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とりあえず今日は陽が落ちて暗くなったら、小さく焚火をしてお魚を焼き締めましょう。腐っちゃったら申し訳ないですし。
乗り上げたバスのフロントと大木の間の岩の上に、ちょうど周りから死角になる窪みが有ります。
コソコソと薪を集めていざファイアー!
何と言う事でしょう!火が、火が点きましたよ!焚火です!この感動を解って貰えますでしょうか?
暖かいです。この世界でも5月なのかどうかは解りませんが、夜はそれなりに気温が下がります。目立たないように小さな小さな炎ですが、身に染みる暖かさです。
さあ、感慨にふけってばかりもいられません。お魚を焼きましょう。
大きいまま焼くと時間がかかるので、一口サイズに切ってから木の枝に刺し、遠火で焼きます。
むむむ、思ったより時間が掛かります。近づけすぎると焦げますし、遠すぎると焼けません。難しいです。
しかもずっと見てないといけないし、たまにひっくり返さないといけません。この待機時間がもったいないですね。
そうだ、せっかく火が有るので改良型の弓を作りましょう。
ゴブの弓一号の反省点を思い出します。
まず、生木なので強度が有りません。
1mのサイズだと、弓がしなり過ぎて張力の負担が弓の中央にかかり、破損の危険が有ります。
そしてそれらを心配して使っていると、肝心の攻撃力を出せません。
もっと言うと、その攻撃力のポテンシャルも有りません。
それらの事情で、漁具としては最低ラインで使用できても、武器としての性能は満たしていません。
と言う訳でこれらの問題点を克服した弓を作りたいと思います。
材料は、どこのご家庭にもあるこの異世界の木槍です。
これの丁度良い太さの部分を1.5m程に切ります。真ん中のハンドル部分を30cm程残し、上下のリムの部分を削り出します。つまり中央の握る部分を太くして作用点にかかる力をハンドルの上下二点に分散するのです。
一号より全長を長くしたのは、浅いしなりでも必要な張力を発生させ、フレームを保護するためです。さらにリム部分(上下のしなる部分)の強度を上げることにより強力な張力を出させます。このため、一号より太い部分を使っています。
上下のリム部分を先細りになるように削り終え、綺麗に成型していきます。時折炎にかざしてささくれを焼き、岩に擦り付け滑らかにしていきます。
手にささくれが刺さりまくってメチャメチャ痛いですが我慢です。
リムの先端にくびれを作り、工具セットから持ってきたプライヤーで前方に反りを作ります。火でゆっくり炙って乾かしながら上下のリムを全体に反らせ、特に先端はスキー板をイメージでより強く反らせます。
リムが出来たらハンドルの成型です。
上下の重心を取ったら中央を決め、持ちやすいようにハンドルを手に馴染む形に成型します。この時、ハンドルの左側面の矢をあてがう中央部分に印の意味も込めてドリルで少し穴を開けておきます。後でここに木製の目釘を差し込めば、矢をつがえた時の台になります。
さらに、矢を放った時に余計な摩擦でエネルギーが減殺されないように、またその摩擦によって矢の軌道が逸れないように角度をつけて溝を彫ります。手前を深く、前方を浅くです。
完成!
あ、この張力に耐える弦が有りません・・・
ゴブ矢もサイズが合いません・・・
しかもお魚焦げてる・・・