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でも、進む前にちょっと解剖のお時間です。
せっかく状態の良い機関銃蜂の死体が有るので、構造をチェックしたいのです。
頭や胸の部分はサイズ以外特段変わったところは無し。問題は胴の部分ですね。
胴だけ切り離し、縦に割って構造を見てみます。
なんという事でしょう!
僕の作ったネインチェスターとほぼ同じ原理と構造です!
勿論銃身となる筒状の材質は違いますが、機関部となる部分には極小ながら風の魔晶石が有り、近くには生体弾となる針の生成器官も有ります。
より緻密で、より複雑な構造ですが明らかに銃そのままです。可動部は筋肉で動かしているのでしょうね。凄い!!
構造が判ったおかげで、何となく機関銃蜂のスペックも想像がつきました。大きな収穫です。
しかしミスリルでブーストしなくてもいい天然魔法はチートですね。
こんなBB弾みたいな魔晶石でもあれだけの出力が出せるんですから。
羨ましい・・・
解剖に使ったミスリルナイフを綺麗に無限革水筒の水で洗います。
万が一仲間の死体の匂いを嗅ぎつけられたら、絶対に攻撃してくるでしょうからね。
手早く極小魔晶石と、同じくらいの大きさの魔石を回収します。
そう言えば、ダンジョン以外で魔晶石や魔石が戦利品獲得したのは初めてですね。
ひょっとしたら今までも有ったけど、気付かなかっただけかもしれません。
ゴブさんとか紅帽子とか仮に持ってても物凄く小さそうだし。
でもデスペアパイセンは持ってたかも!?
帰ったら古戦場で捜索ですね。魔石って揮発したり自然消滅ってしませんよね?仮にデスペアパイセンが魔石を持ってたりしたら、かなりの大きさになると思うんですが・・・
魔石や魔晶石を持っているのが魔獣という分類かもしれませんね。
でもそうなったら先生はどうなるんでしょうか。
これも新たな研究課題です。解明出来るかどうか判りませんが、考察するのは楽しいですね。
少し移動して軽く昼食を摂り、新たに気を引き締めて歩き出します。
ここは変にコソコソせずに堂々と行きましょう。
僕は茂みを出てテクテクと歩き出しました。
そう言えば携帯食節約の為、狩りをしなければなりません。
獲物になりそうな動物は沢山居ますがちょっと大きいですね。鹿一頭仕留めても貯蔵出来ないので無駄になります。
せっかく命を頂くのに、食べきれないで捨ててしまうなんて事は出来ないです。よっぽど困っていれば別ですけど。
無論、放置しておけば他の生物が片付けてくれるのは判っています。でもなんか傲慢で嫌ですよね。
鳥や兎くらいの手頃な大きさの獲物が居れば良いのですが・・・
鳥や兎だと肉の熟成も短くて済みますしね。早いと死後硬直が解けたくらいで食べられます。
獲物の大きさ---筋肉量---でも変わりますがそれなりに時間が掛かるんです。
鹿とかの大動物だと、長いと二、三日は硬直している事が有ります。気温にもよりますけど。
それから熟成にほぼ一カ月を要します。大きさにより期間は変わりますけどね。
よくマンガや小説で、狩ってその日にすぐ食べるなんてのが有りますけど、自信を持って言えます。
絶対美味しくないですよ。
肉はカッチカチで噛み切れないし、熟成が進んでないので旨味も有りません。
おまけに野生のお肉っていうのはエサが悪いので栄養状態が良くなく、脂肪分が少なくて大体パッサパサです。そして常に命がけで運動しているので、熟成させてもある程度はお肉は硬いし血の匂いが有ります。
焚火で焼いて食べるなんてもっての外です。僅かな旨味が全部逃げちゃいますよ。
煮込み料理一択ですね。トロトロに香辛料で煮込むとそれなりに美味しいです。
肉食の西洋料理文化で煮込み料理が多いのには理由があったんですね。
日本のスーパーのお肉に慣れていれば、美味しく感じる事はまず稀だと思いますよ。
美味しく感じるには命の危機を感じる程の空腹感が必要じゃないですかね。
そして特に今の時期は一番美味しくない時期です。冬は食べる物が無いので蓄えた脂肪を消費し、皆痩せてます。食べるなら冬に向けて脂肪を蓄える秋ですね。
もう一つトリビアを。
動物を解体する時のナイフって、多分皆さんの想像より遥かに小さいです。刃渡りは大体人差し指くらいの長さのが一番使い易いですね。指の延長のように握って引っ掻くようにして使うので、それくらいの長さが丁度いいんです。
曲線を描く骨や筋から引き剥がすようにして肉を外すので、長いブレードは逆に邪魔なんですよ。
加工された大きなブロック肉を切り分けるのが長いナイフの役割ですね。
あと斧とか鋸も良く使います。
それでは手頃な獲物を探しながら行くとしますか。