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これが駄目なら後はもうデスペアに抱き着いて崖から飛び降りるつもりでした。
いくら命綱があっても途中で噛みつかれたり、引っ掻かれたりしたら、僕なんて三秒で五回は死ねます。
視線の先にはグレイブに胸を貫かれ、横たわるデスペア・・・・・
かなり太い柄にして正解でした。僕の手で握れるくらいの柄なら折れて、あの突進を止める事は出来なかったでしょう。
それが証拠に肉厚のゴブの剣が根元から折れています。
デスペア自身の突進力を逆手に取った最後の罠でした。
それにしても・・・
つ、疲れた・・・・・・
異世界しんど過ぎです!
無残な姿で事切れているデスペアに、早くも先生たちが群がっています。
色々神経が飽和状態なのか、大した感慨も湧いてきません。ただ現実を受け止めるだけです。
あーあ、ゴブの剣折れちゃった・・・
根元を磨り上げて短剣にしましょうか・・・
デスペアみたいなのがいっぱいウロウロしてなければいいんですが、この森はホントに油断が出来ません。
武器の補充、拡充は急務ですね、また拠点制作が遠のく・・・
仰向けに寝転びながら僕はぼんやり考えます。
正直頭真っ白にして眠りたいですが、胸に去来するのは山のような心配事です。
武器の補充ってどうすればいいの?
この辺りには武器屋はおろか、鍛冶屋も有りません。コンビニででヒノキの棒とか売ってないですかね?いらないけど・・・コンビニも無いけど・・・
だいたい僕ってどこからゴブの剣手に入れましたっけ・・・
あ、ゴブの剣はゴブさんたちが持ってましたよね。
この時僕はごく自然にこう考えました。
よし、ゴブさん狩りに行こ!
後で思い出すとゾッとしました。
これは成長と言うのでしょうか、それとも麻痺?
確かに今ではゴブさんたちを大して脅威には思っていません。こんな僕でも、今ならやりようによってはゴブさん相手に無双できると思います。
命のやり取りに神経が摩耗しているのでしょう。いずれにせよこの残酷な世界で生き延びるには必要なプロセスなのかも知れません。
デスペアの白骨から20cmくらいの螺旋状の黒い角、有名な恐竜映画に出てくるラプトルの爪とそっくりな爪、ナイフみたいに鋭い犬歯を頂きます。
折れた剣も回収して、あ、弓と矢、パーカーも回収しなきゃ。
火責めの消火も確認しないといけないし、使えるロープや丸太も回収しないと・・・・
食料もここんとこ消費するだけで採集してないし、お肉が無事ならそれの下処理も・・・
生け簀を直して、スモーカーを作って・・・・
止まっていた拠点造りに、雨具の作成・・・・
あ、ロウソク作りかけだった・・・
あああああああああああああああっもう!
脅威編おつかれした!
次回ダーク小話入ります。