156
城砦の丘。
そう名付けます。
とても大きな天然の要害ですね。
天然じゃないのかもしれないけど・・・
ちょっと遠いのも有りますけど、どこから丘の上に入るのか、ここからでは判りません。
とりあえず、あまり姿を晒さないように丘の陰に身を潜めます。
悩む所ですね・・・
やあ、こんちは~!って言いながら堂々と訪れるのが良いのか、少し偵察してから様子を見るのが良いのか・・・
様子を見ると言っても、近くに寄っても崖の上なんて見えないでしょうけど。
これがちゃんとした都市なら、城門で商人さんとかが列を作って待ってる・・・なんてテンプレですけどね。
そしてそもそもの問題。
この城砦の丘、生きた都市なんでしょうか?
生きている都市とは、ヒト、乃至それに近い文明を持つ種族が集団で生活している場所。
ヒトが集団で暮らしていれば、人口を賄う為の食料生産をする設備、つまり田畑が必要です。
周りの緑が田園と言われればそう見えない事もないですが、こまめに手入れをされているようには感じられません。
それに、田でも畑でもあぜ道が必要ですが、それもここからでは確認できません。
それとも、あれはただの野原で、裏側にちゃんとした開墾された田畑が有るのでしょうか。
あるいは僕には想像も出来ない何かファンタジーな食料生産設備が有るのか、あの丘の住人は完全なる肉食で、都市の裏側の森に牧場乃至狩場が有るのか・・・
更にこうも考えられます。
あの都市は見たまんまの純軍事的な施設で、食料は完全に外部からの搬入に頼っている可能性も有ります。
それならば搬入経路となる道が必要なはずで、明らかにそれらしき物は見当たりません。
地下道と言う可能性も有りますが・・・
それ以前に全くの廃墟という事も十分に有り得ます。
あらゆる可能性を考えて行動出来ればいいですが、どうしても想定外というものは発生します。僕の場合特に・・・
なのでここは隠密裏に偵察をするのが一番でしょうね。
ああ、望遠鏡か双眼鏡が欲しい・・・
樹脂先生で作れないかな?対物レンズは凸レンズで接眼レンズは凹レンズで作れば、ケプラー式の望遠鏡が作れるはずですね。
今はレンズの研究をしている時間が有りませんが、何れ作ってみましょう。
とにかく、ここから一面的に観察してもしょうがないですから、まずはこっそり外周を回って偵察し、その後近寄ってみましょう。
一周回って結局一番妥当な方法に辿り着く迂遠さが僕なんでしょうね!
それでいいんです。
世の中主人公だけで成り立っている訳では無いんです。僕のようなモブが居るからこそ主人公という人種が引き立つんです。
そう考えたら気が楽になりました。
今はお昼前、行動を起こす前にちょっと腹ごしらえをしましょうか。