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全身が痛いです・・・
戦闘中は幾ら僕でもアドレナリン分泌しまくってハイな状態で、痛みなんかもあまり気にしませんでしたが、いざ終わってみると一斉に痛覚が蘇って来ます。
特に斥力ビームをぶつけられた肩と膝・・・そして頭!
装甲の上からでもこんだけ痛いなんて、ズルい。
正直言って泣きそうです。すみません、泣いてます。
しばらく地面に横たわり、痛みが引くのをじっと待っています。そう言えば出掛ける前にネイに色んな薬を渡されていました。
打ち身に塗布する軟膏系の薬も有った筈ですから後で塗りましょう。
周りにはまだジャージートプスの群れがおりますね。親が子供の遺体から離れないようです。
悲しいですけどこれが弱肉強食の野生の世界なんでしょうね・・・
正しい者が勝つんじゃなくて強い者が勝つのです。
僕もいつかは・・・
でもその前に出来る限りの事はしないといけないですね!
しばらく寝ていると、やっと起き上がれるくらいに回復してきました。
よっこいしょと気怠い体をなんとか立たせて剥ぎ取りタイムです。
有る筈ですよね!斥力の魔晶石!
やっぱりこの曠野には先生は居ないようですね。これだけ時間が経っても一向に現れません。
仕方ないです、自分で探して取り出すしかなさそうですね。
今まで散々獲物を解体してますからね、今更解剖くらいで怖気づきませんよ。
むしろ敵の弱点を探るのにちょうど良い検体ですけど、僕の体のコンディションがちょっと・・・
でもやらねばなりません。
触手羅刹は動物と植物の間のような生き物ですね。
体液は黄色で粘性が高く、臓器はほとんどありません。
蓮華座の底部にある円状の口には、内側に環状に鋭い牙が並んでいますが、歯と言うより棘のような感じです。
食道のような管の内側には線毛がびっしりと生え、食べた肉片が逆流しないように、さらに胴体中央やや下の胃袋のような空洞に送る仕掛けのようですね。
そこで消化液を出して吸収するのでしょう。
物凄く不自然な生き物ですが、こういうもんなのでしょう。わざわざ下から上にあげるなんて、重力まるで無視ですもんね。
あ、そうか、斥力の魔法が有りましたね。それなら逆にこの方が理に適ってるって事ですね。生き物って凄い!
胃袋の上にはちっちゃな脳のような器官が有りました。臓器系はこれだけです。
不思議・・・どうやって知覚してるんだろ?そこが知りたかったのに・・・
そしてお待ちかね、脳の更に上にメロン大の大きな魔石が一つ。
円状の口の、人間ならノドチ〇コに当たる部分に、まるでダイアモンドのようなブリリアンカットの魔晶石が一つ、硬い殻のような物に包まれていました。
大きさは直径4㎝は有るでしょうか、濃い青紫と黒のマーブル模様です。
でかい・・・
このでかさが、あの30mオーバーの魔法の秘密なんでしょうかね。
そして特筆すべき事に、触手羅刹の魔晶石はこれ一つではありませんでした。
背中の触手の先端に、なんと一つづつ魔晶石が埋まっていたのです。
大きさは普通サイズですけど、細い神経のような繊維が魔晶石を包む殻のような物から出ていて、おそらくこれは中枢の脳、そして特大の魔晶石に繋がっているのでしょう。
ただし、使えそうな魔晶石は全部で五つ・・・
特大ブリリアンカット魔晶石と並魔晶石が四つ。他はどうした訳か罅が入っており、取り出す時に割れてしまいました。
勿体ない。
背中に刺さっていたカラフルな鳥の羽は、やっぱり生えているわけでは無かったようです。
どうやらこの羽はダーツのような飛び道具みたいで、これを持つ何者かに触手羅刹が攻撃され、刺さったまま気にせず動き回っていたようです。
羽自体は金属質な硬い物質で重く、とても生体の羽には見えないのですが、それでもこの世界にはこんなのを生やしている鳥が居るんでしょうね。それか、わざわざこの形に投擲武器を作った者がいるか・・・
とても綺麗なので頂きです。
僕にもダーツのように使う事が出来るかもしれません。練習すれば・・・
さて一番のお楽しみ、斥力の魔晶石、検証しますか!