安倍晴明時空奇談 ー運命の二人ー
都和香は着物の袖の中に、晴明に渡す予定の香袋を忍ばせていて
そっと香袋を握って、何事も無いようにと心で祈った。
ちょうど約束の刻となる頃、約束の場所である朱雀門の近くへと
到着すると、晴明の方が先に来ており都和香の牛車に気が付くと
少し安堵した様な表情を浮かべた。
牛車から降りたつ都和香と共に、篁が一緒に降りて来たのを見て
晴明は少し驚いた様子になったが、そのままためらわずに二人の
方へと歩みを進めた。
「晴明殿、お初にお目にかかります。私は小野篁と申します」
「忠行殿とは仕事で時々お会いしていまして、貴方の事をいつも
自慢の弟子だと聞いております」
「この前は、この都和香殿の事を助けて頂いたようで本日はぜひ
直接お礼をと思い、同乗させてもらいました」
「本当にありがとうございました」
それを聞いていた晴明は、少し含み笑いを浮かべた。
「篁殿、もう本題に入りませんか?私にただお礼を言う為だけに
同乗してきた訳では無いでしょう」
「朝からのこの異様な空気と静けさに、正直なところ都和香殿の
事を心配していましたから、牛車を見かけた時は安心しました」
「篁殿、貴方にはこの異様な空気も静けさも分かる霊力を持って
いますよね。それでも日を変えずに来られた」
「都和香殿の護衛と、後は何かまだあるのでは無いですか?」
「さすがは晴明殿、侮れませんな。普段は誰にも気付かれない筈
の私の霊力を見抜かれるとは、思いませんでした」
「本当は私も日を改めたかったのですが、都和香殿がどうしても
貴方に会いたい様でしたし、何かあっても私と貴方となら危険を
回避出来ると思ったので、予定通りにしたのです」
「晴明殿、貴方は元は神であり将来にこの京を救う者で、再びに
神に戻られる方なのです」
「そして貴方を救い、力になって助けてくださる方が、都和香殿
なのです。記憶は無いでしょうが、お二人共前世で神界に住んで
おられたが、ある事件をきっかけに時空へと飛ばされる事になり
それぞれ違う時代へと転生されたのです」
「篁殿、貴方も私の事は色々耳にしておられる筈で私が神になる
人間で京を救うなどと、買いかぶりすぎです」
「私は人を信用しないし、人間不信の塊なのに、人を救うなんて
ましてや神になるなどと信じられる訳がない」
「では晴明殿、何故都和香殿の事を助け、今また怪異を終結する
為に、危険な十二神将召喚を行なおうとしているのですか?」
「そっそれは、陰陽師として仕事だからです。都和香殿の一件も
偶然仕事中の最中だったからです」
「素直じゃないですね。貴方の魂は人を信じたいし、助けたいと
思っていますよ」
「それに都和香殿と出会った時、凄く惹かれた筈です。都和香殿
自身は貴方に惹かれたようです。分かりやすく顔と態度に現れて
いましたからね」
それを聞いて晴明は都和香が同じように惹かれてくれている事が
分かり、嬉しくて仕方がなかった。




