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恐ろしい光景をました。
翌日、まとめた荷物は一度に運ぶのは無理なので、何回かに分けて運ぶ事にしまして、第一陣の荷物を担いでゴブ装備に身を固め、川べりのキャンプに戻っていた時です。
肩にメッセンジャーバッグをかけ、左手に池屋さんのバッグ、右手にゴブの杖、背中にゴブ矢の弓一号というほぼ夜逃げスタイルで、えっちらおっちらと滝を迂回するルートを辿ります。
なるべく音を立てずに進んでいますと、左前方より激しい闘争音とゴブさんの雄たけびが聞こえます。
見つかったのかとビビりまくり、身を固くして姿勢を低くしましたが、どうやら僕以外との戦闘にいそしんでおられるご様子。
ここは覗くべきか、君子危うきに近寄らずで行くべきか・・・
結局覗く事にしました。
抱えていた荷物をその場に隠し、音のする方へ静かに移動します。
ゴブさんが何と戦っているかが一番気になります。だって、脅威となる情報は早めに仕入れておくのが良いと思いますし。
そういう事で樹の陰からこっそりと見てみますと、そこは、最大直径50m程のすり鉢状の窪地になっており、所々岩が地面から顔を出しています。何となく古代のコロッセオみたいに見えますが、実際今まさに壮絶な戦闘が元気に行われております。
なんと、戦っているのはゴブチーム5人と、巨大トンボ3匹です。
トンボは頭から尻尾の先まで2mくらい、透明に輝く翅も差し渡し同じくらいあるでしょうか、あまりに現実感の無い光景です。しかも動きが速い、まるで地上攻撃する戦闘機です。
見た事無いけど。
地面にはすでに撃墜されたと思わしき巨大トンボの死骸が一つと、志半ばで倒れたであろうゴブさんが転がっております。
見た限りでは巨大トンボが圧倒的優勢です。
一つには機動力、いくら巨大でもゴブ弓ではあれだけ早く三次元機動する巨大トンボを射ち落とす事が出来ません。
もう一つはチームワーク、ゴブさんの戦い方はまとまりが無く、てんでバラバラに攻撃しております。対して巨大トンボは明らかに囮と攻撃の役割が分担されており、統率がとれています。
よくもまあ、あれで巨大トンボの一匹でも撃墜出来たものだと思うぐらいの力の差です。
ただし、攻撃手段と攻撃力ではゴブさんの方が優れているので、その辺でかろうじて拮抗しているのでしょう。巨大トンボはどう見ても噛みつくぐらいしか攻撃手段が無さそうですし。
あ、ゴブさん捕まった!
背中から急降下してきた巨大トンボが、その六本の足で抱きすくめるようにゴブさんを捕まえ、大きな口を開けてゴブさんの首に噛みつきます。
ギッチョン、ともバッツンともつかない湿った音と共にゴブさんの首が落ちます・・・
ついでにへなへなと腰の抜けた僕も樹の根にずり落ちます・・・