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予想通り遠征は大変です。そう頻繁にするものではありませんね・・・
ここのところ安全な拠点で暮らしていたせいか、夜の森が怖すぎて眠れません。
毛皮寝袋にはロープが結んであり、高い所に張り出した樹の枝に結び付け、ハンモックのようにして眠れるようにしてあるのですが、夜行性の何かは僕が眠るのを許してはくれません。
これは後になって知ったのですが、実は僕はモンスターや野生動物除けのお守りをとっくに入手していたのです。そうと気付かず、宝の持ち腐れをしていました。知ってからは有効に使ってますよ。
はい、デスペアの牙や爪です。勿論角もそうです。僕には判らない匂いや存在感を、モンスターや動物は嗅ぎ分けるのでしょう。それらを身に着けていれば、たいていのモンスターは近寄って来ないのです。もっと早く知りたかった・・・
初日にすっかり荒れ果てたバスで小休止をし、未踏の森に踏み込んだ二日目の事です。
ここら辺に来ると、植生は大きく変わりませんが見かけない植物もかなりあります。樹木の密度が楽園森林より濃く、鬱蒼という言葉が良く似合います。
枝から枝に張り巡らされた藤の木のような蔦に、巨大な枝豆がぶら下がっていたり、灌木の一つには白い苺のような実がびっしり実っていたりします。
巨大枝豆の中身はヤシの実のような豆が入っていて、豆を割ってみるとドングリのような質感の硬い実でした。一部をサンプルで持ち帰り、拠点で可食性テストをしましょう。
枝豆の鞘の中は梱包材のようにびっしりと綿毛が豆を包んでおり、上質な木綿になりそうです。これもサンプルで持ち帰ります。繊維にするには時間が掛かりそうですが・・・
白い苺は物凄く甘い良い香りがしますが、日持ちがしそうにないので帰りに摘んでテストしましょう。
システム手帳に忘れないように記入しておきます。
水場を探しながらの探索ですが、なかなか上手い具合に見つかる訳もなく、こっち方面の探索は困難が予想されます。
普通なら川に沿って下流に行けばいいんでしょうけど、魔獣川は下流でまた大瀑布になってるんです。
迂回ルートは視界には無かったので今回はこっち方面なんですね。いずれまたチャレンジです。
キャンプに良さげな樹を見つけ、本日の探索はここで終了と決めて野営の準備をしようと思った時です。
ざわざわと森が騒めき、獣の吠え声が聞こえてきました。
それぐらいの事はよくあるのですが、今回は近い・・・
あまり変なのに近くで狩りをされても怖いので、追っ払うか、逃げてキャンプ地の場所を変えるかの判断をしなければなりません。
普段なら間違いなく僕の方が退散するのですが、前日の寝不足も手伝い、サンプルを取り過ぎたせいもあり、ザックが重く今から移動は正直しんどいと考えてしまったのです。
重いザックを担ぎ直し、トンボの弓を構えて騒ぎの方へ風下に迂回しながら進みます。
こういう時槍は物凄く邪魔だなぁ、やっぱり無限収納は究極のチートだなと考えていた時、僕は発見しました。
人です・・・