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そんな時間も無いみたいです!
千手観音立像・・・いつまでもこの呼称は本物の千手観音に失礼ですね、触手羅刹と呼称する事にします。
触手羅刹はとうとうジャージートプス達の全ての攻撃をしのぎ切り、悠然と仔ジャージートプスを捕食に掛かりました。
親たちは包囲は続けていますが、荒い息を吐いています。諦めた様子は有りませんが、攻めあぐねているようです。
野生の動物の凄い所はここですね。
絶対に諦めないんです。動物は・・・生きている限り。
ですけど可哀そうですが、助かる助からないで言えばもうあの仔ジャージートプスは助からないでしょう。
脊椎が明らかに折れています。
おそらく、母親にもたれかかって寝ていたのではないでしょうか。背骨が左側にくの字に曲がっています。
息が有ったとしても、ここで触手羅刹に喰われなかったとしても、確実に死を迎えるでしょう。
せめてその死を無駄にしない為にも、ここで触手羅刹を倒さねばなりません。
僕はそう考えつつも、そっと距離を取りながら触手羅刹の背後に回りました。
左手にはミスリルボウ、それから燕尾鏃の矢を二本まとめて握っています。
右手には勿論嚆矢となる同じ矢をいつでもつがえるように準備万端整え、改めて触手羅刹を見ます。
僕は朝日を背負うように位置取りをしました。 望みは薄いとは思いますが、相手が視覚に頼る生物なら目くらましになりますからね。ついでにこちらは弱いながらも風下です。
茂みにしゃがみこみ、群れのジャージートプスの間隙を縫うように弓を構え、躊躇なく発射!
距離は30mくらいでしょう。
狙ったのは触手羅刹の背中、それも触手の根元中央!
ですが、敵はその時もう一度瀕死の獲物に圧し掛かり、その蓮華座のような口を伸ばし、喰らい付く為に高度を下げた所でした。
バチンッ!
と、筋肉を断ち切る嫌な音がし、矢はちょうど触手羅刹の首に当たって頭部と思われる個所を千切り飛ばしました。
当たった矢は貫通はしたものの、弓なりに弾け、明後日の方に落ちて行きます。
黄色い粘液を流しながら、体ごとこちらを振り返ろうとする触手羅刹!
やはり頭部は重要器官では無かったようです。
しかし僕はその間何もせず見ていた訳では有りません。
既に二の矢を放っています。そして三の矢。
初矢を放ってから僅か3秒!
二の矢は完全に振り向かないままでいる触手羅刹の触手を向けられ、寸前で軌道を逸らされ、虚空に消えて行きます。
三の矢は恐ろしい偶然でしょう。丁度一本の触手の先端に真っすぐ突き進み、刺さる寸前でまるで壁に刺さったかの如く矢羽を震わせて空中で停止、次の瞬間猛烈な勢いで跳ね返されました。
重力操作・・・
僕は最初、高度に制御された風魔法だと思っていました。
風の塊を高出力でぶつけて殴り飛ばす。あるいは地面に押さえつける。そして浮く。
そう思っていました。
違ったようですね。大気の流れは変わっていません。矢の軌道、矢羽の靡き方を見て僕は考えを改めました。
だからと言って攻略方が閃いたわけでも無いのですが・・・
まだ決まった訳では無いですが、まさか重力のような物を操っているとは。
重力と言うよりは斥力でしょうか。引力の反対で、物を引き付ける力では無く、撥ね退ける、押さえつける力です。
つまり強力なバリヤーです。
あれ?不意を突かない限り結構触手羅刹って無敵っぽくないですか?
遠距離攻撃の弓矢もダメ、近接攻撃のジャージートプスの突進もダメ・・・
特にジャージートプスの突進頭突きってかなりの威力だと思うんですけど・・・
矢が寸前まで近づけたのは切り込む面積が点に近かったから。しかも魔法と相性の良いミスリルの鏃だったからでしょう。
不味い、手詰まりですね。
評価、ブクマ、感想、有難うございます!
近々やっと僕にも正月休みの順番が回って来そうです(今更かよ!)。
いつになるかは直前まで判らないのがうちの職場・・・
取れるようなら速攻取ります。そしてバイクでソロツーリングキャンプに行く予定です。
新しいテント買ったのにまだ張ってないんです。
更新が唐突に途切れるかもしれません。
なるべく書き溜めて行こうとは思ってます・・・