~病んだ救世の英雄たちの岐路と逃避と悔恨①~
とうとうこの時が来たでござる・・・
いつか来るのではないかと危惧していた事態。
陰陽師の木島氏と魔獣召喚士の春奈殿・・・
脱落・・・
あまりのままならなさに。
どうしていいか判らなさに。
自分たちの不甲斐なさに。
自分を責めた結果の逃避・・・
あの二人は優し過ぎたのでござる。
拙者も正直舐めていたでござるよ、異世界転移。
侍の持つ殲滅チート、使ったことも無いのに完璧に刀を操れる刀スキル、二刀流アビリティ、魔法まで使えるでござる。
最初は思ったでござる。有力者に取り入って黒色火薬を開発、農政改革で食料増産、生活水準引き上げて富国強兵、美少女助けまくって金と権力とチートでハーレムワッショイ・・・
どこの世界になんの信用も無い、素性の知れない人間の言う事を聞く有力者が居るのでござる?
国の、領地の、民の根幹に係わる重要な事業を、得たいの知れない若造に任せる人間がどこの世界に?
普通に考えたら、たかが一度や二度の軽い武勲や恩を受けただけでそこまで人を信用する訳がないでござるよね。為政者なら尚の事でござる。
もしホイホイ信用するような為政者なら早晩その国は亡ぶでござる。間違いなく・・・
それが通用するのは空想の世界のみ。
まあ、拙者が元の世界に居た頃の流行はさらに進んで現実世界にダンジョンが・・・だったでござるか。主人公は現代装備に魔法に剣にと大活躍。
裏山でござる。
今頃のニーズはきっと、宇宙の隕石か小惑星の中にでもダンジョンが出来て、やたらと独り言の多いニートでコミュ障の主人公は、いつの間にか艦隊戦でモンスター攻撃の指揮を執り、女神に祝福されピーキーなカスタムロボットに乗って魔法の剣を装備し、スペースゴブリンと戦いつつ宇宙グルメとスローライフを自由気ままに満喫しているのでござろうか。
当然、艦橋か中央指揮所にはケモミミ半裸美少女か爆乳ビキニのエルフ奴隷少女しか居ないんでござろうな。
その世界は宇宙コロニーの代わりに虚空に浮かぶダンジョンがステーション代わり、クライマックスは『彗星ダンジョンのコアを潰さないと地球が危ない!・・・でも知った事かへへーン、ざまぁ!』とか言ってるんでござろうか。
現実逃避の妄想が止まらんでござる・・・
あの二人は本気で考え、行動し、傷つき、挫けた。
二人だけじゃないでござる。皆そうだったでござるよ。
あれから半年、現実を突きつけられて皆挫けた。折れたでござる。
あの二人は今までで比較的ましだった村の修道院で、周りの人間だけ守って暮らすそうでござる。
それも選択肢の一つでござろうな。そうやってあの二人の優しさを受けていれば、いずれ素直に優しさと勇気と献身が皆の中に育つかもしれないでござる。
守護騎士と聖女殿も、もう別行動をとられるそうでござる。
耳を塞ぎ、目を閉じ、口を開かず二人で旅をするそうでござる。
それもまた一興。
お二人はそのように卑下されるが、それでも何とかしようと情報を集めるのでござろう。大人数で行って警戒されるより、少人数の方が溶け込み易いでござるからな。
残った拙者らは苦い気持ちを押し隠しながらこの苦行を続けるでござる。
一番卑怯な拙者は続けるフリをして思考停止でござる。もう考えるのに疲れたでござる。
精霊符術士の美香殿が不思議な事を言い出したでござる。
この世界を一度壊して作り変える。
強引にでも行動を起こさないと、どんどん手遅れになって不幸が拡大生産される。
だから一度強引にでも・・・
そこまで追い詰められているのでござるか・・・
救う為に殺すのでござるか?大の虫を生かすのに小の虫を殺す?
一度でも壊してしまったら、救う事にはならないでござるのに。
それは結果的に、生き残った人を救うだけであって、世界を救った事にはならないのではござらんか?
あの日、あの時、拙者たちが犯した過ちを繰り返すのでござるか?
あの男性を見殺しにして助かった我々の悔恨をこの世界にも残して、それでも救ったと言えるのでござろうか・・・
キモ侍の妄想に少し興味があります・・・
遊びの部分で字数かなりオーバー・・・
おまけに妄想濃過ぎて後半頭に入って来ない・・・