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幸いな事にお昼過ぎには雨が上がりました。
不思議な事にすぐそこの滝の水量は変わりません。よく見てみると、この滝は崖のてっぺんからでは無くて、途中の岩穴から出ています。地下の伏流水の湧水口なんですね、時間差で地面に染みた水が噴き出るのかも知れません。となると水道の取水口は可動式の方がいいかな?
ま、今後の経過を見て考えましょう。
さあ、川の様子を見に行きましょう。
多分お魚用の生け簀はアウトでしょうね、少なくとも罠は流されているでしょう。
お肉は岩や砂で埋めてあるので多分大丈夫だと思うのですが・・・
完全には晴れず、陰鬱な空の下、川は予想以上に水量を増しています。
罠生け簀は絶望的ですね。冷蔵庫代わりの生け簀は大きな岩の下流側に作ってあるので、水量の割には流れは穏やかですが、川との境目は完全に沈んでます。流されていないにしろ、引き上げるのは大変そうですね・・・
川の流れは中程に行くほど早いです。ちょっと近づくのは怖いですね。こういった川の水量は息を飲む間に増えて行く事が有ります。雨が止んでも上流のちょっとした変化で鉄砲水が起こります。川原でキャンプは晴れていても絶対にしてはいけません。
そう考えながら川を見ていた時、ふと粘りつくような視線を感じました。
視線を上げると、濁った川の対岸に、そいつがひっそりと立って僕を見つめています。
3mになんなんとする偉貌のシルエット、濡れそぼった蓬髪は夜の水草のように揺らめいて見えます。
肩から羽織るトーガのような毛皮は薄汚れ、そこから出ている褐色の腕、足は禍々しいまでの筋肉が漲り、まるで鎧のようです。
手には冗談のように巨大な棍棒、鋭い爪。
額からは天を呪い突き刺すように生えた凶悪な黒く長い角・・・
捕らえた獲物を無慈悲に引き裂くその禍々しい牙・・・
そして僕を見つめるその血の色をした捕食者の眼・・・
・・・完全にロックオンされました・・・
ただ見られているだけなのに金縛りにでもあったかのように体が動きません・・・
轟々と流れる川音も聞こえないくらい僕はあいつの眼光に飲まれ、足元からゾワリと這い上がる悪寒に震えます。
逃げられない・・・あれからはどうやっても逃げられない。確信めいた予感がします。
この川の流れが落ち着き、あいつが渡河出来るようになった時が僕の最後でしょう。
崖の上も下手したら安全とは言えないかも知れません。仮にあいつが登って来れなくても、すぐに食料が尽きるでしょう。
あいつはそれを待つだけの知性を持っています。眼がそう言っています。
時間が有りません。
僕の残り時間。
あと何日あるのでしょうか・・・
そのうちダンジョンアタックもあるかも・・・
評価ありがとうございます。よろしければ皆さまブクマお願いします・・・