11:組手
「これからは、訓練のレベルを一段階上げて、午前は組手、
午後は魔術の使用に入る。
魔術師以外は、身体能力を上げる魔術だ。
勇者の皇雅は、光の魔術を。神哉は正直分からないから、自力で頼む。
他も使えるとは思うが、専門には勝てないから、身体強化以外は、
学校で教えてもらえ。」
「「はい」」
「ペアの組み合わせは、各自の力量を考えて組め。」
「神哉組むぞ!」
「いいよ、身の程知らずめ。」
「言ったなー」
大体近接戦闘職で組んで、自衛のため、
後衛や、非戦闘職も参加することになった。
先生は組手の訓練に参加せず、女性で近接戦闘職ということで、
鈴奈が残ってしまった。
「神哉君と要君のところに混ぜてもらってもいいかしら。」
「別にいいけどよ。どうやるんだ?」
「神哉君一人と、私たち二人でいいんじゃない?」
「いくらなんでもな、神哉。」
「望むところだね。」
「始め!!」
一斉に訓練が始まった。
やはり前の世界から運動神経が高かった皇雅と健太は、
意外と動きが良かった。その他に突出したものはいなかったが、
近接戦闘職との差は大きく、なんと沙耶は近接戦闘職並みに強かった。
「俺らもそろそろやろーぜ。」
「そうね。」
「こいよ。」
「「なめんな(ないで)。」」
やはり、要もいい線いっているが、鈴奈の方が強かった。
右から拳、左から木刀が迫り、意外といい訓練になっていた。
でもまだ神哉には余裕があった。
「くそっ、なんであたらないんだ!」
「ちょっとショックよね。」
「「ならっ」」
《岩砕拳》 《波砕流・十字紋》
要からは岩をも砕く一撃が、鈴奈からは一瞬で、二撃の剣閃が襲ってきた。
「じゃあ少し見せてやるか。」
《狐手・雪月花》
一瞬で無数の拳の雨が、二人に降り注いだ。
「「ぐふっ!」」
「やりすぎちったか。」
「おい何事だ!!」
「あ、ドルトンさん。少しやりすぎちゃいました。」
「意識を失っているな。
医務室につれていけ!!」
「私に任せて下さい。」
「ひかりできんの?」
「できるよ、シンくん。
《救済の聖光》・・・
こんなとこかな。」
ひかりから、強く、優しく、温かい光が発せられ、
二人の体を包み込んだ。
光が静まると、そこには無傷の状態になっていた。
(これは本当に治癒と呼べるのか?時間を戻したと言えるレベルだぞ。)
「「んっんんっ」」
「二人とも大丈夫か?」
「おいおい、やりすぎだったぜ。」
「死ぬかと思ったわ。」
「ごめんごめん。お前らが予想以上に強くてな。」
「神哉。これからは俺とだ。
要と鈴奈は二人でやれ。」
「はい!」
「それじゃ終了。昼食にしろ。」
「「はい!」」




