安倍晴明時空奇談 ー運命の二人ー
「御主殿様、お帰りなさいませ」
「御主殿様、お勤めご苦労様でございます」
「ああ、皆変わり無いな?」
「すまぬが誰か乳母を私の部屋へ来るように呼んで来てくれぬか?」
「はい、かしこまりました」
そう言うと、数人の女房達が急いで乳母を呼びに行った。
指示したこの男性こそ屋敷の主人である小野篁であり
昼間の仕事を終えて戻って来たのでした。
すぐに、ふっくらとした中年ぐらいの女性が、篁の部屋へとやって来ると
そのまま部屋の中へと入って行った。
「御主殿様、お呼びでしょうか?」
「おお乳母か。あの者はどうしておる?」
「はい、私の娘の桃花がお世話をさせて頂いております」
「そうか・・・すまぬな」
「私にとって、生涯に一度の大きな役目になる事なのだ・・・」
「世話を掛けるが、よろしく頼むぞ」
そう、少し疲れた様な表情で篁は答えた。
「御主殿様にお気遣い頂くだけでも、もったいない事・・・」
「この乳母、娘と共に頑張らせて頂きます」
「そう言ってくれると私も救われるよ・・・」
「さて、済まぬがこのまま着替えを頼む」
「着替えたらあの者の部屋へ、案内を頼む」
「かしこまりました」
二人の会話が終わる頃、夕日も沈みかけていました。
その後、桃花は母に頼まれ、御主殿と共に都和香のいる部屋へと向かいました。
「都和香様、御主殿様が来られましたのでお通し致しますね」