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だーれも居ませんね!
解ってましたとも、こういう展開もあり得るなって。
でも、ちょっとだけ膝が震えます。何でだろ、肩がすごく落ちて体が前のめりに、視線が下がっていきます。
気が付いたらバスのステップに膝と手をついて、自分でも分かるくらい肩が震えてます。
良かった事が有ります。バスの乗客の皆さんの荷物が無い事です。ゴブさんたちに襲われたのならそんな物持って逃げる暇もない筈ですから、きっと自分たちの意志で脱出したのに違いありません。ドライバーさんも回復したかどうか分かりませんが置いてけぼりになってません。皆さんいい人です。
不思議なのは周りに足跡が無い事です。ゴブさんと僕の足跡は残ってるのに、あれだけの大人数の足跡が残ってないなんて・・・
あちらは若くて健康そうな男性が何人もいます。本気になったら体格から言ってもゴブさんくらい一蹴してのけるでしょう。とにかく襲われてなくて良かった。
でもせっかく僕がお魚を獲ったのに!こんな美味しそうなお魚が食べられないなんて残念でした!これは僕がぜーんぶ食べちゃいますぅ!!
皆お腹空かせてないかな?
かく言う僕も空腹が限界です。僕のバッグを開けるとおにぎりが残ってました。大好きなジャスミンティーの600mlボトルも未開封で健在です。
こんな非常時に物資を漁らず残しておいてくれるなんて皆本当にいい人ばかりですね!ひょっとしたら残ってないかも知れないと思っていた自分が恥ずかしいです。
鮭と昆布と梅おかかのおにぎりを意識してゆっくり咀嚼します。噛んで噛んで噛みまくってそれでもまた噛んで食べます。今は胃が弱っているはずですからね、急いで食べたら胃がびっくりしちゃいます。一個は残しておこうかとも思ったのですが、賞味期限も有りますし、食べられるうちに食べておく方が良いでしょう。ああ、カレーも食べたい。あの時僕は何でカレーパンを選ばなかったのでしょう!あの時カレーパンを選んでいればささやかな一体感を得られたのに・・・あ、どっちにしろ一緒には食べられませんでしたね。
さあ、少しの食休みを挟んでこれからの事を考えましょう。
今は午後3時過ぎ、キャンプ出発から5時間が経過しています。途中散々迷ったことを考えると、正しい道のりなら3時間くらいで着くはずです。そこで悩みます。これからのベースキャンプです。
今のところ候補地は二つ。
バスの中は安全とは言えませんけど閉鎖空間と言うのは心理的に物凄く落ち着きます。暖かいし、雨風がしのげるってだけで天国です。物資も豊富ですし、なにより元の世界とのつながりが感じられて離れがたいです。反面この場所は、水場が遠くゴブさんの縄張り、あるいは狩場の可能性が有り、もしまた囲まれたら完全に詰みです。
翻って今朝のキャンプ地は水場が近く食料となる魚も居ますし、一晩だけの偶然かも知れませんが、ゴブさんその他の怖いのからの襲撃も有りませんでした。デメリットはちゃんとした寝床も無いので体力の回復が難しく、心理的にも休まらない事でしょう。
今まで余り選択肢の無い人生を送って来たので、どっちにしようか悩めるなんて贅沢ですね!
お久しぶりです。
他の方の投稿を読んでたら皆さんの小説が面白くて嵌ってました。
アンチチート、アンチ俺TUEEE!、アンチ奴隷、アンチハーレム、というスタンスで始めたこのお話でしたが、やっぱり物語というのは現実には起こらない事があるから面白いのですね。
改めて物語、なろうの面白さに気付けました。
これからもチマチマ書いて行こうと思いますのでよろしくお願いします。