164
大体の写生を終え、ソロリソロリとバルコニー内に戻り、階下に降りる通路に向います。
この建物の特性なのか、この都市全体がそうなのか判りませんが、階段というものが有りません。階の移動は全部緩いスロープですね。
大胆にと言うか、贅沢に場所を取って坂道が建物内に設えてあります。
大体こういう場所は建物の構造的に頑丈に造られている部分なので、崩落個所はほとんど有りません。
元の世界でも、建物内に居た時に地震が発生した場合、階段やエレベーターに近い所に避難すると言うのはよく言われている事ですね。
しかしこうも大きいと身を隠せる所が逆に少なく、有ったとしても遮蔽と遮蔽の距離がたっぷり有るので心臓に良くないです。
特にうろついているのは気配が異様に薄い触手羅刹ですものね。常に前後左右は勿論上方にも視線を配ります。
これが物凄く神経をすり減らします。
しかも盾に乗って移動すると遮蔽に飛び込む時、壁等に当たって大きな音がしそうになるので、今は徒歩です。
そうすると今度は足音が気になったりしますよね・・・
盾にゴムタイヤのバンパーでも付けようかな。ゴムタイヤなんて無いけど・・・
樹脂先生のどこでも先生は盾を改造する時に全部使っちゃったんですよねぇ。
これがラノベの主人公だったら、いつの間にか気配遮断や隠形術のスキルとかが手に入ったりするんでしょうけど、現実には少々忍び足をしたくらいでそんなものは身に着きません。
段ボール被る方がまだ現実的ですよね。
盾の肩掛紐をしっかりと首と肩に掛け、左手に盾を構えて坂道を進みます。
右手にはまだ五発残っている銃を握っており、セレクターはより音の静かなライトレイに合わせて有ります。新しい魔石マガジンに交換しようかとも思ったのですが、貧乏性がどうにも邪魔をしましてそのままにしてあります。
このスロープは、九十九折りになってまして、坂と坂の間に細長い隙間が空いています。手摺等と言う親切な物は無いですが、立ち上がりが僕の腰くらいまでは有ります。
そこから隙間を覗くと、この建物以上に深く続いています。
地下ですね。それとも水中?
これは地下に行くとまた怖い事が起こるパターンですね!地下に行って扉を開けたらゾンビがバーン!って出て来る奴ですよきっと!
その手には乗りませんからね!
でも必ずと言っていいほど何かアイテムが落ちてるパターンでも有るんですよね・・・しかもキーアイテム的な奴。
迷いますね・・・