~病んだ英雄たちが往く腐った世界の迷える住人③~
勇気の輝き?
いや、聞いたことはないな。
俺もしがない冒険者さ、滅びた村の生き残りの成れの果て・・・と言えば大方想像はつくだろ?
ああ、ここじゃ避難民を受け入れてくれる奇特な村は無いからな。故郷が無くなった者たちが辿る道は五つある。
腕に覚えのあるやつは何でも屋の冒険者。
普通の奴は盗賊。
女たちは娼婦。
力の無い子供は奴隷。
老人はちょっと早めに死体になる。
まあ、早いか遅いかの違いで皆ロクな死に方はせんよ。
俺も村の人間に代わって魔獣を討伐してその日の糧を得ている。
上手く立ち回って仲間を増やせば村の一つも乗っ取って贅沢が出来るが、まあ、難しいだろうな。一角獣魔人でも狩れる腕が有れば自分の村が持てるかもしれないがな。つまりは夢物語って事さ。
まあ皆そんな遠大な目標より今日の飯しか考えてない。
ああそうさ、同郷の者でも余程のことが無い限り信用は出来んよ。お人好しから先に死んでいくからな。
特に一仕事終えた後、村に帰る時が危ない。分け前を増やすために背中を狙われるなんてのは日常茶飯事だし、下手に怪我でもして弱味を見せたら依頼主に殺される。
つまり俺達は、背中にナイフを隠した依頼主から依頼を受け、油断のならない仲間と手を組み、手強い魔獣を討伐するのさ。
命なんて幾つあっても足りないね。
村同士の諍いでの傭兵なんてのは美味しい仕事だよ。リスクは有るが、上手くゆけば略奪し放題だからな。やり過ぎると、妬まれて寝首を掻かれるが。
何事も程々と言う事だ。
魔王?何だそれは。
それも聞いた事は無い。
むしろそんな強大な力を持った存在が居るなら大歓迎だ。この世界を統治してくれるのならそうして貰いたいよ。あまりにも無秩序で無法な世界だからな。
廃れた女神の話は聞いた事は有るが・・・
神秘の森の奥深くに女神が住まう巨大樹の森が有ると言う。
人々の信仰が薄れ、女神は力を失い、森は魔獣の森と名を変えた。
そこに住まう魔獣たちは度々人里に下りて来ては人々の命を脅かす。
そこで人々は毎年持ち回りで生贄を差し出し、魔獣の荒ぶる気を鎮めようとした。
生贄の効果?
そんなもんある訳ないじゃないか。魔獣の森にどれだけの数が居ると思ってるんだ。
たった一人の生贄で足りるもんか。村一つでもまだ足りないよ。
自己満足も有ると思うが、村同士の牽制だろうな。外から見れば良く分かる。
互いの力の削ぎ合いだよ。
生贄が問題じゃない。生贄を森まで連れて行く連中、つまり護衛を減らそうとしてるのさ。
森の奥深くまで連れて行くのに何故護衛だけ安全だと思うんだ?
連中は気付いてないよ。古いしきたりを守ってるだけだ。
もっとも、最近は俺達冒険者を雇う知恵を付けたみたいだがね。
ああ、この前も一人送ってったさ・・・
上手くやったよ。馬の背に乗せて、そのまま森の奥に向かって馬の尻を蹴とばせば任務完了ってな。
三日ほど身を隠し、他の護衛を始末すればボーナスが貰えるいい仕事だった。
大人しそうな娘だったな。
こう、なんていうか・・・悟りきった顔をしてた。
村の子供を思い出したよ・・・俺は村長の息子だった。
あの時俺は・・・・いや、何でもない。
しょうがないじゃないか、俺に何が出来る?
俺に出来る事は娘に自害用のナイフを渡す事ぐらいさ・・・
救いの無い話を三話連続で投下し、自分で凹んでます・・・
次からシンタローターン、近日急展開(予定)です!
ブクマ、評価有難うございます!