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もう僕に対する憎しみしかないようです。
良く考えてみれば森の中でメンチ切られただけで、何の実害も被ってないにも関わらず、ひどい仕打ちを僕はしているように見えます・・・
被害妄想の頭のおかしな隣人が破滅に向かってまっしぐら・・・そんなアメリカ映画があったような無かったような・・・
でも、デスペアは危険すぎます。
これは実際に対峙しないと解らない感覚なのかもしれません。僕の生存本能は全力であいつを倒せと悲鳴を上げているのです。
これだけやっても追い詰められているのはまだ、僕の方なのです・・・
OBOAAAAAAA!
蜘蛛のように四つん這いで地に伏せたデスペアが、雄叫びを轟かせます。
まだこんな力強い叫びが出来る程体力が残っているのかと戦慄を禁じえません。
すでに僕は次の罠に向かって疾走中です。ここまでダメージを与えても僕の背中には冷たい汗が流れて止まりません。
デスペアはまるで獣のように四つ足で跳ねて迫ってきます。邪魔な木立ちをなぎ倒して迫ってくる様子に悪寒しか感じません。
しかも僕の見間違えでなければ少しづつ、その姿が獣のように変貌していっています。
鼻が伸び、口は裂け、角と牙がせり上がり肉食獣の顔そのものですし、体も四足獣のように変化してきています。
ただ、引き攣れた皮膚のせいか、それとも蓄積されたダメージの影響か分かりませんが、変貌は中途半端で、荒ぶる動きの割には滑らかさが無いように思います。
もう少しでしょう。
ただ次の罠は大掛かり過ぎて、きちんと作動するかどうか不安です。
一番最後に作った罠で、作動テストをしていません。
一か八かの勝負です!
僕は絶壁の縁に生える大木の陰に追い詰められた風を装いつつ、ロープを腕に巻き付けます。
ギリギリまで引き付け、樹に結んだ二本のロープをまとめて切断。一本は僕の体を引き上げる為、そしてもう一本は・・・
次の瞬間腕が千切れるくらいの勢いで僕の体は樹上に引き上げられました。
錘の丸太が崖にぶつかりながら落ちる音がします。
デスペアは樹上の僕に激しく吠え掛け、樹に登ろうとガリガリ爪を幹に立てたその時、僕は樹上から祈る気持ちで少し離れた茂みに目をやります。
ロープは視線の先の茂み続いており、そこに設置してあるのは縦五列、横五段の密集投槍機、台座に乗せた2m近い槍で弾幕を張る装置。
ロープを長く取り、絶壁に吊るした丸太が充分な落下速度に達したところで作動する様は、空母から発艦する戦闘機のようです。
ミサイルみたいに20本以上の槍を吐き出し、その直後丸太の重みに耐えきれず、カタパルトが派手に壊れる音がします。
何本かは不発に終わったようですし、命中した矢も僅かです。正直正常作動するかどうか不安で、槍が飛んだとしても威力はどんなものかと思っていました。
ですが期待以上の戦果を挙げてくれました!
デスペアの背中に二本、脇腹に一本、太い槍が刺さっています。
逸れた槍が樹の幹にも刺さっているのを見ると、相当な威力を持っているようですね。
それでもデスペアは沈みません・・・
OGU・・・BOAAAaaaaa・・・
僕は枝を伝って地上に降り、最後の決戦に臨みます・・・