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僕は走りながら肩越しに首尾を確認します。
あと三歩・・・二歩・・・良し!グレイト!
デスペアは見事に落ち葉の中に隠したロープにつまずき、前のめりに倒れます。
GOAAAAAAAAAA!
うわー・・・痛そう・・・
デスペアが倒れた場所は一見するとふかふかの落ち葉の絨毯です。僕が初日にパンイチになったあそこですね。
しかし、その落ち葉の中には30cm程の木製スパイクを、20cm間隔で5m四方にマスの目に並べてあるのです。我ながらえげつない針山地獄・・・
デスペアの勢いと自重が仇となり、矢よりも深刻なダメージを負っています。
右手と右頬は折れたスパイクが貫通しています。脇腹にも折れたスパイクが刺さっており、両腿にもダメージが有るようです。
デスペアはスパイクをへし折りつつ立ち上がり、脇腹に刺さったそれを握りしめ、一気に引き抜きました。
あーあ、それやっちゃ駄目なのに・・・
あのスパイクには返しをつけてあるんです。僕って凶悪でしょ?
GUAAAAAAAAA!
うわー・・・腸がはみ出してる・・・
でも、大部分のスパイクは強靭な肉体が防いだようです。恐ろしい耐久力ですね。
むしろ、あの肉体にあれだけのダメージを負わせることが出来たのは奇跡的なのかも知れません。
そしてホントに恐ろしいのはこれだけのダメージを負いながら、デスペアは尚力強い足取りで僕を追って来るという事です。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
走る。走る。走る。振り返って走る。
緩やかな斜面を下って藪を回り込みます。
そしてパーカーを脱ぎ捨て、弓と矢筒も散らかして放り出し、木陰に隠れます。
デスペアが藪を回って追いかけて来ました。
僕を見失い、オレンジの派手なパーカーを見つけて近寄り・・・
はい、ここでドーン!
僕はナイフを抜き、ロープを切断。
BOGUA!
頭上注意です。
筏状の台に重たい石を何個も乗っけた吊天井です。勿論筏の下にはスパイク付いてます。
一気に重い物をぶら下げるのは不可能なので、一旦筏だけ持ち上げ、その上に石を限界まで積み上げた努力の結晶です。
まだ立ちますか!どんだけですか!血まみれじゃないですか、右眼も潰れてます。早く楽になりましょ?
また走ります。デスペアもかなり大変そうですが付いてきます。もう僕が歩くスピードと変わりません。
いかんいかん、もっと逆上させないと!
近場に隠していた投げ槍を投げて挑発を繰り返します。丸太でぶん殴ったりもしますが、ヒット&アウェイを厳守です。
GORUAAAAAA!
あ、やり過ぎたかも・・・
デスペアの動きが激しく荒々しくなってきました。
そろそろ暖まったかな?
さあ、次の地獄に案内しましょう。