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もう少し、あともう少しで目測30mです。
この距離を把握する訓練は積んでいます。何しろリーチ最強説信奉者ですから、間合いを把握する感覚を鍛えるのは必須です。
特に弓は弾道を描いて矢を放つ事が頻繁にあるので、この感覚が無いと当たりません。
僕は片鎌槍と盾を引っこ抜き、タイミングを計ってダッシュしました。
片鎌槍は盾のハンドルと一まとめにして掴んでいます。
ダッシュした先は触手羅刹に向かって45度の方向。
正面から突っ込むより、横移動を掛けた方が飛び道具は当て辛いですからね!歩幅も一歩一歩間隔を変えてダッシュです。
触手羅刹の攻撃は単調で、八本の触手が代わる代わる斥力ビームを放って来ているだけですから躱すのは容易なはず。
ある程度、威力のある攻撃をするには、触手一本一本に溜めが必要なのでしょう。
そしてバランス感覚がいかれているであろう敵に対し、急激に横移動を掛けると、マグレでもない限り当たらないでしょう!
ボグッ!
そのマグレが当たるのが僕なんでしょうね!
いいですよ!想定済みですよ!
だからこうして、なるべく盾と背面装甲を敵に向けて走ってるんです!
特に背面装甲は脊椎保護の為、蛇腹に組んだ可動装甲は丈夫に作って有ります。
背中に当たった攻撃で、上半身が泳ぎそうになるのを必死で堪え、さらにダッシュ!
あ、でも膝はヤメて・・・
敵もさる者、パターンの変わった僕の動きに合わせて、低威力とは言え、向こうも回転を上げてきました。
前面脚甲には膝当も付いていますが、走っている時に空手有段者の回し蹴りくらいの威力の攻撃を喰らってはたまりません。
被弾箇所は右膝のやや内側!
骨や関節は大丈夫ですけど、股が裂けるんじゃないかと思うくらいに右足が外に跳ね上げられ、僕は腰から地面に叩きつけられそうになりました。
無茶苦茶痛い!!
それでも受け身!
空中で半回転して身を捻り、何とか腹這いの状態で地に伏せ、ついでに銃を向けます。
距離は充分!
シュォンッ!
という音と共に一瞬白い光が宙を引き裂きます。
着弾を見極めずさらに三点射撃!
そんな機能は無いですから、素早くトリガーを三回引いただけですが、効果は抜群です!!
触手の一本が途中で千切れ、触手羅刹の胸部に二つの穴が開いています!
他の触手は無秩序に乱れ動き、苦悶しています。
セレクターをファイアレイへ。
ゴロンと転がり僅かでも位置を変え、盾と槍を捨てて両手でホールド。
狙いは蓮華座の付け根!
キュォン!
火矢のように尾を引いて飛ぶ小さな炎。着弾と同時に小爆発を起こします!
堪らず倒れる触手羅刹!
残り三発。
立ち上がり前方にダッシュ!
走りながら銃を左手に持ち替え、右手で背中のバスタードソードを引き抜きます。
距離は10mを切っていますが、走りながらでは撃っても当たらないでしょう。
触手の動きに注意しながら時折ステップを変えてジグザグに走ります!
残り6m。
急制動を掛けて地面に跡をつけ、倒れてもがく触手羅刹の胸に二発!
そして腹部に最後の一発!
銃をホルスターに突っ込み両手でバスタードソードを握って振りかぶり・・・
大上段からの前転斬撃!!
偶然です・・・
バスタードソードを振り下ろす瞬間、草の根に足を取られて体が宙に浮き、そのまま空中で一回転しながら剣を振り下ろしたら見事に触手羅刹を両断していました!
剣先は敵の胴を両断し、尚も地面に潜り込む程の威力!
僕の斬撃とは自分でも思えない程の剣の冴えです!!
冴えとは言わないかも・・・
しかしまだ触手羅刹は生きています!
止めの前におっかない触手を全て斬り飛ばし、本体からの魔力の供給を断たなければ!
先に触手を切り飛ばすのは、触手羅刹の急所が判らないので、とにかく敵の攻撃手段を奪う為です。
あ~・・・
怖かった・・・
全ての触手を切り離し、地に伏す触手羅刹を滅多刺しにして止めを刺しました。
手応えが有ったのは胸部の中央やや下。ほぼ体のど真ん中でした。
もう会いたくはないですが、もし次に出会う事があればここを狙いましょう。
それにしてもしんど過ぎです・・・
ブクマ、評価、有難うございます!