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首尾よく獲物を狩る事が出来ました。
何だかんだ言っても、僕の弓の腕は上がっています。
捕まえたのは白鳥くらいの大きさの、茶色い羽根色の鳥です。
ジャージートプスの群れには必ずこの鳥が居るようですね。巨体の皮膚に取りついている虫を食べる事で、共存関係にあるようです。
長い首をジャージートプスのフリルの裏側に突っ込んで、寄生虫を食べているようです。
因みに皮膚に取りついている寄生虫の大きさは葡萄粒くらいの大きさでした。グロ・・・
あんな場所痒くても掻けないでしょうからね、お互いいい関係のようです。
どうもそれだけでは無く、巨体の上に図々しくも巣を作っているのも居ます。ジャージトプスは全く気にしてないようです。
おおらかですね。
たまに地上に降りている個体も居ます。
油断しきっている鳥を狙って射抜き、急いで回収。
素早くナイフで止め刺しして首を切って血抜きします。ホントは心臓が動いているうちに動脈を切って血抜きするのがいいらしいのですが、可哀そうなので僕はさっさと止めを刺します。
僕が近寄ってもジャージートプスは気にもしません。お前なんか眼中に無いよって感じです。デスペアパイセングッズも効果を発揮していません。
故にジャージートプスは僕の中では魔獣です。この貫禄ですし、魔獣の資格充分ですよね。草食の魔獣です。
鳥の場合わざと血抜きしないで血を体内に回し、風味を高めるという手法もあるらしいですが、僕にはちょっとレベルが高いですね。雉とかの山鳥の方法らしいです。
内臓を抜く前にお湯を沸かし、あらかた羽根を毟って産毛だけになったところで、サッと熱湯をかけて毛穴を開かせ、産毛も綺麗にします。
それにしても恐ろしく硬い鳥の羽根ですね。しかもひどく密生しています。普通の矢では通らなかったかもしれません。
形の良い真っ直ぐな風切り羽根は矢羽にするので集めておきましょう。良い矢羽が出来そうです。
抜けきれなかった産毛は軽く炎で炙って処理します。それから内臓を取り除いて水洗いし、部位別にブロック分けして先生真空パック、氷の魔晶石で急速チルド冷蔵、二重革袋に保存です。
これも慣れたもんですね。三十分かかりません。
急ぐのは他にも理由が有ります。
血の匂いを嗅ぎつけて、ロクなのが来ない内に退散しなければなりませんからね。
行けども行けども風景は変わりません・・・
一体幾つ丘を越えたでしょうか。前方は霞んで視界が悪く、後方は圧倒的スケールで偉大なる傾斜が有ります。
でっか過ぎて感覚が狂います。迷う事が無いのが唯一の慰めですね。
途中休み休みですが、感覚的にかなり歩いたはずです。けれども緩やかに登り下りが有るので距離は判りません。
自分が一体どこに居るのか判らないと言うのは物凄く不安です。
そろそろ陽も暮れそうなので、今日のキャンプを設営する事にします。焦ってもしょうがないですもんね。
気温は低いですが風は緩く、コンディションは悪くありません。
ただ、こうもだだっ広いと守られてる感が無いので怖いですね。
ですので、ラクダのように足を畳んで腹ばいになって寝ているジャージートプスの群れの近くで寄生キャンプする事にします。
幸いにも彼らは昼行性のようですしね。天敵が少ないのでしょうね、これだけの巨体だと。
相変わらず僕の事など眼中に無い感じなので、もう堂々と群れのど真ん中でシェルターを張っちゃいました。
何かあったら彼らが騒いで教えてくれるでしょう。大概の事では騒がないとは思うので、あまり当てには出来ないですが・・・
シェルターの中でコンロの火を焚き、暖を取ります。
今日の晩御飯は面倒なので干し肉と豆、乾燥ハーブの濃い目のスープだけにしました。具沢山なので腹に溜まりますし、栄養もたっぷり有ります。
それよりも暖かさが何よりの御馳走ですね。
明日は早めに出発する事にして今日はもう休みましょう。