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男シンタロー、準備は怠りません。
子供の頃憧れていたボーイスカウトの標語を思い出します。
憧れていただけでやっていた訳ではありませんが。
『備えよ常に Be Prepared』
良い言葉です。心、体、技を備えて人の役に立ちなさい!という教えです。
今回具体的に僕が備えるのは明かりです。松明とカンテラですね。松明は明かり兼武器にもなります。
では問題です。一本の松明が30分使えるとします。一日燃やすには何本要るでしょう?
はい、答えは48本です。
・・・・・
もうこの時点でダンジョンなんて無理ですよね!
ヒカリゴケ?何故だか明るい?草原が広がってる?LED完全装備?
ダンジョンてそんなに都合良く出来てるんですか?それに僕が行くのはダンジョンじゃなくてただの洞窟かも知れません。
それを確かめるにもある程度の備えが必要なんです。
ああ、無限収納・・・
今回用意するのはウッドキャンドルです。
キャンプとかでも良く使いますね。作り方は簡単、直径5cm、長さ50cm程の丸太の先端に放射状に切り込みを入れ、石か何かを差し込んで開いたままにします。見た目はぶっとい箒みたいです。
要するに空気の通り道を作って燃えやすくするだけ。
今回はこの形状ですが、切り株や建築端材などにチェーンソウや、ドリルで穴を開けてもいいです。
さらに今回はこれに燃えやすい樹のヤニをたっぷりと滲み込ませています。燃えやすい分燃え尽きやすいですね。
暗い洞窟の中で、中々火が点かない持ちのいい松明か、火が点きやすい持ちの悪い松明、どっちを選びます?僕はすぐ点く方を選びます。本気で深部まで探索する気は無いので、今回は浅い所を見るだけです。それでもそれなりにまとまった数を用意します。
そしてそれを運ぶ手段!
名付けて、『組み立て式ショッピングカート風荷車 ダイゴロー号』です。要するに左右にスライム先生で作ったタイヤを履かせた手押し二輪車です。ボディは枠組みのみでトンボ革を張れば不細工なベビーカーの完成。モンキーボアの鍋を反射板に使った松明立てを付ければ、万が一の時両手を使っても明かりは確保できます。そしてこれに松明を入れて運べる所まで運ぶという寸法です。タイヤは大きく作り、車高を上げれば、ある程度の悪路でも走破できるはず。出来なきゃ諦めてピストン輸送ですね。
カンテラはロウソクを用いた物で、そこそこの明かりを得られますが、材料の関係上あまり数を用意できません。
これらをバスを経由して、何日もかけて洞窟付近に作った仮拠点に運びます。
さあ、準備は整いました。いよいよ明日、アタック開始です。
最近順調に体重も増え、女性らしい体つきになったネイが何か言いたそうにしています。
おそらく、普段と違う行動をしている僕を心配してくれていると思うのですが、言葉が通じません。
普段は余り不自由は感じないのですが、こういう時は流石に不便ですね。
寝る真似を五回繰り返して六日目には帰って来る事を伝えますが、何処まで伝わったでしょうか。
いつもなら綺麗なアッシュグレイの髪を撫でると、猫のように目を細めて気持ちよさそうにするのですが、今日ばかりはずっと纏わりついて離れません。可愛いですね。
思わずチュウしたくなりますが、嫌われたくないのでしません。
大丈夫だよー、と言って寝かしつけました。
明日はダンジョン前の仮拠点でキャンプ。しっかり寝ておきましょう!
ブクマ、評価、有難うございます!
次回、ダーク小話挟みます。