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用意すべき物は他にも有ります。
勿論食料、水、武器等は当然として、毛皮寝袋、ロープ等。ポンチョは荷物軽減のため持って行きません。
そして今回投入するのは名付けて”どこでも先生”です。
最近自分のネーミングセンスに自信が持てませんが、このアイテムは自慢できます。
簡単に言うと、スライム先生の核とゼリーを別々の容器に入れて持ち歩くだけなんですけどね。急に先生の手を借りたい場面に遭遇しても、お出ましを待たずに作業が進められる優れもの。
例えば、ダイゴロー号のタイヤが破損した時の修理や、急に何かの容器が欲しい時などに対応出来る、恐ろしく汎用性の高いクラフト素材です。
先生は敵意を持って近づくと、酸を飛ばして攻撃してきますが、敵意が無ければ無造作に掴んでもへっちゃらです。
最近はトンボグローブ越しですが、両手で掴んで桶に放り込み、無心のままに手を突っ込んで核だけ取り出すという荒技が作業的に出来るようになり、この方法でストックしてネイも使用する事が出来ます。
もう先生が攻撃してくるというのを忘れてる場合が殆どなんですけどね。完全にアイテムにしか見ていません。先生とか言っときながらやってる事はアレなんですが、便利なんですもん!
さて、入念に準備を済ませて出発です。
ネイや、しばらくお留守にしますがちゃんとご飯たくさん食べるんですよ。怖ーいゴブさんが来るかもしれないから縄梯子は上げっぱなしにしておくんですよ。あんまり根を詰めて機織ばっかりしてたら腰が痛くなるから程々にするんですよ。僕はすぐに帰ってくるから心配しないでね。
という意味を込めてニッコリネイに笑いかけ、無表情に抱き着いて来るネイをハグします。
今回は調査で狩りではないので、デスペアパイセンのお守りも持って行きます。ネイとお揃いでネックレスにして掛けてます。それを胸元から引き出してネイに見せて安心させます。
それでもグズって僕の首に齧りついているネイを、何とか引きはがして笑顔で手を振りました。
ここで気が変わってダンジョンに行かなくなったら、多分二度と行く気が起きないと思います。やる気の有る内に行っときましょう。
何事も勢いは大切ですよね。勿論勢いだけではだめですけど。だからこそ「備えよ常に」です。
さあ、ダンジョンの前にやって参りました。
悠久盆地の斜面の途中、塔のように突き出た岩山が有ります。そこがこのダンジョンの入り口です。
入口は盆地の底に向き、まるで切り立った岩山に開いた亀裂のようです。幅は20m、高さは30m程の洞窟の入り口がドーンと口を開けております。
でかい、正直でかい・・・
こんなでかかったっけ。
入口両脇には門柱、あるいは門神のように赤茶けた自然の石柱が聳え、地面はなだらかに手前に傾斜しています。所々に岩壁から剥がれたらしき岩が点在し、外側には牧草のような丈の短い草が生えています。
特に道、若しくは獣道などは見受けられず、頻繁に生き物が出入りしているようには見えません。
このダンジョンを巨人洞窟と名付けます。
僕はダイゴロー号の松明に火を点け、グリップを握る手に力を籠めます。
こんな珍妙な恰好でダンジョン探索をする人間は、いまだかつて居なかったかもしれません。
それでは張り切って行きましょう!
ストックが無くなったので、明日から21時に一本のみ投稿になります。
すみません!
感想有難うございます!