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回廊を補修している使役人形に動きはありません。上空での戦闘を気にした様子もありません。
僕が居る見張塔(仮称)の出口の外は、割と広めの半円形のテラス型になっていて、中央に花壇らしき井形の囲いがあり、その左右に道が伸びています。
使役人形が居るのはその花壇の中です。崩れかけている花壇の中央の前衛的なオブジェ部分を、謎の素材を白い粘土状に成型して補修しているようですね。
こちらに背を向けていますが、安心は出来ません。どんな感覚器官で世界を認識しているのか判らないですもんね。
今や上空の戦闘は、最初の会敵場所から移動し、僕がこれから向かおうとしている東側の、まだ街の原型を留めている地区に移っています。
これは好都合なのか、それとも戦闘に巻き込まれる可能性が有るのか・・・
鳥人たちが優勢なら地上の敵、即ち触手羅刹が駆逐されていると言う事です。これは好都合。安全且つ、もしかしたら斥力の魔晶石や魔石等が労せず手に入る事もあるかもしれません。
撃ち漏らし、亦は攻撃だけしておいてさっさと撤退してしまった場合。あるいは劣勢で敗退した場合、あの場には殺気立った触手羅刹が残されている事になります。
頑張れ!鳥人!!
見張塔の出口の陰から手に汗握り、声なき応援をしつつ戦闘を見つめ、ふと視線を下ろすと目が合いました。
合ってしまいました。
いつの間にかこっちを向いている使役人形と・・・
でも
シカトされました・・・
何で?
いや、慣れてるっちゃ慣れてるんですけどそういう態度・・・
僕、この街の巨人じゃないですよ!侵入者ですよ!いいんですか?そういう態度で!職務怠慢じゃないんですか?怒られませんか後で!?
等と言いたいのを堪え、いつでも逃げ出せる体勢を取りながらそうっとテラスの広場に出ます。
使役人形はやはり無反応。
抜き足差し足で先程触手羅刹を追い払った圏内に入っても・・・無反応。
隣に立っても無反応・・・
何ならその背中とかをペタペタ触っても無反応・・・
何故に?
考え事をして、思わず無防備になったその時。
今まで無反応だった使役人形が急激に動き出し、僕を圧殺するように両手を広げて僕に覆い被さりました!
流石に油断しすぎました!安全かどうかも判らないのに調子に乗って近寄り過ぎました!ヤバイ!!
しかし、使役人形はそれこそ僕を庇うようにお腹の下に僕を匿い、動きを止めたのです。
続けて響いた鈍い打撃音・・・
何が起こったんでしょうか・・・
諸事情により、毎日更新が難しくなりました。
ちょっと仕事が忙しくなりまして・・・