安倍晴明時空奇談 ー運命の二人ー
桃花がそう言うと、桃花の背後から一人の男性が現れた。
「失礼する。私がこの屋敷の主人で小野篁と申す者です」
「色々と驚かれた事でしょうが、いきさつについてはこれから
お話しさせて頂くつもりですが、まずは夕の食事としましょう」
篁はそう言って、都和香を気遣った。
夕の食事が始まったが、食事と言っても都和香のいた時代とは
大きく違って、主食のご飯もおこわの様な強飯であり正直な所
お世辞にも美味しいとは言えない物でした。
「さて、都和香殿お口に合いましたかな?貴方が居た時代とは
比べられないほど質素な食事なのかも知れぬな・・・」
「いえ、体に良さそうな物ばかりですし有り難くいただきます」
「あの、小野篁様ってもしかして閻魔様にも仕えた事があると
言われている方ではないですか?」
「ほほう、未来の世では私のもう一つの裏の仕事は知られておる
と言うことですか?」
「そうですね・・・。知っている人は知っていると言う感じです」
「なるほど、そうですか。しかし未来の話しは実に興味深い事だ」
「桃花。すまぬがこれから先は大事な話しがあるから席を外して
二人にしてくれぬか」
「それから明日よりこの都和香殿に、この平安の世の事に加えて
京の都の事も全て教えて差し上げ、立派な姫になる様にしっかりと
一から教育を頼んだぞ」
「はい御主殿様、畏まりました」
桃花はそう言うと、渡殿の方へと消えて行った。
篁と都和香と二人きりになり、篁はゆっくりと語り始めた。