森の花嫁③
シンタロー様は小食で、どちらかと言うとお肉よりお魚が好きみたい。野菜も一杯食べるけど、森の中は野菜が少ない。冬になったらもっと少なくなるから何とかしないとって思ってたら、日陰蕪の野生種の親芽が生えてたから、おうちのお庭に移植して栽培だ!
きちんと耕した畑に育てば大きく柔らかくなるし、葉も食べれる。これでシンタロー様に冬でもおいしい野菜が食べさせてあげられる。よかった。
最近少し不思議に思う事がある。
去年までの花嫁はどこに行ったんだろう。
シンタロー様が食べたんじゃないのは何となく判る。だってシンタロー様はそんな事しない魔人さんだから。
そこで思いついた。多分間違いないと思う。
シンタロー様は若いから多分、新人の魔人さんだ。だからおうちも新しいし、森の事を何にも知らない。慣れて無くて鈍くさいから私を迎えに来るのも遅れた。
去年までの花嫁は去年までの魔人さんの花嫁になった。だからここには居ない。
去年までの魔人さんと、去年までの花嫁がどこでどうなったかは判らない。多分だけど私程運が良かったとは思えない。
去年までの魔人さんは、去年までの花嫁が気に入らなかったんだ。だから食べちゃって毎年新しい花嫁を要求してた。
うん、この推理に破綻は無い。
でも私は新人魔人シンタロー様と上手くやれてると思う。私は不細工だし陰気で無口だけど、こういうのって相性だと思うの。
一日中シンタロー様と一緒に居る時も、ほとんど言葉を交わさないけど、ちっとも気まずくないし、凄く自然て気がする。まあ、言葉が通じないんだけど。
だから来年の花嫁はもういらないんじゃないかな?いらないよね?うん、絶対いらない。
シンタロー様も欲しいって言わないと思う。思うし、そう思わせなきゃ、新たな犠牲者は出したくない!
そう言えば、この前私の村の場所を聞かれて、帰りたいか尋ねられた。
あの時も今も帰りたい訳じゃないけど、花嫁はもういらないって伝えないといけないよね。
まあ、まだ一年あるし近くなったら考えよ。
ある日、シンタロー様がとんでもない物を持ってきた。清流角虹鱒が飲み込んだ火属性の魔晶石!
ダンジョンでしか産出しない魔法の石!
びっくりしすぎて思わず声をあげちゃった。
そしたらシンタロー様は血相変えて飛び出して来てくれた。嬉しいけど申し訳ない。
でもこの残念な魔人さんはこれがどんなに凄い物か知らないみたい・・・