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僕は今、絶体絶命の時を迎えております。
百円ライターを手に取り、やり場のない探求心の持って行き所に戸惑っていた丁度その時、彼らが現れたのです。
そう、ゴブさんの登場です。
数は六人程でしょうか。最初に見た時よりずいぶん減っています。
こちらに気付いているという様子ではないですが、皆さん手に手に何かしらの武器を持っていて、相変わらず剣呑極まりないです。
僕は慌てて床に伏せましたが、もう怖くて腰が抜けそうです。涙目です。あ、おしっこちびりそうです。そうだ、さっき見つけた空ペットボトルに・・・
そ、そこまででは無いです。我慢します。僕はやればできる子ですから!
幸いにもドアは閉めてありますが、油圧を切っている今は手で押せば簡単に開きます。
僕は笑う膝を励まして斜めにかしいだ床を這い、ドアに向かって匍匐前進です。
音を立てないように慎重に進み、何とか気付かれる前にゴブの杖でつっかい棒をしてドアを固定するのに成功しました。もっとも、バスは前部を大岩に乗り上げており、ステップの位置はゴブさんの頭の上。入口を認識する知能が有り、ピンポイントでドアの中央を押さなければ侵入は難しいでしょう。
ここはじっと我慢して嵐が過ぎ去るのを待つのみです。
バスの周囲も窓の位置は当然高く、こちらが不用意に覗きださない限り発見されることは無いと思います。・・・思いたいです。
しばらくバスのボディーを何かで叩くカンカンという音が響いていましたが、興味を失ったのか、鳴き声?話し声?が遠ざかって行きました。
それでも僕はまだ安心できず、三十分くらいは蹲っていたでしょうか、漸く勇気を振り絞って中腰になり、窓から外の様子を探ります。反対側も。後ろも。
前方は岩と大木ですし、フロントグラスは真っ白で見えません。この状態でよくぞもってくれています。
ふう、ビビらせやがって・・・
あえてワイルドに額の汗を拭い自分を励まし、その場に胡坐をかいて座り込みます。椅子があるのに座らないのは窓の外から見えるからですね。
どうやらここは懸念通り、ゴブさんゆかりの地のようです。いわばゴブ領。
いくらここにバスが有ろうと最早拠点の候補にはなりえません。早急に今朝のキャンプ地に戻り、仮ベースキャンプを設置し、サバイバルの拠点造りをしなければなりません。
今は午後4時。最短でも片道三時間かかるので帰還は不可能。
あれ?昨日と場所はあべこべですけど同じこと考えてる。ま、それは置いといて、急いで有用な物を見つけなければ・・・