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人は足る事を知らずして苦しむ
既に隴を得てまた蜀を望む
一度兵を発するごとに頭髪為に白し
後漢の祖、光武帝 劉秀 の言葉です。
人間の欲っていうのは果てしないね!
前から欲しかった隴っていう土地が手に入ったけど、やっぱり蜀も欲しいや!
苦労すんのは判ってんのにね!てへぺろ!
という意味になります。
この人は文才が凄くて、柔能剛制という言葉も残してますね。
自分が皇帝になった時、幼い頃住んでいた家の近所のおばちゃん達を宴会に招いて
「あんたみたいな大人しい子が天子様になるなんて、おばちゃんびっくりだわ!」
と、言われ、照れくさそうに笑っていたというエピソードも有ります。
何故こんな事を思い出しているかと言うと、理由は二つ有ります。
一つは些か盾を乗りこなすのに疲れて来たから。
正直なところ、出来れば座って乗れる乗り物が欲しいです。
足る事を知りましょう・・・
それともう一つ。
あれから城砦の丘を大きく西周りに迂回して、森にそっと近づいたのですが、そこで見た驚愕の光景・・・
物凄い恐怖のため、現実逃避をしているから・・・
どうやらここは、今までの幸運が通用する場所では無さそうです・・・
怖い・・・
懐かしの絶望パイセンがうろついています。
しかも三匹・・・
内一匹は戦闘後のようで、第二形態の半獣半人の姿のままです。
手には大きな血達磨のナニかを引きずってます。
なるほど、デスペアパイセンの第二形態の完全版はあんな風になるんですねぇ・・・
なんと言うか、一言で言うと ”直立する肉食の馬” って感じです。
ユニコーンのように長い真っ直ぐな角、マッシブな黒い体、獰猛そうな獣面に太く長い首、炎のような赤い眼、振り乱した鬣、鋭い爪・・・
しかも僕が倒したデスペアパイセンってまだ若者だったんですね!
大きさが倍・・・までは行かないですけど、確実に1.5倍は大きいと思います。
長い角も立派です。
前回は相手が力を出し切る前に僕のペースで攻撃して倒しましたけど、今回はそんな小細工なんか鼻息一つで消し飛ぶ力感です。
絶対に相手にしたくありません。全力で逃げましょう!
それだけでは有りません。
触手羅刹も居ます!
他にもなんかでっかいのが居る雰囲気です。
ゴッツい足跡有りますもん!
帰ろかな・・・
仮にここが栄えてる街でも、こんなのがポンポンうろついてたら近づけませんよ。
それともこの街はこんなのを撃退するための城砦なんでしょうか。それにしては魔獣たちは街の近くをうろつき過ぎでしょう。城砦が機能してない事になります。
もうちょっとだけ様子を見ましょう。
でも、この森で夜を明かす度胸は僕には有りません。出来れば丘に登って城砦の中に入ってしまいたいです。
例え城砦が廃墟だったとしても、隠れる場所くらいは有りそうですからね。
城砦の方が結果として怖い場所って可能性も有りますけど・・・