142
あー・・・
変な事願わなきゃ良かったです・・・
変なのに出会いませんようにって・・・
考えてみたらこの世界変なのしか居ないじゃないですか、ネイ以外・・・
でもあの子も僕なんかと一緒に居るのでやっぱり変なんでしょうか。
いつの間にか僕は、でっかい蜂の魔獣の縄張りに入り込んでたみたいです。
地面から、蟻塚のように突き出た巨大な泥の塔。
不思議に思って近づいたのが運の尽きでした。
ビバークしていた丘から北東に進む事約一時間くらいでしょうか。
陽が昇るにつれ、霧が薄らいで行きます。
風が無いので薄らいでいく速度はかなりゆっくりですが、確実に視界が晴れていっています。
遠くにぼんやりと木のような物が見えたので、何の気なしにその方向に歩いて行きました。
他に何のランドマークも無い土地です。目印になるような物が有れば近づくのが人情ですよね?
しかも足元に物凄く気を使っていて、ついつい周囲警戒が注意力散漫な状態です。
油断するとこの泥炭質の湿地にズブズブと足を取られ、抜き差しならない状態になりそうです。
一見草地にしか見えない所でも、昨日の雨で地面と密生した草の絨毯の間に水が溜まり、浅い根が浮き上がった草原が、ウォーターベッドのようにフニャフニャになって足を絡め取ってきます。
偉大なる傾斜の上からでは気付きませんでしたが、この盆地の底は緩やかな丘陵地帯で、なだらかな起伏が豊かに有り、霧が無くても人の身長では先を見通す事は出来ません。
起伏の尾根沿いに移動しているのですが、これも昨日の大雨の影響か行き止まりが多く、沼や深い水溜りに阻まれ、行きつ戻りつしながら大変効率の悪い進捗です。
あらゆる窪みに水が溜まっているので、標高関係なく棚田のように小さな池が出来ています。歩きにくいったらないですよ。
その中で見つけた何かの塔。
近寄りますよね、そりゃ。
最初に受けた攻撃は狙撃です。
真っ正面から胸にきつい一発。
いきなり胸からカーンッ!と甲高い音がして息が詰まり、体が一瞬浮き上がってひっくり返りました。
びっくりして息が止まりました。
正気に戻ったのは衝撃で後ろに倒れ込み、そのまま斜面を転がり落ちてからでした。
でも転がり落ちて大正解でした。あのまま丘の稜線に立っていたら、蜂の巣の近くで蜂にハチの巣にされていたでしょう。
いや、冗談事では有りません!
何が起こったのか判らず、這うようにしてまた稜線から顔を出したら今度は機銃掃射です。
狙撃蜂と機関銃蜂、後で名付けた蜂の魔獣です。
その他にも兵隊っぽい剣士蜂、防御に特化した装甲蜂等、多彩な顔触れです。
大きさはボーリングの玉のような頭にソフトボールのような胸部、ラグビーボールより一回り大きな胴と、凶悪なサイズ。
狙撃蜂は遠距離---狙撃された距離は大体60mくらい---で尻から針を飛ばし、強烈な単発攻撃をしてくる上位種。数は少ないようです。
機関銃蜂はちょこまかと近寄って来ては、五~六発づつくらいの短連射を仕掛けてくる中近距離型。
剣士蜂は針は飛ばしませんが、尻から長い針を出して突撃してくる厄介な奴です。
装甲蜂はずんぐりむっくりの達磨型でカブトムシのように硬い殻を持ち、こちらの攻撃を阻害し、体当たりを仕掛けてきます。
ミスリルの胸甲に命中してなければ、即死級の攻撃でした。おそらくミスリルのメッシュ部分では止められなかったと思います。
とにかく数が多いです!
もう、逃げ一択ですね!
回り込んで正面から連射してくる機関銃蜂の攻撃を盾で弾き、剣士蜂の剣戟を杖にしていた片鎌槍で切り払って必死に逃げます!
逃げに逃げ、一匹だけしつこく追いすがっていた機関銃蜂の弾切れらしき隙を突き、片鎌槍で串刺しにしました。
そのまま死に物狂いで走りに走り、縄張りを抜けたのか、漸く追手から逃げ延びる事が出来たようです・・・