやっていたが……もうたくさんだ!こんなところは辞めさせてもらう!」


「お、おい!待て!」


 あーあー、魔術師行っちゃったよ。

 金払ってれば何言っても良いと思ってるからこうなるんだ。

 去って行く魔術師の後ろ姿をしばらく眺めていたが、俺の方を向きなおって言う。


「く、くそ!このままで済むと思うなよ!私は村長だぞ!」


「そう言われてもなあ。別に村長ってそんな偉くも……」


 実際もっと国の上層部にいる人間とやり取りしたこと結構あるし。

 そのへんの連中と比べたら、村長とか一般市民もいいとこだ。


「黙れ!お前なんぞ、この村では暮らせないようにしてやる!そうだ、あのガキどもと同じように、村の連中に口をきかないように言って……」


「……あんだと?」


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